熔岩玉
「ヴォォォォォ……」
朧車と小鬼は逃げ続けるが騎士を引き摺っているので普段より遅く、またレベルがかなり上の凶骨から逃げるのは困難らしく、追いつかれ始める。
「ヴォォォォォ!」
「ヴォン」
「キィー、キィッ」
徐々に距離をつめられ、遂に凶骨が騎士を攻撃圏に捉えたその瞬間、剣を構える凶骨を尻目に小鬼が騎士を遠くに投げ捨てた。
ザクッ
「ヴォォ……」
その結果凶骨は狙いを外し、剣は地面に突き刺さる。
「キィー」
「ヴォン」
そして騎士の方はと言うと別の朧車と小鬼のコンビによって処け……移動を再開。
「ヴォォォォォ……」
それに気付いた凶骨は再び騎士を追いかけだす。
そんな行動を何度も繰り返している。
「なんつーか、ガキの頃に見たことのある光景だな。あんな感じで一人のガキをハメて楽しむ遊びがあったぞ」
……それは遊びじゃなくてイジメじゃないのか?
「おい、それより大丈夫なんだろぉな? あまり続けてるとアイツが死んじまうじゃねぇか?」
「まぁ、もうすぐ目標地点に着くから大丈夫だろ」
朧車たちが凶骨を引き付けている間に、この階層の地形を操作して熔岩に囲まれた離れ小島を作成。そしてその離れ小島に対岸からつり橋を掛けて、その入り口に一角天馬を配置──ここに凶骨を誘き寄せるのが今回の目的だ。
「キィー」
「ヴォン」
騎士を引き摺った朧車たちは凶骨から一定の距離を保ったまま一角天馬のもとに辿り着くと、騎士を一角天馬にパス。
「ヒィ、ヒッヒィーン」ドゴッ
一角天馬は騎士を受け取らずに、騎士の身体を一度角を使って器用に上に飛ばして、落ちてきたところを後ろ脚で離れ小島まで蹴り飛ばす。
「…………なぁ、おい」
「俺は離れ小島まで運べとしか指示してないぞ」
これは本当の話。ロープは運ぶ際に一角天馬に騎士の身体を固定させるために用意してたんだがな……。一角天馬も話を聞いてないようで聞いてたのか……。
そうこうしている間に凶骨は騎士を追いかけてつり橋の上を走り始める。そしてその半ばまで辿り着いた瞬間、
「ヴォォ…………ォ?」
つり橋に穴があき、まっ逆さまに落ちていく。
「水奈……」
〈うん、パァパ〉
死んでも復活してしまう凶骨にとって熔岩はあまり意味のある物ではないが、水妖刀──水奈のちからで熔岩を球体にして凶骨を閉じ込める。その際、凶骨の手から宝剣を奪いとっておく。
「火山活動を一時停止──承認」
そして、火山活動を停止させることで熔岩を冷やして岩へと変える。
「ふぅ、これで……」
〈まだ、気をぬいちゃだめ、ようがんはまだ……かたまってない〉
「あ、はい」
作戦が完了し、これで一安心と気を抜きかけたところで水奈から注意をされてしまう。