ダンジョン作成機能の制限
「んなことできっか!」
策の内容を説明すると、槍の男は猛反発する。
「ふむ、できないと言うならば仕方がない、あの騎士の男ごと封印するまでだ」
「んだとぉ!?」
だがそれは予想できた反応なので慌てることなく対処する。
実は凶骨を封印すること、それそのものはあまり難しくない。と言うのも、単純に前と同じように奴を閉じ込める形で出口の無い部屋──隔離部屋を作ればいいだけだ。
だが、今はそれができない事情がある。
実はダンジョンコアのダンジョン作成機能による罠作成や地形変化は、その影響範囲にダンジョン外の存在が居ては作動しないのだ。簡単に言うと、侵入者の足元に罠を直接仕掛けたり、侵入者がいる状態ではフィールド自体を変化させるような大規模な地形変更ができない。(さっきの溶岩を避けるための地形変更はその範囲内に侵入者がいなかったので可能だった)
凶骨は侵入者ではなく、一応とはいえダンジョン勢力なのでその制限に触れないのだが、奴は騎士の男に張り付いているため、隔離部屋を作成しようとしても騎士を巻き込んでしまうのでできないのだ。
…………要するに騎士ごと封印するというのはハッタリだったりする。
「……つまり、あの馬鹿が邪魔というわけだ。アレごと封印してもかまわないならすぐにでも出来るがな」
その旨を説明するわけにはいかないので『凶骨クラスの奴を封印するには規模の大きな封印にする必要があるので、確実に騎士が巻き込まれる』と説明。
「……くっそ、相変わらずあいつは祟りやがる」
「さてどうする? こちらとしてはどっちでも構わんが?」
嘘です、大嘘です。あいつを見捨てられたらハッタリがもろバレなので、奴を見捨てないでください。
「見捨ててぇのは山々だが、できねぇ……。てめぇに借りをつくるのは癪だが…………仕方ねぇ」
ふぅ、なんとかバレずにすんだ。こういう時、仮面だと表情を読まれずにすむから便利だよな。
「ならば構わんな…………まぁ、骨の一・二本は逝くかもしれんが……必要経費として割り切れ」
「あ、ああ……」
さて、槍の男も騙せ……ゲフン、納得させたところで、凶骨を封印するか。
魔法騎士の女の方はこいつほど騎士の安否に興味があるわけではないから、説得は必要ないだろうし。