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生け贄

「ヴォォ……」フシュー


 凶骨は深紅の炎の宿った眼窩で騎士の男を睨み付けながら剣を構える。


「ちっ、さっきの話の所為か……」


 う~ん、どうしよ?

 別に俺、コイツらを守る理由がないんだよな……。いや、まぁ、この槍の男にはかなり同情してんだけどさ。

 でも、その名の通り黒くて凶々しい身体に、深紅の炎を宿した眼窩とか明らかに狂骨の頃より強そう、って言うか危険そうだし。狂骨の頃にはなかった鳴き声と言うか、うなり声出してるし。

 これの相手をするほどの同情ではない……と言うか、同情程度でこれの相手はないな。


 それに……


「なぁ、そいつを殺させたらアイツ大人しくなるんじゃないか? ソレは死んだほうが世のためになると思うし」


「んなことできるわけがねぇだろ……」

「そう言われれば、そうよね……」

「うぉいっ!?」



 俺の意見に槍の男が猛反対しようとするが、魔法騎士の女は同意する。


「言い出した俺が言うのも難だが、お前人として同意していいのか? それにそいつはお前の雇い主だろ?」


「まぁ、そうだけどさぁ~、世のためっていうのはあたしも思うし、雇い主はアレじゃなくて、そっちの彼なのよね……」

「でも、その雇い主は反対、と……。何でそいつを庇うんだ?」


 さんざん不幸な目に遇わされているんだから、義理立てする理由もないだろうに。


「うぉっ! んなもん、コレが死ぬとコレの実家から俺が消されるからに決まってん、だろ!」


 こうして会話をしている間も凶骨は攻撃を止めず、槍の男が持っている騎士を狙い続ける。凶骨が騎士しか見てない所為か、五十以上のレベル差があるにも関わらず槍の男はなんとかその攻撃を躱している。

 避けるのに必死なら別に律儀に答えなくてもいいのに。


「ソレの実家が? どうやってお前の……」


「さっき、定期的に金をふんだくってる、って言っただろぅが、そん時だ」


 ……ああ、定期的な連絡や資金提供と同時に監視ってことか。


「あ~、それじゃあ、ソレが死ぬとあたしを雇っているお金も払いにくくなるっぽいわね……」


 コイツも騎士を生け贄にするのに反対になったか。

 騎士の男しか狙われてないから、騎士の男を生け贄するか、騎士共々槍の男が凶骨に殺られるかしかないと思うんだがなぁ……。

 俺としては、ダンジョンに害がないからどっちでもいいけど、とっとと凶骨に大人しくなって欲しい。

 

 パキッ


 内心、ぼやきながら凶骨と侵入者の戦闘を眺めていると、手元から何かにヒビが入るような音が聞こえてきた。

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