凶骨
「パァパッ!」シュルッ
「うぉっ!?」
システムメッセージと久遠と刹那の声から狂骨の方へ振り向こうとしていると水奈が身体を触手状にして俺を引き寄せる。その次の瞬間、
「ヴォォォォォォォォォォォォォォ……」
ほんの一瞬前まで俺のいたそこを、白かった全身が真っ黒になり、眼窩に深紅の炎を宿した狂骨……いや、凶骨が剣を前に突き出しながら駆け抜て行く。
「きゃっ!?」
「ちっ、くそっ!」
そして、最初から狙いは俺ではなく侵入者たちらしく、その勢いのまま彼らに突っ込む。魔法騎士の女は危うげな様子で、槍の男は騎士の男の首根っこを掴みながら凶骨の突進を躱す。
「ぐぁぁ…………ゴフッ」
だが、両手足を灼き落とされた銃の男は躱せるはずもなく……と言うか、痛みでもがき苦しんでいたので凶骨の存在に気付くことなく突進をもろに受け、
──侵入者を撃破しました、4221ポイント入ります。
それが止めの一撃となり、命を落としてしまった。
「くっ、レオパルド……! 何しやがんだてめぇっ!?」
仲間の死を目の当たりにした槍の男がこちらへ向かって怒鳴ってくる。
「ちょっと落ち着きなさい!」
「ぁぁ!? これが落ち着いていられっ……」
「《アクアショット》!
いいから頭冷やしなさい、さっきも言ったけどあのスケルトンはダンジョン勢力じゃないわ」
だが、それに対して俺が返答する前に魔法騎士の女が無理矢理頭を冷やさせる。
まぁ、手間が省けたか。
「なら何で骨野郎が俺らを……レオパルドを……!?」
しかし、槍の男は納得がいかないらしく、凶骨の凶行をなぜと嘆く。
……ここは、あの骨の正体を明かした方がいいか……。
「それはあの骨の正体がお前らが追っていた聖騎士だからだ」
「なん……だと……!?」
「数週間前のことだ、その聖騎士はここへ来た。そいつは猛スピードで一層を踏破、更に二層へ足を進めたのだが…………その日の二層は運悪く、製作中で足場のろくにない火山でな、猛スピードを維持したまま突っ込んできた結果、その勢いのまま熔岩に落ちて行ったんだ」
まぁ、正直に話すと色々問題ありだから、不幸な事故と凶骨のドジということにさせてもらうがな。
「…………ちょっと待ちなさい、なら何でそいつがスケルトンに……」
「ダンジョンではある特定の条件を満たすとモンスター化するんだ。コイツの場合は深い恨みを抱えたまま死んだことだ。
本来なら俺の支配下に入るんだが、生憎コイツはその恨みが深すぎて俺の支配を受け付けないけどな」
「深い恨み、っつーと……」
「まぁ十中八九、お前が持っているそいつのことだろうな」
最初のノーリアクションと今のハイテンション具合から考えると凶骨はそこのバカの所為とは知らなかったみたいだけど。