テスト後にやってくる何とも言えない解放感
10の倍数の日に投稿です。
あっという間だった。五日間という地獄は、本当にあっという間に過ぎていった。いや、本当の地獄はその前だったと言ってもいいだろう。長かった。無駄に長かった。しかし、過ぎたことはもういい。
皆がテストから解放された余韻に浸っている放課後。俺は屋上で一人、弁当を食べていた。グラウンドを見下ろしながら、オレ以外誰もいない屋上で弁当を食べる。果てしない解放感。まだ誰もいないグラウンドは梅雨入り前の独特な陽射しに照らされ、より一層広く感じられた。
俺以外、この世界には誰もいない。そんな気分に胸を小躍りさせながら狐色の唐揚げを口に入れる。
「うっ……」
めっちゃ湿って、しかもふやけてやがった……。冷凍食品万歳……。母親の作った弁当をやや不満が残るが完食する。
空になった弁当箱を鞄にしまい、適当に鞄を放る。続くようにして、自分もごろんと横になる。真昼の太陽が真正面から俺を照らすが、すぐに雲に隠れて見えなくなる。
うつらうつらと舟をこぎ出しそうになる意識をなんとなく手放しそうになりながら、俺はゆっくり目を閉じた。
人の気配を感じて目を覚ます。目を開けると容赦ない日差しが俺の目に降り注ぎ、思わず顔をしかめてしまう。グラウンドの方が騒がしかったが、寝起きなので遠くに感じる。
「……ふふっ」
嫌な汗が頬を伝う。1年7組3番和泉京典、此処に死す、か……。
死を覚悟し、俺は再び目を閉じる。屋上の床から誰かが歩み寄ってくる音が聞こえる。嫌だなー。額に『肉』とか書かれるんだろうなー。テスト終わって浮かれてたら額に肉って書かれた、なんて笑えない。
うっすらと目を開けて、誰か確認してみる。
「――――!?」
パンツが見えた。細くしなやかな脚が俺の頭をまたぐ瞬間、太ももと太ももの隙間からチラリと見えた、桃色の薄い布。暗がりの中でより一層桃色が映え、俺の脳裏に鮮やかに刻まれた。青春万歳。
「って、そうじゃねえよ!」
「うはあ! パンツ見られた!」
「見せてたくせにっ!? ごぅふっ」
上履きで思いっきり腹を踏まれた。胃の中のものが逆流しそうになるが、気を確かに持って堪える。
「ふっふっふー、見たなー? 見たなー?」
「見ましたよ! 桃色レースでしたっ!」
「よし、演劇部に入れ」
「先輩、俺が悪かったです。俺のも見せますから勘弁してください」
「きょーせーわいせつでうったえるぞー」
「冗談ですって痛い痛い! 視線も痛いけどそれ以上に腹が痛いですって!」
しかし俺は屈しない。
演劇部に入るくらいなら運動部にでも……。そういえば女テニに勧誘受けてたっけ。俺は男だ。
「踏むよ? もうちょっと下の部分踏むよ? パンツ見られたって泣くよ?」
「踏まないで下さい! ちょっ、痛い痛い痛い! 行きます! 見に行きます!」
「よおっし、へへっ、どんなもんだい!」
「キャラがぶれてますよ……」
ともかく、演劇部の部室に俺は連行されることになった。逃げないように、と俺と腕を組んでずいずいと進んでしまう。鼻歌を口ずさんでいるのは、俺が入部すると勘違いしたからだろう。帰りたい……。
あ、でもサッカー部の帰りを待つつもりだったから丁度いいかも。でも剣道部の先生に頼んで竹刀振らせてもらう予定だったんだよな。
あと、胸って柔らかいのな。びっくりしたぜ。