傷ついた指輪
いつも読んでくださっている方々、本当にありがとうございます。
あなたがくれた、この指輪
高くはないけど、2人で選んだこの指輪
小さな傷が、たくさんついた指輪
喧嘩するたび、投げつけた
それを拾って、困ったように笑うあなた
そしてわたしを優しく抱きしめる
それがなにより嬉しくて、恋しかった
ねぇ、知ってる?
わたしは、すごく幸せだったんだよ
今、この指輪をみながらそう思えるの
今回だって、そうだった
怒ってこの指輪を投げれば、あなたは笑って抱きしめてくれる
そう、思ってたんだよ
でも、わたしの元へ戻ってきたのは指輪だけ
あなたは、どこかへ行ってしまった
もう、この指輪を投げることもなくなるんだ
ごめんね、わたしの身勝手でこんなに傷つけて
ごめんね、あなたを大事に想えなくて
あなたはいつもそばにいてくれたのに
そう言って、指輪を見つめる
指輪についた、小さな傷たち
その数だけ、あなたと喧嘩した
その数だけ、あなたは笑ってくれた
その数だけ、わたしを抱きしめてくれた
この傷の数が、わたしが感じた幸せ
壁に向かって、指輪を投げる
コツ、という音のあとゆっくりと落ちていく
この指輪を拾う人は、もういないんだ
静かな部屋に、わたしと指輪
2人は今日、大切なものを失った
ありがとうございました。