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イオンに着いた。
買い物にでも行くのだろうか。
「果歩ちゃん、2階に行こう、2階。」
日曜日のイオンは人で混雑していた。人混みは、どうも苦手だ。
人酔いしてしまう。
「よーし、楽しむぞっ!!」
着いたのはゲーセンだった。
「…あの、私、こういう場所って苦手…」
「あっちにマリオカートあるぜ!俺マジで得意だからさっ!!!行こう行こう!!!」
「負けた~。3回連続で負けた…。果歩ちゃんどうしてそんなに強いの。」
「先生が弱すぎ…。」
「あー!それ以上言わないでくれ!!次いこう!次っ!!」
そのあと、ホッケーしたり、メダルゲームしたり、またレースゲームしたのだが。
先生は私に一回も勝てなかった。
そのたびに、
「くそー!なんで、勝てないんだっー!」
と悔しがった。
そんな一生懸命な先生を聞いていると、何だか可笑しくなってきた。
「ふふっ。」
「なんだよ、果歩ちゃんー。」
「だって、先生が一生懸命なのに一回も勝てないから、可笑しくって。」
先生が笑った。
「果歩ちゃん。やっと笑ってくれた。」
「えっ。」
「果歩ちゃんが笑ってくれると、俺も嬉しいよ。
俺のバカ騒ぎで、果歩ちゃんが笑ってくれるなら。
俺は、どんなバカなこともやるから。」
なにこれ、先生はいきなり何を言い出すのか。
「…っ。先生がずっとバカ騒ぎやっていると、私が疲れるから、困ります。」
「あれー、果歩ちゃん顔が赤いよー?もしかして照れたー?」
自分でも分かる。顔が赤くなっている。肌が白いから尚更目立つのだろう。
「うるさいっ。先生のくせにうるさい。」
先生は、そんな私を見てニヤニヤしている。
「はいはい、果歩ちゃんごめんねー。ぼくちゃんが悪かったですよ。」
…絶対、人のことをバカにしている。