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「ねぇ、果歩ちゃん。全部うそだといいのにね。」
「現実がすべて嘘だったら素敵だと思わない?」
「俺はね、ときどき思うんだ。」
「全部 嘘になってほしいって。なにもかも終わらせてほしいって。」
「あの頃の幸せな自分に戻してほしいって。」
「えっ、言っている意味が分からない?…ごめんね、果歩ちゃん。行こうか。」
後々に分かることだが。
先生のお兄さんが死んだ話、お父さんが愛人を作って出て行った話、お母さんがうつ病になった話。
あれは本当の話だった。
そして、先生がいつも笑顔で明るい性格。
あれは嘘をついていたのだね。
先生が一番泣きたくて辛かったのに、自分自身に嘘をついていた。
先生が私に助けを求めていた。
気付けなくてごめんね、先生。