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夢のカケラ  作者: みや
夢のカケラ
3/85

私にも分からない。

色々なことが重なって、こうなってしまった。

こんな自分が好きなはずがない。

見ず知らずのあなたに分かるわけがない。




「俺さ、放っておけないんだよ。果歩ちゃんみたいに元気ない人をみるとさ。

すごく心配になるし、力になりたいって思うんだ。」

「私のこと、なにも知らないくせに。よくもまぁ、そんなことが言えますね。」

私は思わずムキになった。



「分かるよ、果歩ちゃんのこと。…分かるから。」

先生はそう言うと悲しそうな顔をした。



どうして、この人はこんな表情をするの。私なんて他人なんだから。

他人の心配をするとか。



意味が分からないよ。



「…そうだ!果歩ちゃんさ、今週の日曜日ヒマ?まぁ、ヒマだよね。

どこか遊びに行こう!どこに遊びに行くか俺に任せて!ねっ行こう行こう!!」







日曜日。私は、先生と待ち合わせしていた。

あのあと、結局断れなかったず、今に至る。


「果歩ちゃんー!お待たせっー!待ったー?」



「私服もかわいいねっ!よしっ、行こう行こうっ!」

先生の助手席に乗る。

どうやら待ち合わせ場所まで車で来ていたらしい。

「さーて、行きますかっ!!」




そういえば、どこに行くのだろうか。

なにも聞いていないのだが。

「どこに行くかって?お楽しみだよ。楽しいところさー!」

相変わらずテンションが高い。

どこからこんな元気が出てくるのだろうか。



「そういえば、お互いのことって全然知らないよなー。俺はね、果歩ちゃん…。」





ドライブしながら先生のことを色々聞けた。

先生は、医学部4年生。3浪していて、今年25歳になるらしい。

「俺は、兄貴と比べて勉強できなかったからなー!あははっ。」

地元は埼玉で、今は一人暮らしをしているらしい。

バイトは3つ掛け持ちしていて、忙しいけど、充実した日々を過ごしている…とか。



「勉強はすごく難しいけど楽しいよー!

でも留年しそうでねー…。専門分野って難しいわ。」

3浪ってことは、3年間も受験勉強していたのか。

「いや、違うよ!

勉強できたり、できなかったり。まぁおれ自身も色々あったんだよ。」



そのあとに流れる沈黙。

いつも一人でベラベラと喋る人なのに珍しい。




「色々ってなんですか?」

私が沈黙に耐えられなくなり、尋ねてみた。





「…兄貴が死んだ。」

「えっ!?」

「兄貴が死んだ。心臓マヒだって。

兄貴を起こしにいったら、身体が死後硬直で固まっていたよ。

あれがはじめて見る死体だったな。

翌日に警察が来て、俺も事情聴取された。

母さんは泣いていたよ。そのあとにお通夜もあってさ。

そのあとに、父さんが愛人と出ていってさ。別居生活だよ。

母さんはうつ病になっちゃって。

もう家の中が滅茶苦茶だった。」



「それは…。」



大変でしたね、とか言えない。

こういうときって、なんて反応すればいいのか分からなかった。





「…という、ドラマをこの前みたんだー!暗すぎるよな!あれっ。心配してくれた!?」

いつものひょうきんな先生に戻っている。

「ちょっと心配した自分がバカでした。もう先生嫌いです。」

「ごめんってー。あ、もうそろそろ着くよー!」

思っていたより、道が空いていたらしい。はやく着いたようだ。


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