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ヴェイド  作者: 片桐渚
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第三話~救援

ようやくわずかではありますが戦闘シーンです。

少しでもお楽しみいただければと思います。

(精霊がざわついている気がしていたのは、これが原因だったのか)


『馬車が大量の骸骨に襲撃された。現在、馬車を守りながら目的地へ移動中だが、辛い状況だ。速やかに合流してくれ!』


 アーテナは精霊が教えてくれた場所へ急いでいた。走力の強化魔法を馬にかけて……。

(辛い状況とはどういう意味なんだ?)

 今回の護衛役の四人の内、アーテナとユードは経験が薄いが、前方を守っていた二人の内、一人は副団長。もう一人のクリスタは騎士団の中でも防御では二番を誇る実力者と言われている。

(あの二人がいて、辛い状況とは一体……?)

 そんな疑問の中――

『行って来いってさ。ただ、一人で大丈夫かって言ってる』

『問題ない。少し見てくるだけだ。そっちこそ、私がいないせいで奇襲に負けたりするなよ?』

 ――思い出される、一緒に後ろを守っていたユードとの会話。

(冗談はあくまでも冗談なんだ! 頼む、間に合ってくれ!)

「ハッ!」


 アーテナを乗せた馬は、森の中を走っていく……。

(あれか……。本当に大量の骸骨だ。五十体はいるな)

「副団長、戻りました!」

 アーテナは、骸骨に追われながらも走る馬車を見つけると、声をかけた。

「遅いぞ!」

「すみません」

「まあいい、守りを固める。アーテナは障壁を張れ!」

「了解!」

「「我らを守れ、三つの壁よ! トライプロテクト!」」

 アーテナは馬車の周りに大きな三重の障壁を張った。

(これで少しは時間を稼げるかもしれないが……)

 骸骨たちは大勢で鎌や剣で障壁を破らんと攻撃してきているため、障壁は長く持ちそうには思えなかった。

「クリスタ、行けるな?」

「訊かれるまでもない」

「よし、合わせろよ?」

(副団長は何をするつもりなんだ?)

「「我らは光、我らは(ひじり)……」」

 呪文に合わせてゆっくりと、一つの魔方陣が描かれていく。

(呪文が長い? 同時詠唱なのに?)

「「死者を嘆き、浄化する……」」

 通常、同時詠唱は二人以上で一つの魔方陣を描くことで、魔力消費を抑える・威力を上げる・詠唱を早くするという三つの狙いで行われるが、今唱えられている魔法は違った。二人以上でなければ唱えることができない、高難易度で特別な魔法。

(これは、特級魔法?)

「「その輝きで辺りを照らせ! オーロラ=グリーフ!」」

(噂には聞いたことがあったが、初めて見た)

 そんなアーテナも魔法が発動すると、その眩しさに目を閉じるしかなかった。

(目が……。眩しすぎる)

 光がやむと、骸骨の姿が消えて、大量の砂があった。

「眩しいですよ、副団長! というか、あんな魔法あるなら、もっと早く使いましょうよ!」

「お前も見ただろうが、あの魔法を唱えるには時間がかかるし大変なんだ。そして何より……」

 言葉を切って、副団長が目を向けた先には紅い二つの目が光る、ローブを着た黒い人型の何かがいた。

その身体の一部は消えていて、先ほどの魔法で大きなダメージを受けているようだ。

「やはり生きていたか」

「色々と危なかったですけどねぇ。まだ死にませんよ」

「チッ、バケモノめ!」

「そちらこそ。流石は我らの魔王を封印したメンバーですね。あの量を魔法一発で消し飛ばすとは……」

 そう言って、やれやれと肩の高さまで両手を上げて首を振るモンスター。

(こいつ、魔王の手下か!)

「今回の目的は何だ!」

「嫌ですねー。その馬車の中にある、魔王の御身体に決まっているじゃないですかー」

 アーテナはその言葉を聞いて、副団長を見る。

(中身は機密事項だと言われていたが、そんなものが入っていたとは)

「そんなこと聞いていませんよ!?」

「言ってないからな」

「ひでぇ!」

「うるさい、黙っていろ!」

 怒鳴られて黙るユード。それを確認すると、副団長は再度手下に問いかけた。

「で、どうする? このメンツ相手にやるか?」

「どうしましょうねぇ。馬車を守っている三人中一人は雑魚そうだからと、仕掛けたのですが……。まさか、もう一人いたとは……。」

 アーテナは視線を向けられて、ゾクリと背中に刃物をあてられたような寒気がした。

「しかも、それなりに腕はいいみたいですし、仕方がないですね。一先ず撤退しますよ」

「待てよ! 俺が倒してやる!」

「雑魚は静かにしてなさい。……止まれ!」

 止まれと言われたとたんにピタリと動かなくなったユード。

(今、一体何をした?)

「では、帰りますかね?」

 そう言って、手下は黒い煙となり、消えて行った。

「「「……」」」

 誰も何も言わない、長い沈黙。

「プハー。死ぬかと思った!」

 呼吸も止められて、ぜぇぜぇ言っているユード。

(下手に挑発するからだ)

 アーテナにはあの得体のしれないものに食って掛かるなど、ありえなかった。

「さて、馬鹿も復活したし、行くぞ!」

「「了解!」」「馬鹿とはなんですか!」

「お前の事だ。急げ、時間がない」

 こうして、四人は目的地へ進み始めるのだった……。

読了ありがとうございます。

今後もどうかよろしくお願いします。m(__)m

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