第一話~聖騎士
ヴェイド第一話、よろしくお願いします。m(__)m
今回は、騎士の視点……で入ります。
輸送のために整備された、森の中の道を走る四頭馬車と、その馬車を囲う様に四方に一人ずつ、馬に乗って護衛する四人の騎士がいた。
四人の騎士は皆同じく、白色に金色でデザインがされた金属製の鎧を着ている。
また、左腕につけている盾には二翼の翼に剣と盾が描かれていて、装飾が凝っていることから、かなり値が張ると分かる装備だった。
(やはり、何かがおかしい)
馬車の右後方の護衛をしている騎士の一人――アーテナは森のある一方が気になっていた。
「どうしたんだ?」
それに気が付いたもう一人の後方護衛者である、ユードが聞いてきた。
「いや、精霊がざわついているような気がするんだ」
「それ、さっきも言ってたな。モンスターの影響か?」
「どうだろうか? なんとも言えないというのが本音だな」
「そうか。……最近、モンスターの動きが活発化してきているという報告が上がってきている」
「何!? 魔王侵攻があるかもしれないというのか?」
「かもしれないな」
「……この森から受ける感じと、何か関係があるのだろうか?」
「調べておいた方がいいかもしれないな。……よし!」
そう言って、騎士の一人は手から金色の光球を手から生み出して、前方へ放った。
「……光属性の契約精霊か。なんだ、魔法の素質はないって言っておきながら、あるんじゃないか」
「あくまで、騎士となるだけの最低限の聖魔法が使えるだけだ。保有魔力量も少ないし、素質はないよ」
兜で隠れて見えないが、少し顔に陰りがさしたような気がした。
「……すまない」
「いや、謝ることはないよ。……お、帰ってきた」
精霊が手の上に戻ると、しきりに頷く。
「行って来いってさ。ただ一人で大丈夫か、ってさ」
「問題ない。少し見てくるだけだ。そっちこそ、私がいないせいで奇襲に負けたりするなよ?」
「ハッ、言ってろ! 確かに聖騎士様には劣るかもしれないが、これでも騎士の一端だ。負ける気はないな」
「様、はやめてくれ。ユード」
「へいへい。……くれぐれも注意しろよ?」
「わかってる。……では、ハッ!」
馬に方向転換を指示し、気になる場所へと向かう。
(精霊のざわめきとは違う?)
どこか覚えのある、笛の旋律――
「ハッ!」
――音源に向かって馬に急がせる。
そこには八色に光る多くの精霊に囲まれながら笛を吹く、五歳位の青いワンピースを着た黒髪の少女と、小さな茶色い動物がいた。
(なんで、全属性の精霊があんな子供に? いや、それよりも、あれは猪――ワイルドボアの子供じゃないか! 親が近くにいるのか?)
馬から降りて辺りを見渡すが、親は見つけられない。
その間に少女の演奏が終わり、猪はどこかへ行った。
(よかった。このまま彼女を保護して……)
「ブヒー!!」
(何!? 子供は帰ったのに!)
前方には勢いよくこちらへ走ってくる大きな猪。
アーテナは走って、少女の前に出ると盾を構えて魔力を込める。
イメージするは――障壁!
「我らを守れ! プロテクト!!」
重い衝撃と共に盾にぶつかる猪。
(お、重い……一旦跳ね返して怯んだところを斬るか)
「我は鏡、全てを跳ね返せリフレ」「ダメ―!!」
突如後ろから聞こえてきた大声に驚いて、詠唱を止めてしまった。
「うわっ」
気が抜けた隙に、ぐいぐい押してくる猪。
「そんなこと言っても、これはどうしようもないんだ」
後ろの少女に向かって、諦めろと言うが……
「それでも、ダメ! ……おっきな、ちゃいろさん。これをきいて、おちついて……」
そう言って笛を構える少女。
「仕方がない。それできかなかったら、斬るからね?」
答えは笛の旋律として返ってきた。
先ほど子猪に聞かせていたのとは違う、聞いていて眠くなるような穏やかなメロディ。
これもアーテナがきいたことがある曲だった。
(古の子守唄――ララバイ? これはあの一家のみに継承される曲のはず……)
アーテナの脳裏によみがえるのは、先の戦争で死んでしまった――精霊使いの奏者。
しかし、この少女がその子供ならば……そんな考えの間にも少女の演奏は続いて行く。
(まずいな、私まで眠くなってきたぞ)
その曲は、あまりにゆったりとしていて、睡魔を誘うのには十分な音だった。
少女の演奏が最終楽章を迎えるころ、急に盾に重みがなくなり、猪がフラフラと去って行き、子供と遠くで合流しているのが見えた。
「やったー!」
「やったー、じゃないだろう? どうやって、ここに来たんだ?」
「うぅ……」
「えっと……」
眼に涙を浮かべ見上げられると、それ以上何も言えなかった。
「わかったよ。じゃあ、名前は?」
「フロウ! フロウ=フォルテ」
(やっぱり、あの一家の娘なのか……)
「ねぇ、ねぇってば!」
「ん? どうした?」
「騎士さんの名前を教えてよ」
「あぁ、悪い」
兜を脱ぎ、それを胸の前に片手で抱え、礼をする。
――これは敬意を表するときに使われる礼だが、この少女に対してなら使ってもいいような気がしていた。
「私はアーテナ。アーテナ=アイギス=ニーケだ」
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