第十一話~七色の放撃手
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今回は、いささか内容が浅くなってしまった気がしますが、少しでも、楽しんでいただければと思います。
アーテナとシーナが模擬試合をする時、フロウは鉄製の鎧を着た数人の騎士さんと共に特別観戦席にいた。
(二人ともけがしないかな?)
『大丈夫だと思うよ』
フロウがアーテナとシーナの両名を心配すると、ブルーが“安心して”と言葉をかけてきた。
そこへ、一人の男の騎士さんが話しかけてきた。
「君は相当あの二人から気に入られているんだね?」
「そう、なのかな?」
フロウは騎士さんの言葉に対して確信を持てず、首をかしげる。
「まぁ、少なくともシーナって人に大事にされていることは間違いないだろうな」
「だな。なんせ『フロウに傷一つでもつけたらフロウが許してもボクが許さないよ』だもんな」
「そうなんだ」
会話に混ざってきた二人から聞いた、その言葉は嬉しくて、恥ずかしかった。
「それ、フロウには言うなって言われてなかったか?」
「「「あっ!」」」
今までの会話を聞いていた一人が告げた一言に、その場にいたさっきまで話していた三人が硬直した。
アーテナが来ている鎧と違って、顔が出る形の鎧の為、顔色が真っ青になっていくのがよく分った。
「だいじょうぶ?」
あまりの変貌ぶりに、フロウも心配になってきた。
「あ、あぁ……。大丈夫だ……と思う」
「頼む。この話は聞かなかったことにしてください」
「お願いします」
三者三様の返答に、フロウは面白くなってきた。
「もし、わたしがけがをしたら、きしさんさんたちはどうなっちゃうの?」
「……………………」
その言葉を発すると、その場にいた三人のみならず、騎士さん全員が冷や汗をかき始めた。
「大丈夫。命に代えても俺達が絶対守るから!」
『ねぇ、フロウ。ちょっと怪我してみたら?』
ブルーも騎士さん達の反応が面白くなってきたのか、そんな事を言い始める。
「じゃあ……」
『さあ、みなさん、お集まりいただきありがとうございます。今回戦いますのは、突撃の聖騎士さんこと――アーテナ=アイギス=ニーケと、情報が一切謎に包まれたままの七色の放撃手――シーナだ~!!』
次の攻撃をしようとした時、司会進行役の言葉が流れた。
「そういえば、シーナって人は情報が一切謎に包まれたままでありながら二つ名がついているんですか?」
「それは出身地や得意武器が謎だからだ」
先ほどの三人の内の一人の騎士さんが疑問を口にすると、近くに来た、アーテナと同じ鎧を着た人がその疑問に答え始める。
「え? 出身地が不明なのはよくあることでは? 得意武器だって、今、腰につけているレイピアじゃ……」
「確かに、出身地が不明なのはよくある……が、あいつはレイピアを使いながらも、投げナイフを使いこなす。そして、走る時に足音が全く立たない。まるで、暗殺者であるかのようにな」
「そんな……」
「かと思えば、一部では銃を使っているところを見たという噂もある。だから、あいつが何者なのか謎なんだ。そして、さまざまな攻撃方法を持つ者として、あの二つ名がつけられた」
「なるほど……って、団長!?」
「今頃気が付いたのか……」
フロウは難しいことは分からなかったが、騎士団の人は面白い人が揃っているんだなと思い始めていた。
そして、模擬試合が始まると、会場の人達が元気に騒いでいた。
あちらこちらから『行けー!』とか『そこだー!』という言葉が聞こえてくる
フロウも応援席から二人が光を放ちながら高速で動いているのを見ていた。
実際には、目が追い付かず、光だけが見えていたわけだが……。
――そんな、お祭りのような騒ぎだった会場は、骸骨の大群が来た時、状況が一変してしまった。
観客席にいた三千以上の人は、いち早く非難しようと四か所の出入り口に殺到していた。
その結果、後ろから押されて転ぶ人や、押されて泣き叫ぶ子どもが続出し始める。
フロウは、動くよりもここに居たほうが安全だろうということで、動くなと騎士団長から言われていた。
「押さないで! 焦らずに早く外へ出てください! 我々が障壁を張って、皆さんをお守りします!」
騎士さんが必死に声を張り上げているが、聞こえることすらやっとの声量となってしまうぐらいに、人は皆、逃げるのに必死だった。
――騎士さんが障壁を張り終えた時、戦闘フィールドで動きがあった。
「おい! 突撃の聖騎士さんと七色の砲撃手が共に倒れたぞ!」
「やべー! さっさと外へ逃げろー!」
その声に、フロウがそちらを見る。
――確かに二人が倒れていて、近くには厚い布をかぶった、人っぽいのがいた。
(なにかできないの?)
『無理だね。大人しくしているしかないよ』
(そっか……)
「お前達はここを守っていろ!」
フロウが何も出来ないことにショックを受けていると、団長さんが、アーテナ達の所に向かって行った。
何か話しているという事は分かるのに、何を話しているのかは分からない中、フロウの近くにいた騎士さん達が騒ぎ出した。
「何!? 森からも大量の骸骨兵が来た、だと!?」
「な! 早く、団長からの指示を仰げ!」
そう言って、一人の騎士さんが、団長さん達の所へ走って行く。
すると、厚い布をかぶった人っぽいのがアーテナを連れて消えて行った。
「馬鹿野郎! 走ってきたら魔方陣が作動するだろ!」
「畜生、嘘だったのか! 騙された!」
二つの大声が少しの時間を空けて、会場に響き渡った……。
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