表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ヴェイド  作者: 片桐渚
11/20

第十話~解放

このページを開いてくださり、ありがとうございます。m(__)m

少しでも楽しんでいただければ幸いです。

「……そっか、そうだよね。君達がいるからこんなことになるんだよね? 全て、君達のせいなんだ……」

 混沌とした特別訓練場の中央で、一人――シーナは笑って、そう呟くと、レイピアを腰の鞘に納めた。

 アーテナは魔法構築の配置につく間、ずっとその姿を眺めていた。

(これは危ない……)

 集団障壁――ファランクスの詠唱開始の指示を待つ。

 その間、頭の中では警鐘が鳴り響いていた

「詠唱開始!」

「そうはさせませんよ。行きなさい、私の下僕達よ!」

「公国魔法使いの名において、守り抜けー!」

 団長は騎士団に詠唱を開始させる。

 ローブを着たモンスターは死者を操って、騎士団の詠唱の阻害しようとする。

 フォルスカーは魔法使いと共に、火属性魔法で敵を燃やして数を減らし、騎士団の詠唱時間を稼ぐ。

「そう、君達が悪いんだ……。消えちゃえ、全部……」

 シーナは空いた右手で銃を取りだし、

「全魔力装填――フルロード……」

 両腕を肩の高さに広げる。

「恍惚の弾丸――トランスバレッド」

 死者の軍団の中に飛び込んで、回りながら乱射した。

火・水・雷・土・風・氷・光属性の魔力を圧縮した弾丸は、放射状に広がっていき、死者達を次々と消し去っていく……。

 その光景は、まるで虹。シーナの二つ名――七色の放撃手をよく表していたのかも知れなかった……。

 ――だが、その美しさも過ぎれば、ただの狂気。

「おい、あの砲撃はいつ終わるんだ?」

 騎士団のファランクスの詠唱が終わるころには、シーナの砲撃によって、死者は敵の本体を守る、ごく少数だけとなっていた……。

 それでも、シーナは回り続けながら砲撃を続ける。

 その弾丸は、アーテナや公国の魔法使い達を守る障壁にも襲い掛かる。

「クッ、誰かあいつを止めろ!」

「そうだ! このままだと俺達までやられるぞ!」

「それ以前に、この魔力使用量だと、あいつ死ぬんじゃないか?」

 ――最後の一言が、アーテナの耳にも届く。

(確かに……。だが、どうやって止める……?)

「はぁ……。いきなり乱射し始めたと思ったら、ただの混乱――トランス状態ですか、愚かな……」

 今まで身を守っていた死者達が消し去られると、反撃とばかりにローブを着たモンスターは手らしきものをシーナへと向ける。

 アーテナは、障壁の維持を捨ててシーナの元へと全力で駆けていく。

「シーナー!!」

「死になさい……」

 闇の魔力の波動がシーナへと襲い掛かる。

(間に合わない……)

 そう踏んだアーテナはある魔法を詠唱する。

「我は汝の身代わり、盾と成す! サクリファイス!」

 ――それは、聖騎士のみが使える、自分が近くにいる対象者の前に転移して庇う、自己犠牲の魔法。

 そして、前方からは闇の魔力の波動。後ろからはシーナの魔力弾がアーテナに襲い掛かる……。

「アーテ……ナ?」

 自分の攻撃を受けて、倒れるアーテナの姿がシーナの目に、はっきりと映った。

「どう……し、て?」

「私は騎士だ。だから……な、いつだって、守り通すんだ……」

 後ろにいるシーナに向かって、笑って答えながらも、足から力が抜けていく。

「アー、テナ……。アーテナー!」

「シーナが泣くなんて久々に見たね……」


 ……トサッ。


「アーテナー!!」

「早く、あの放撃手を下げて治療しろ! そして、この場からできるだけ離しておけ!」

「イヤだ、嫌だよ! アーテナー!!」

 静かに崩れ、フィールドに横たわるアーテナを見て、泣き叫ぶシーナを騎士団と公国の魔法使いたちが協力して、その場から引き離しにかかる。

「さて、と……。そろそろ決着にしようか? 魔王の右腕――いや、オーディス」

「おやおや、お怒りですか? 確かにこの方に当たりましたけどね、勝手に当たりに来たんですよ?」

 アーテナは霞み行く目で団長・副団長がローブを着たモンスターと対立しているのを見た……。

「そうかい。で? そいつをどうするつもりだ?」

「そうですね……。とりあえず、この方は結構な魔力の素質を持っているみたいですからねぇ」

 凄みをきかせて訊ねる副団長に対して、オーディスは気にすることもなく、ポケットから正八面体の結晶を取り出す。

「この魔王の魂を入れてみようかと……」

「何!? 何時の間に?」

 驚く副団長を見て、手に入れた結晶を見せびらかすようにしながら笑う。

「転移させられる直前に手に入れましたよ?」

「…………」

「おっと、動かないでくださいね? ここには、私が不可視の魔方陣を密かに張り巡らせましたから」

「チッ」

「では……」

 動けない団長達を前にして、オーディスはアーテナを掴んで後方へ跳ぶと、魔王の魂が入ったという結晶をアーテナの胸に押し込んだ。

「チキショウ!」

 アーテナは、朦朧としていた意識が痛みによって、一気に覚醒した。

「うわー!!」

 今までに経験したことがないような激痛にアーテナはのた打ち回る。

 そして、アーテナは再び意識が沈み込められるような気がした……。

「これで魔王が仮復活ですかね?」


 そう呟くオーディスを目の前にして……。

読了ありがとうございます。今後も是非、よろしくお願いします。m(__)m

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ