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ヴェイド  作者: 片桐渚
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第零話~奏者

初の連載小説投稿です。よろしくお願いします。m(__)m

「おい、この先は危ないからダメだ!」


 二人の門番に五歳ぐらいの少女が足止めされていた。

(どうして? このさきにいきたいのに!)

「ダメと言ったらダメだ!」

 口に出していないのに、門番には伝わったようだ。

「えー、ケチ! もういいもん!」

 少女は走ってそこから立ち去っていく。

「かわいそうなものだよな。外で自由に遊ばせてやれないなんてさ」

「仕方がないだろ? 国外はモンスターが徘徊しているんだ。外に出たら、あんな小さな子なんて……」

「だな……」


 そんな門番達の会話は、外に行けなかったという事実で頭がいっぱいだった少女には聞こえなかった。

 この星――ヴェイドには多くのモンスターが蔓延っており、それから身を守るためヒューマン族は砦を作り、そして小国をいくつか創り上げた。

 他にも、活動のために魔法や戦闘技術を磨き上げ、数十年に一度来る魔王侵攻――モンスターの一斉攻撃に備えていた。


(ちょっとそとにいきたいだけなのに……)

 少女には昨日たまたま見た国外に広がる森へ行ってみたい、それだけだった。

「おーい、輸送物資が来たぞー! 門を開けろー!」

 その声に振り向くと、輸送物資を積んだ大きな四頭馬車が、さっき追い返された門の前にいた。

(そっか、あれのかげにかくれれば……)

 実際、それはうまく行った。

「何か精霊がざわついている気がしないか?」

「いや、俺は魔法の素質はないからな。わからないな」

「そうか……」


 そんな荷物の護衛騎士たちの会話を残して……。

(やった! そとにでられたー)


 少女は門を抜けた後、すぐに馬車から離れて森の中に入って行く。

(すごーい、こんなにそとってきれいなんだー!)

 周りは木々の葉が生い茂っており、頭上には黄色い果物がおいしそうに実っている。

 普段、国内の城壁しか見ていない少女にとって、こんなに多くの木々に囲まれるのは初めてだった。

(あれー? あれはなんだろう?)

 十メートルぐらい先にある茶色く丸い物体に向かって走っていく。

 すると、どうしたことか、それは逃げるように転がって行った。

「あーん、まって-」

 大声で呼びかけると、さらに早く逃げて行く……が、途中でピタリと止まった。

「やった。まってくれた!」

 少女は動かなくなったそれに駆け寄る。

 全長が二、三十センチぐらいの茶色く小さいその物体は、何かの動物の子供のようだが、腹部に切られたような怪我を負っている。

 逃げるために走ったからだろうか、傷口は裂けるように広がった痕もあり、息も弱く、今にも死にそうなのが少女にも伝わった。

「どうしよう……」

 辺りを見渡しても人の姿は無いし、小さい割に重いため、連れて帰るということも出来なさそうだ。

(うぅ……)

 目の前には、痛みに苦しむ小さな命が一つ……。

(そうだ。たしか、だれかがいってたよね?)

『いいか、苦しんでいる人がいるときは音楽を聞かせてやるんだぞ? 相手の痛みが安らぐように願いを込めて……な』

(やってみよう。ちゃいろさん、げんきになって!)

 少女はどこからかオカリナを取り出すと、それを吹き始めた。 奏でた音は、まだ演奏技術が乏しく、つたない。

 しかし、聞いていて気持ちが安らぐような旋律……。

 少し経つと、少女と一匹を囲むように八色の光球が集まってきた。

 少女は自分を囲んでいる光の正体はわからなかった。

 だが、何故か楽しくなってきて、オカリナを吹き続けた。

 しばらくすると少女は演奏を止めた。

(げんきになってくれたかな?)

 ふと、隣りにいた動物を見ると、ぴょこぴょこ跳ねていた。

「げんきになったんだね? よかった!」

 そのまま、跳ねるように動物は走って行った。

「もう、けがしちゃだめだよー! またねー!」

 少女は動物の怪我が完治していることには気づかずに、ただ、元気に走って行ったことを喜んだ。


 ……少女の周りを囲む八色の光球とは別に、遠くから少女を見ている人がいるとも知らずに。

読了ありがとうございます。m(__)m

もしも、何かご意見・感想がありましたらお待ちしておりますので、よろしくお願いします。


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