<3>伝わる気持ち
駅前に位置するマックのある通りは様々な人が行きかっている。
ぼんやりとカイトはポテトを摘む手を休める事無く、ユウと共に人並みを眺めていた。
次第に冷えた体が温まってきた頃、不意にユウがカイトを見据えた。
「あそこにいる、一年生。知ってる?」
投げ掛けられた言葉にカイトは窓の外を探し、そこに同じ制服で佇む生徒を見付けた。緩いパーマを掛けた子が、駅の改札口で佇んでいた。人待ち顔で立たずむその生徒は、カイトは見た事もない子だった。
「知らない子だけど。あの子がどうしたの?」
さも関心のない様な返答に、ユウは少しだけホッとした様な気がして、そんな自分に少し焦る。そんな感情は、自分の奥深くに仕舞い込み、
「カイトの事気に入ってるんだって」
「へ〜。いい子じゃん」
試すような口調で告げたユウに、挑むような視線でカイトは返した。真剣じゃない口調。
心の底から安堵したのがどうかばれません様に、とはユウの胸裏。
そして、どうして気に入られてるだけの人を話した事もないのに「いい子」だって言えるのと、悪態を吐いた。
カイトが付き合う子は、あたしが認めた子じゃないと許さないから。
以前言った言葉をカイトが覚えているかどうかは謎だけど、それは冗談ではなく本気で言ったのは確かだった。
産まれた時からの、自分の片割れであるカイトを嫌な子だけには渡したくない。
それは、片割れだからこそ。
ただ、それだけの感情。別に、誰かに嫉妬している訳じゃないのだと、ユウは心の中で呟いた。
「ユウのコンポタ冷めてる」
「あ! 勝手に飲まないでよ! いつも人の取るのやめてよね」
「少し、元気でた?」
「……」
こういう不意打ちが家の弟は狡いのだ。
嬉しくて、ついはにかみそうになる顔を思わず逸らした。
確かに、今日は気分が落ち気味だったのは否めない。
なんでそんな気分になったのか、大体見当は付いている。ユウはそっと窓の外の一年生に視線を向けた。丁度待ち合わせの友達が現れて、問題の彼女は笑顔で話し込んでいた。
「相坂 万里」
というその一年生は未だ初々しい感じでとても可愛らしかった。マリがカイトの事を気に入っているらしいと、ユウは昼休みに仲間内でお弁当を広げている時に聞いた。
自分と正反対の容姿を持つ彼女に、不安を煽られたのは言うまでもない。もしかしたら、カイトが取られてしまうかもしれない。彼女は小さくてもバランスよく顔も可愛らしい。
そして、そんな感情を持ってしまう自分に疑問を持ちつつ悶々とした気分で過ごしていたのだ。
だけど、それを誰かに分かって貰おうとは思っていなかったユウは、普段と同じ様に平然と過ごしていたのだ。見破られるとは、カイトはやっぱり侮れない。
嬉しいような悔しいような気分でユウはカイトに小さくピースを送った。
ユウの中の悲しい不安は、ぬるくなったコンポタに少しだけ暖められて。
カイトの暖かい眼差しの中、カイトが双子の弟で良かったと心から思った。