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LOVE OF BLOOD  作者: hisa
27/56

<27>逃げる理由

 きらきら、きらきら――

 昨日の降雪が嘘かの様な晴天で、降り注ぐ陽光が見事なまでに白雪に反射し、至る所に敷き詰められたダイヤの如く煌めいている。

 いつもの見慣れた景色は、昨日に引き続き普段とは違う姿を見せて、人の目を楽しませてくれていた。

 けれど、そんな大自然の天恵すらも、ユウの沈み込んだ気持ちの浮上には何の力も発揮しなくて。


「……はぁ……」


 朝から何度吐いたであろうかという溜め息。これ以上幸せが逃げてしまったら、一体どうなってしまうだろう?

 ますます憂鬱に囚われて繰り返す溜め息。

 これじゃあ、メビウスの輪、堂々巡りもいいところだ。

 冷たい空気の中、窓から差し込む陽の暖かさに、睡魔が忍び寄る。椅子に深く腰掛けたユウは、ひと気の余りない図書室にいた。

 少しずつ押し寄せる睡魔に、うつらうつらと背を押す陽光。どうして、こんなにも身を委ねてしまいそうになるかと謂えば、今朝、いつも以上に異常な程の早起きをしたからであって。

 朝の七時頃にカイトは起床する。

 その時間は早かったり遅かったりとまちまちだけど、絶対に顔を合わせられないと思ったユウは、机の上に置かれた冷めた紅茶から逃げるように六時には家を出た。

 クラスが違うから、家と休み時間だけ逃げ延びればいいと思い、余り人のいない図書室を選んで、危険な時間帯を遣り過ごしていたり。だけども、こんな事が全く無意味だって事もちゃんと理解している。同じ家に暮らす家族だから、帰る所は同じなのだ。

 こればかりは避けようがない。

 なのにこの期に及んで悪足掻きしてしまうのは、考える時間と覚悟を決める時間が欲しいから。


「……はぁ……」


 溜め息ばかりが淀みなく出るのに、自分の考えはうじうじしていて澱みまくってる。

 ユウは目の前の机に突っ伏して、両手も投げ出した。


「明日、あーしーたー?」


 十二月二十五日。言わずと知れた、クリスマス。

 差し当たって、ユウはまず、選択しなければならない事がある。

 一つの約束と一つの誘い。


「もう、どれも選べなくない?」


 自問する。

 また、あのクリスマスツリーをクリスマス見に行こうと約束した。今年のクリスマスも一緒だと、心の底から嬉しかったのに。今では、こんなにも不安に押し潰されそうなんて、あの時は思いもしなかった。

 この約束だって、もしあのマリとの遣り取りを聞かれていたとしたら、実現するわけもない筈で。仲良し姉弟で見に行くのとは明らかに意味合いが変わるし、それ以前に気持ち悪いと思われるのがおちだ。

 クリスマスツリーをカイトと一緒に見られない辛さもだけど、それ以前に拒絶される事が耐えられない。

 

 では、どうする?


 もう一つの誘いに思考を巡らす。やっぱり正直乗り気にはなれないのだ。こんな現状で、打開策も見付からないのに、カイトに向けられた気持ちは留まる事がなくって、こんな気持ちを抱えたままサクと付き合うなんて。

 それでもいいと言われても、それは何だか嫌で。

 サクの言う事もよく理解はしているつもりだった。双子で恋愛したって幸せにはなれない、みんなそう言うだろう。だけど、ユウは実際にそんなところまで想像した事はなくて、気持ちがばれないように隠すので精一杯だったのに。

 それなのに、サクとマリにけし掛けられた事に因って、気付いてしまった。

 好きだって認めてしまえば、どんどん欲が出て来てしまう事。好きだから、拒絶されるのは本当に恐い。でも、それ以上にカイトの心が欲しくて堪らない。こんな状況下で、こんな事を思ってしまう自分が思いの外強かで、それがユウには少し笑えた。

 この衝動に任せて、カイトを選べば、どう転んでも後戻りは出来ないから。

 ユウは深く息を吸い込んで、椅子から立ち上がった。


 先程と変わらぬ雪景色はきらきらと煌めいて、それを見詰めるユウの瞳にまだ揺れる決意を見た。

アクセスして頂いてた方、久し振りの更新ですみません(汗)いつも読んでくれている方も、初めてお読み頂いた方も拙い文章にお付き合い、有難うございます!

更新、スローペースとなってしまってますが、お暇な時にでも立ち寄って頂けると、とても嬉しいです。

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