<2>伝わる気持ち
気が付けば早いもので、季節は木枯らしが吹く人肌恋しい季節になっていた。
校舎から正門までの道程は、黄色い葉も残り僅かとなった、銀杏の樹が寒風に揺られている。
緩んだマフラーを巻き直し、風に髪を靡かせたユウは隣を歩く双子の弟のカイトにちらりと視線を寄こした。
寒さもなんのそので、鼻歌を口ずさむ弟は双子なのにあまり似ていない。軽い髪がふわふわと風に踊らされても一向に気にする様子もない。
正門までのそんなに長くはない道程。
一緒に歩くのは久し振りである。
「ユウ。帰りに寄り道」
突然鼻歌を止めたカイトは幼げな笑みをユウに向けた。見慣れている、真夏の青空の様な笑顔。寒さで冷えた心が少し温まった様な気がした。
「どこに? まっすぐ帰らないの?」
「だって、腹減ったし。何か食ってこうぜ」
カイトとは対照的な大人びた笑顔をユウは向け、穏やかに微笑んだ。
了解の意を受け取ったカイトはまた、小さく鼻歌を口ずさんだ。
ユウとカイトは一卵性双生児ではない。だから、双子と言ってもあまり容姿は似ていなかった。だけど、双子特有の共通箇所はいくらでもある。まったく同じではないのだけれど。でもそれが、お互いに安心する為の安定剤になっているのは自覚がある。
産まれたときから二人は何をするにも一緒であり、大変仲の良い双子で有名だった。それは今でも変わらず、二人でいる時間は穏やかに流れている。
ふうわりとした、薄茶色の髪が印象的でぱっちりとした瞳に長い睫。ユウよりも遥かに高い身長のカイトは同級生からも人気があった。
カイトの横顔を眺めながら、ユウは小さな溜め息を吐く。
ユウはと云えば、どちらかというと大人びた印象を併せ持つ子である。平凡な顔よりは美人よりなのだが、何よりも本人はカイトと対照的に低い身長がコンプレックスだった。
いくら双子とはいえ、まったく同じではない。
それでもユウは、カイトに焦がれた視線を送ってしまう。そんな視線には気付かないカイトは、
「マック食べたい」
「あたしも」
さっそく双子の特有の意思疎通を発揮し、駅前のマックへ二人は向かった。
そんな微笑ましい二人の背中を、銀杏の木が優しく見送る。
二人の後には金色が敷き詰められた道が続いていた。
「お持ち帰りで!」
「え! やだ、どうせなら食べて行こうよ。寒いから冷めちゃうじゃない」
素晴らしく以心伝心する時もあれば、意見の食い違いもよくある話である。以心伝心のタイミングが絶妙で、吉となるか凶と出るかは運次第である。
大抵の場合は、優しさ滲み出るカイトが折れる羽目になるのだけれど。
結局今日もユウに負けたカイトは二人分のハンバーガーが乗ったトレイを手に、二階の窓際の席を確保した。後ろから大人しく着いて来たユウは無言で席に着き、窓の外を眺めていた。
ほくほくのポテトを口へ運びながら、カイトもユウと同じく視線を下界に落した。