CACE1-3:課長の場合
「イックショオォイッ」
「冷えますねぇ」
俺と山岸は今漁船に乗っかっている。
言っておくが、夜釣りを愉しむ気など欠片程もない。
「…ったく、もうちょっとマシな場所で闘らせろよな〜…ズルズル」
「毎回海の上ですからねぇ…はい、ティッシュ」
「おっ♪サンキュ」
魔法による闘いは大概周囲に少なからず…いや、かなりの規模の被害をもたらす可能性を含んでいる。
因って被害を最小限に抑えるために極力人家や施設から離れた海や山で戦うのだが、陸だと予算やら地形が変わったら誤魔化しが効かないやらで、いつも同じ場所…つまり海のど真ん中が定例のリングになっている。
「もうすぐ着きやすぜ旦那」
「ありがと親父さん」
「いつもありがとうございます」
「いやいやこのぐらいお安いご用だぁね♪それより今夜も勝っとくれよ!旦那と兄ちゃんに賭けとるんだからね」
「小遣い稼ぐのも程々にしときな」
「そうですよ、賭け事は身を滅ぼす元ですよ」
「ハァッ!この仕事のおかげで手に入れた愉しみさね!そう簡単に手放してなるものかってんだ」
オヤジはそう言うとカッカッと豪快にわらった。
ひとしきり笑うと俺達に船を降りるように促した。
「山岸。」
「了解!」
山岸は船の縁に近付くと
「フゥッ…」
と一息吹き掛ける
するとそこはみるみるうちに、白い氷の海と化した。
…まったく…いつものことだがコイツの魔法には驚かされる。
魔法遣いは大低…なんらかの神の恩寵を受けていて、それがどんな神かによって魔法の特性を左右される。
山岸の場合は…海とその恵みの神とか言うらしい…
「いやぁ〜いつ見ても壮観だぁね!じゃあなお二人さ〜ん」
言うだけ言うと漁船に乗って帰ってった。
「救われねえなあのオッサン」
「ですね…」
おっ…そろそろ敵さんが現れたようだ。
明らかに俺たちが乗って来たボロっちい漁船よりデカい上に立派な船から、何やら人がぞろぞろと出て来た
「多いですね、ざっと30人といった所でしょうか」
「団体さんのおな〜りぃ」
「金掛かってますねぇ」
「相手は外資系だ…日本で落ち着いてる一企業とは格が違うとでも言いたいらしいな」
「勝てますか?」
「勝つんだよ」
連中も戦う体制に入ったようだ…
特殊な陣形…まとめてかかってくる気らしい
「行くぞっ」
「はいっ!」
「「「「「「馬鹿が」」」」」」」
「「「「「この人数相手に勝つ気でいるとは」」」」」
「「「「「阿呆な連中よ」」」」」」
「「「「「ゆくぞ各々方!」」」」」
「「「「「オウ!!!」」」」」
「「「「「天をも貫く我らが光!」」」」」
それにしても文字数のかかる連中だ…
何故か5人ごとにまとめて同じことを話している。
「「「「「くらえっ」」」」」
相手の陣形から巨大な光弾が放たれる。大きいながらもその制御は完璧、かなりのスピードを持って俺たちに突っ込んで来る。
「バックアップ!!!」
山岸にそう叫ぶと俺は跳躍し、触れれば無事では済まないであろう光球を殴り付けた。
バシイィィィィン…
光球は保たれていたまとまりを失い、幾片もの欠片となって周囲に飛び散り海面を覆っていた氷を砕いた。
「「「「「なっ…何と!」」」」」
「「「「「我等の術を拳一つでだと!?」」」」」
「「「「「奴は化け物か?」」」」」
「「「「「落ち着け!」」」」」
「「「「「第二撃行くぞ!」」」」」
「させません」
「「「「「何ィ」」」」」
「今度はこちらの番です」
山岸は氷の床に手を当て二言三言唱え、そっと手を放した。
「水泳の時間です」
山岸の立っている部分から放射線上に氷が割れて行く
慌てふためいた相手の魔法遣い達は統制を失い、動きの遅い者は海へ墜ち、速い者は空宙へと逃げる。
「「「「「ええいこうなったらバラバラになって戦ってや…」」」」」
逃げるのを黙って見ている訳にもいかない
「おっと、ちゃんと泳げよな」
俺は空で奴等を次々と海へ叩き落として行く…
下の海はさっきまで分厚い氷に覆われていただけあって北極並みに冷えており、死ぬには十分な状態だった。
それに落とされたのだから寒中水泳所ではなかったのだろう、命からがら上がって来た者が情けなく土下座の状態で命乞いしている。
勝負ありだ
「んだよ歯応えねえなぁ」
「数いるからマズいかと思いましたが期待ハズレでしたねぇ」
迎えの船が戻って来た…
「うぃーす御二人さん♪また勝たしてもらったぜぃ」
「オヤジこりねぇなぁ」
オヤジの下品な笑いと共に船は陸へと戻っていく。
すでに空は白み始め、また新しくも平凡で忙しい日常が戻って来ようとしていた。
長い…それにしても長うございました…
5mmばかし挫けかけました…
今まで作文ですら原稿用紙一枚半書くのに相当無駄な時間を費やした程の筆不精だったのは秘密です(ぇ
それはともかく読んでくださった皆様本当にありがとうございます。
自分の書いた駄文を読んで下さるなんて世の中物好きも多i(射殺
次回はもう少しばかり短くスッキリさせたいなぁなんて…無理かも
でわでわ