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ときつねシリーズ

つみかさなるは、葉っぱの年賀状

作者: おおらり
掲載日:2025/12/28


 トキは、黒髪に黒い瞳の社会人だ。

 郵便ポストの中に、今年も葉っぱの年賀状を確認した。


 葉っぱに古い切手が貼ってある。

 達筆な字で、トキの住所が書いてある。

 コメントはない。毎年、綺麗な葉っぱが、不思議と劣化しないコーティングをされて送られてくる。



 ある日、きつねにアレルギーがでた。耳としっぽのまわりがかゆいと言う。真っ赤なぶつぶつができていた。医者はきつねの耳としっぽをとろうとした。しかし切ることも、引き抜くこともできなかった。



 トキは、おもちゃのスマホをとりあげた。

 きつねは、慌てた。

「トキさま、ダメ!」


 トキは願った。

「きつねの病気をなおしてくれ」


 その瞬間に、きつねの姿は消えてしまった。

 おもちゃのスマホはトキの手の中に残った。


 けれどもう、ただのおもちゃのスマホだった。



 以降、会うことが叶っていない。

 毎年、暑中見舞いと年賀状だけが送られてくる。暑中見舞いは、新緑の葉っぱを使って。年賀状は、紅葉した葉っぱを使って。


「元気にしてんのかなあ〜」



 トキはずっと考えている。

 なぜ願ったら、なぜ消えた。


 きつねは、きつねでいることのアレルギーになった。きつねアレルギーだ。それを治せと言ったら消えた。トキのとなりにいるには、きつねでいなければならなかったからだ。


(きつねでいれば、願いが叶えられた?)


(きつねでいなければ、願いは叶わない?)


 叶えなくていいのに、とトキは思う。

 トキは、自分の願いは、自分で叶えるのに。



 差出人は書かれていないから、返事を出したことがない。届かなかったとき、迷惑をかけるからだ。

 けれど5年も送られてくる。

 葉っぱで送ってくるのが『誰だか気づいて欲しい』気持ちのようで。きつねでいられないはずなのに、きつねでいようとしている証拠のようで。

 どうにかしてあげたいとトキは思った。



 トキは、年賀状を書く。


「きつねへ

 もう、きつねにならなくていいよ

 だから、一緒にピザでも食べよう」


(きつねに届きますように)

 郵便ポストに、年賀状を入れた。



 カコン、



 トキは、闇の中にいる。

 ザアアと音がして、光が差した。顔をあげると、新緑の葉っぱがあった。かと思えば、紅葉の葉っぱもある。

 少し離れた岩の上に、5年は髪を切っていなさそうな、赤い着物の女の子がいた。


「忘れものだぞ」

 トキは、おもちゃのスマホとキツネのキーホルダーを、女の子に返す。


「なんて呼べばいい?」


「あのね……」

 女の子はきつね色の髪の向こうで、嬉しそうにトキに笑った。


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