つみかさなるは、葉っぱの年賀状
トキは、黒髪に黒い瞳の社会人だ。
郵便ポストの中に、今年も葉っぱの年賀状を確認した。
葉っぱに古い切手が貼ってある。
達筆な字で、トキの住所が書いてある。
コメントはない。毎年、綺麗な葉っぱが、不思議と劣化しないコーティングをされて送られてくる。
ある日、きつねにアレルギーがでた。耳としっぽのまわりがかゆいと言う。真っ赤なぶつぶつができていた。医者はきつねの耳としっぽをとろうとした。しかし切ることも、引き抜くこともできなかった。
トキは、おもちゃのスマホをとりあげた。
きつねは、慌てた。
「トキさま、ダメ!」
トキは願った。
「きつねの病気をなおしてくれ」
その瞬間に、きつねの姿は消えてしまった。
おもちゃのスマホはトキの手の中に残った。
けれどもう、ただのおもちゃのスマホだった。
以降、会うことが叶っていない。
毎年、暑中見舞いと年賀状だけが送られてくる。暑中見舞いは、新緑の葉っぱを使って。年賀状は、紅葉した葉っぱを使って。
「元気にしてんのかなあ〜」
トキはずっと考えている。
なぜ願ったら、なぜ消えた。
きつねは、きつねでいることのアレルギーになった。きつねアレルギーだ。それを治せと言ったら消えた。トキのとなりにいるには、きつねでいなければならなかったからだ。
(きつねでいれば、願いが叶えられた?)
(きつねでいなければ、願いは叶わない?)
叶えなくていいのに、とトキは思う。
トキは、自分の願いは、自分で叶えるのに。
差出人は書かれていないから、返事を出したことがない。届かなかったとき、迷惑をかけるからだ。
けれど5年も送られてくる。
葉っぱで送ってくるのが『誰だか気づいて欲しい』気持ちのようで。きつねでいられないはずなのに、きつねでいようとしている証拠のようで。
どうにかしてあげたいとトキは思った。
トキは、年賀状を書く。
「きつねへ
もう、きつねにならなくていいよ
だから、一緒にピザでも食べよう」
(きつねに届きますように)
郵便ポストに、年賀状を入れた。
カコン、
トキは、闇の中にいる。
ザアアと音がして、光が差した。顔をあげると、新緑の葉っぱがあった。かと思えば、紅葉の葉っぱもある。
少し離れた岩の上に、5年は髪を切っていなさそうな、赤い着物の女の子がいた。
「忘れものだぞ」
トキは、おもちゃのスマホとキツネのキーホルダーを、女の子に返す。
「なんて呼べばいい?」
「あのね……」
女の子はきつね色の髪の向こうで、嬉しそうにトキに笑った。




