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病弱な従妹を優先する婚約者とそれを我慢できない私  作者: ノーネアユミ


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8/8

専属侍女は知っていた

 ラストは病弱なお嬢様の侍女視点です。

 私は転生者。

 今は子爵家の病弱なお嬢様に使(つか)えている。



 この世界は前世で読んだ小説によく()ていた。


 小説ではお嬢様は無関心(むかんしん)な婚約者に我慢(がまん)(しい)いられ、結婚後すぐに()くなってしまう。


 骸骨(がいこつ)のような遺体(いたい)を目にした実家の遺族(いぞく)烈火(れっか)のごとく(いか)りに(くる)い、(とく)苛烈(かれつ)な妹は真相(しんそう)()()かし伯爵家に復讐(ふくしゅう)する。



 そう小説のヒロインは妹様。



 物語は面白(おもしろ)かったけれど、目の前の女の子が将来不審死(ふしんし)をとげるとか殺人(はん)になるのは(ふせ)ぎたい。


 私に何ができるか分からないが、せっかく前世を思い出したのだ。運命を()えられるかもしれない。


 とりあえずお嬢様には我慢をさせないように頑張(がんば)る。

(我慢ばっかりしていたから、あんな男にも()えちゃったのよ)



 貴族の女性は美しさを重視(じゅうし)する。お嬢様もプルプル(ふる)えながらワンピース姿(すがた)で耐えていた。

(さむ)かったらもっと服を着ましょう」

 モコモコのセーターを()んで()()げた時は本当に(よろこ)んで、私を専属侍女にしてくれる。


 前世の知識で基本的な栄養学や健康法は知っていた。お嬢様も合理的な世話(せわ)()けて()こむ回数が()る。


「食べたい物があったら教えてください」

 本当は以心伝心(いしんでんしん)が理想なんだけど、お嬢様には自分の希望を言葉にするようにうながす。

 欲求(よっきゅう)は言葉にして外に出していかないと、本当に必要(ひつよう)な時に言えなくなってしまうのだ。


 せめて助けて()しい時に()ばれないと。



 ただ頭が(いた)くて()いている時は(こま)った。

 この世界にある痛み()めはアヘンとモルヒネ!

 劇薬(げきやく)じゃん。ありえねえ。


 ぬれたタオルで(ひや)やしても痛みは()えない。

 私は前世の知識をさらって、何とか(やなぎ)樹皮(じゅひ)にたどりついた。

 乾燥(かんそう)させた樹皮でお茶を()れて、やっとお嬢様は泣き()んだ。


 旦那様(だんなさま)(たの)みこんで、製薬(せいやく)会社に柳樹皮の研究をねじこんでもらう。

(はやくアスピリン完成しろや)


 その会社に漢方薬(かんぽうやく)(てき)な薬を輸入(ゆにゅう)してもらった。



「お(かゆ)が欲しいわ」

「今日はお庭を歩きたいの」

「まだちょっと寒いわ。ショールを()って来てちょうだい」


 少しづつ意思(いし)を伝えられるようになったお嬢様が、とうとう婚約した。

 毎週ゲッソリしながら外出していたのに、相手はたった三回目から交流をすっぽかしやがった。


(思っていたよりクズだな)

 お嬢様に謝罪(しゃざい)の手紙を見せてもらったが、形式(けいしき)(ととの)えられているだけで誠意(せいい)は読み取れない。

「この方、お嬢様にはふさわしくありません」

 私ははっきり言葉にした。


 お嬢様いい子なんだよ。頼むから死なないで欲しい。




「あの方との婚約は(いや)ですわ」


 (ひら)いた(とびら)の先の食堂で、お嬢様が旦那様にハッキリ宣言するのを聞きとめた時、心が歓声(かんせい)を上げた。

 やったあ! お嬢様の婚約がなくなったぜ!


 (うれ)しさのあまり通りかかった執事見習(みなら)いをハグしてしまう。


「あ、ごめん」

 とりあえず(あやま)って仕事に(もど)ろう。


 

 これで物語の進行(しんこう)は大きく変わった。


 お嬢様の婚約は解消(かいしょう)される。

 そしてその影響(えいきょう)か、ついでに元婚約者の従妹が屋敷(やしき)から()い出された。



(この世界線ではまだ洗脳(せんのう)しきっていなかったのか)


 あの女、物語では伯爵家の嫡男(ちゃくなん)を洗脳してお嬢様を(ないがし)ろにさせた。

 お嬢様の死後(しご)は伯爵夫人の後釜(あとがま)にまんまと(おさ)まる。

 こっちの持参金も返さずに使いこんで。



 そしてこいつこそお嬢様に(どく)()り死なせた犯人だった。



 もう妹様の復讐劇もなくなるから、殺されなくなって良かったね。

 一発(いっぱつ)くらい(なぐ)ってやりたかったけれど、身分差(みぶんさ)にあきらめたわ。

 


 ちょっと残念(ざんねん)なのは、愛する彼が(にく)い男の弟だと知って苦悩(くのう)(もだ)える妹様の姿が見られないことだけど‥



 伯爵家次男は分かっていた!

 運命の相手が(だれ)かってことに♡

 

 伯爵父子が(たず)ねて来た時、私もお嬢様の後ろにひかえていた。彼が恋に()ちる瞬間(しゅんかん)をばっちし目撃(もくげき)できたぜ!



 嬉しさが止まらなくて誰かと感動を共有(きょうゆう)したい! 仕事の後で適当(てきとう)に一人(つか)まえたから物陰(ものかげ)で話をしようとした。


 しかしなぜか()こうから体をギュっとされる。



「二回目ってことは俺に気があるってことだよな?」


 ええっと、この間ハグしたのと同じ人じゃん!

 ヤバい、頭上(ずじょう)(ささや)かれたら、恋愛に免疫(めんえき)ない私は()()になっちゃう‥



 何でそうなったの!


(ちが)うのか?」


 相手が力をゆるめたから何とか腕から()げ出すけど、もう心臓はバクバクですわ。

 よく見たらこいつイケメンじゃん。うわぁ()ずかしいったらありゃしない。



 な、何て答えたらいいのよ‥⁉




 ご愛読ありがとうございました♪(*^▽^*)

 何とか熱も出さず毎日更新できました。


 感想やポイントをいただけましたら嬉しいです♡


 10/29 週間ランキングで一位! やっふー♪



 柳樹皮のお茶の薬効は適当に書いています。

 昔はモルヒネですら「アヘンチンキよりずっと安全」と思われていたようで、徳川慶喜も処方されていました。怖い。


 鎮痛剤は副作用や依存性がまだあるので、使い過ぎはダメですよ☆


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― 新着の感想 ―
サクサク進んで楽しく拝読しました。 若いころおしゃれは我慢と薄着して何度かひどい目に遭いました・・・ 侍女さんとは以心伝心になったようで、報われたのでは? 自業自得の一名を除いて、みんなハッピーな感じ…
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