婚約者目線 後
誤字報告ありがとうございました。
ボーっとしている時なので助かります。
しかし僕は父上から婚約解消を告げられた。
「これで多額の持参金もなくなる。お前はバカか」
頬を殴られた。
「まさかそんな、急になぜです」
「分かっていなかったのか? 出かける約束を二回も反故にしたのはお前だろう」
「そんなたった二回で」
成り上がりの娘は我がままなのだろう。
僕は説得のため彼女の家におもむいた。
が、そこで元婚約者の実情を初めて知る。
身体が弱いとは聞いていたが、まさかのレベルだった。
もっと早く教えてくれれば僕だって気を使ったのに。
しかし婚約がなくなったら、これからどうすればいいんだ?
情報が整理しきれないまま屋敷に戻る。
僕の足は自分の部屋ではなく別館に向かっていた。
「お兄様、来てくださったのね」
別館の入り口で、帰宅したばかりの従妹と鉢合わせる。
「今日はちょっと調子が良かったからお買い物しちゃった」
従妹は今日もおしゃれで‥ 薄着だ。
そう言えばこの子と僕はよく一緒に外出している。
一人じゃ不安だからと人気の店に連れまわされた。
「どうしましたの? お兄様」
混乱しているうちに、小さなサロンでお茶を飲んでいた。
「えっとその、実は婚約がダメになってしまってね」
「まあそんな」
従妹は悲しそうな表情だ。優しい子なんだよ。
「こんな素敵なお兄様を断るだなんてひどいお相手。さっさと別れて正解ですわ」
別にそんなわけではと言いかけた僕に、彼女は満面の笑みを浮かべた。
「かわいそうなお兄様。つり合うのはわたくしくらいかしら」
可愛いはずの笑顔に、一瞬、僕の背筋が凍った。
(なんだこれは? 気持ちが悪い?)
僕はその場をにごして立ち去る。
晩餐の後、コーヒーを飲みながら父に相談した。
「僕の結婚はどうなりますか」
父上は眉間にしわを寄せる。
「解消の理由が理由だ。病弱な婚約者を野外で長時間待たせたとか、周りに説明できんぞ」
「困るなぁ。兄さんが先に片付いてくれないと、僕の婚約が進まないよ」
弟が嫌みったらしく口をはさむ。
「お前たちも知っての通り、我が家の財政状況は芳しくない。持参金が期待できなくなったので別館は売り払う」
は? なんでそんな話に。
「考えていなかったの、馬鹿なのかな」
弟をにらみ返す。
「しかし別館にはあの子が」
「あれは弟の元に帰せばよいだろう。治療も終わっているのだから」
そんな‥ と僕は肩を落とす。
「それともお前が面倒を見るのか?」
「それもいいんじゃないかな。彼女、兄さん目当てでうちに居座っていたんだから」
悪寒が走る。
「そんなまさか。あの子は妹みたいなもので、無理です絶対」
結婚? 妹としてしか見ていない相手と? ありえない。
従妹は実家に帰すことにした。
ポイント嬉しいです。^0^




