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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

北陸新幹線

作者: 鹿目

17:00 北陸新幹線 かがやき

17:31発→20:23着(172分)かがやき514号東京行新幹線運行表

就職なんてもので人生を左右されるなんてまともに考えたら恐ろしすぎて平常心を保てない

「名城 拓哉」は先の読めない不安感、今までのやってきたんだというプライド、10回以上も面接をこなしてブラック企業の噂が立つところからしか内々定を貰えず、自分に対して期待しきれない悲しさがあった。

俺が最後に面接をしようと思った企業は、東京を本拠地とした元財閥の三大銀行の一つだ。

インターンシップの時点で体育会系のゴリゴリの男達、ロジカルシンキングの勘違い野郎ばかりで「これは俺居場所ないだろ」と思っていたが、夢だけは捨てきれなかった。

学校では迷信のような伝統のようなものがある。

それは「あえて学ランで面接を受けに行く」というものだ。

夢をあきらめきれない理由にもなるが、中途半端に学歴がよくうまくやってきたプライドがあった。

面接の直前は「もうこれで落ちても後悔しない」と思った。

 福井には実家があり、高校までの思い出は全部そこにある。俺は思い返すと感じの悪い人間だった。内心人を見下していたのだ。地元に帰っても迎えはいないし、もうすぐ福井を離れるが送迎は誰もいないのだ。

父母は家でお別れをした。

 17時31分の新幹線「かがやき」に乗る。片道分の乗車券と指定席券を見て新幹線のホームでずっと待っていた。口は駅で食べた鰹節の効いたそばを食べた。あれは小さい頃お父さんと電車に乗って旅をした思い出の味だ。定刻通り新幹線はやってきた。これに乗れば来月から社会人生活だ。

 新幹線の同じ車両には10人程乗り込んだ。人はまばらに座っており。俺の斜め前には着物の上品なおばあさんが座っていた。俺の座席は「11号車 7A窓際」おばあさんは「6B 廊下側」一人で座席を取るときは窓際を取りそうなものだがと適当なことを考えて時間をつぶした。

 大まかに説明すると「かがやき」は「敦賀駅、福井駅、金沢駅、富山駅、長野駅、大宮駅、上野駅、東京駅」に停車する。北陸三県は体感としてはあっという間だが、長野、大宮は少し長い、大宮まで行くと関東の雰囲気が景色にも影響して、上野、東京であっという間に日本の中心だ。

 そしてもうすぐ金沢だ。


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 「夢を見るのは若い時だけにしとけ」と父に言われ勢いで家を出てしまった。ギター、スピーカー、マイク、スタンド、アンプを持って出てきた。金沢では駅で仲間と弾き語りをした。夜はライブハウスで他のバンドのやつらと、どんだけ客が呼べるかとか、CDを何枚売ったかとか、ライブハウスに来ていたかわいい女の子を口説いたとかそんなくだらない話で盛り上がっていた。だが就職もせず遊び惚けていた時だった。

 「俺さ、バンド辞めようかな。」初期から一緒にやってきた仲間の発言でみんな離れることになった。

なにせもう32歳だ。遊び過ぎてた。バイトとライブハウスの往復は終わってしまった。「弦士ももう真っ当に生きようぜ」みんないずれはそういう日が来ることは知っていたんだ。でも実際に来た時人間はその事実を受け止められない。時間も容赦なく過ぎて、仲間も再就職や、彼女との結婚とおめでたい。俺はバイトを続けているがあまりにも虚しい。最近は楽器屋のギター教室のお手伝いをしている。

 でも心から熱を感じられなかった。好きなロックバンドの英雄たちはこんな下積み時代を送っていたのだろうか。先の見えない不安定な世の中でどうやってずっと希望を持てたのか。成功の兆しはないのに続けていいのだろうか。俺にはわからなかった。

 「(父親に向って)あのさぁ、俺けじめつけるよ」ここに来る4時間前の事だ。「もうけじめはつけてるだろ、バイトとギター教室の手伝い、試験を受ければちゃんと正社員にさせてもらえるんだろう。これでいいんだよこれで」俺にはよくなかった。「俺はこの1年東京で勝負して人生と夢を賭ける。賭けに負けりゃその人生をまじめに生きるよ」父は明らかにキレていた。

 「夢を見るのは若い時だけにしとけ」昔は声を荒げていただろう。もう今は声が渇いていた。期待をしなくなったのか、年なのか、諭しているのか。その言葉に答えられなかった。ずっと沈黙して俺は思った。もう結果で見せるしかないと思った。言う前から準備をしていた。それを車のトランクに隠していたので、家を出てトランクの物を取って走れっこないが走って東京を目指した。家はもうないと。

切符を買い電車に乗った。財布には3000円ほどしかない。

 「東京には仲間も金もツテもねぇ1年でさぁテレビでれっかなぁ」小さい声でボヤいていた。


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 そして金沢から富山へ


電車っていうのは非日常感があって遠くへ行けて様々な人が乗っています。

その人たちを見たり、感覚に浸るのが好きです。

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