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異世界は剣と料理と現代知識で  作者: わかね
第二章 文化祭と王国祭編
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閑話 心残りは孫の未来で(前編)

「………ちゃん。………おばあちゃん。こたつで寝たら風邪ひくよ?」


まどろみから現実へと引き戻されたのは孫の優しい声によって。隣に座り首を傾げながら見上げてくる。


「あぁ……ありがとう澪。半纏もかけてくれたんだね?」


お礼と同時に頭を撫でると、目を細め屈託なく笑う。澪は四月から中学生……時が経つのは早いものだ。


パチパチと薪ストーブからは薪の爆ぜる音。窓ガラスは結露で外の様子は見えないが、今夜も雪だろう。

昼間に娘婿が雪おろしをしてくれたが、明日もまた雪おろしをしないといけないな………


「お母さんが、もうすぐ夕食出来るから来てって」


年末年始で家族が集まる機会。食事など出前で済ませても良いとは思うが、帰省して早々台所へ立つとは只々頭が下がる。一方で同じこたつに頭だけ出して寝ているもう一人の娘………


「理乃おば……『お姉ちゃん』も起きろー!」


こたつの布団を捲り上げて冷たい空気を入れる澪……


「!!!!寒っ!!!」


一気に目が覚めた理乃は首をすくめる亀の如く

頭ごとこたつへ潜り込もうとして澪に阻止される……



「………ああ。思い出した。」

何気ない光景だったが、自然と涙が流れ出て頬を伝う。


これは家族団欒で過ごした………最後の年末年始。


この次の年は理乃は研究に明け暮れて帰省出来ず。

そしてその次の年は………


………これは夢なのだ。そう思うのに時間はさほど掛からなかった。


*********


小人族ホビットの集落で目覚めた朝。昨夜まで悩まされ続いていた現実世界で罹患したコロナによる咳は嘘のように無くなり、熱による倦怠感や眩暈も消えていた。


「完治……した?」


現実世界では血中酸素濃度がどうのとかで呼吸を補助する機械を付けられていたが、急に治るものなのだろうか?

それにこの異世界と現実世界を行き来するようになってから見なくなった『夢』を見る事になるとは……


そして自分の手のひらを………透けて床板が見えた時……現実世界での自分はもう居ないのだと理解した。


「………確か竜司君達が遭遇した『丸山』さんだったか……」


サーバーに集約されている各個人の『胡蝶の夢』。運営側にいる自分は数人の『記録』を読んでいた。

その中で……原理はわからないが、現実世界で亡くなっても49日間はこの異世界で留まれる。良いか悪いかは……別にして、最後のお別れを伝えられるのは不幸中の幸いか。


「せめて……澪の回復を見守りたかったが……」


暴漢に襲われ、心を閉ざした孫娘。救う為に未完成だったこの異世界へと連れ出したのだが、殻に閉じこもってこの世界には触れていない。


呪霊術によって澪の身体を動かしてはいるけど……

毎日……深層心理へ呼びかけてはいるけど……


「澪……」


そのタイムリミットはもうすぐなのだ。


現実世界では少しずつだが笑顔を見せるようになってきた。

毎日の料理は気分を紛らわすのに良いらしい。

そして最近は気になる男の子がいるようで……


「もう……続きを聞く事は叶わぬのか。」


小人族に合わせて造られている低い天井を見上げ……

決意を固めて部屋を出る。



竜司君達は回復した私の姿を歓喜で迎え、そして透過する事実に言葉を無くしていた。


「そう気に病むな。年齢的に順番が来ただけだ。」


気丈な振る舞いを見せても空気が重い。

………まぁ。無理もないか。


下山中も皆押し黙って……


「ええい!!本人よりも周りが落ち込んでどうする!」


舞なんかは泣きそうでグジャグジャした表情を向けてくるが、お前にそんな顔は似合わない。


「私が消え去るまで49日もあるのだろう?王国祭も明後日から始まるし、楽しませてから送り出してくれ。」


「「「「……………」」」」


「そして、王国祭が終わった後……私の……最後の依頼をお願いしたい。」


………そう。この世界は全て孫娘の為。



今回は特に短くてすみません。

最近取り掛かれる時間が思うように取れないので

隔週となってます。

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