009 地雷は踏み抜きで
翌朝……というより、現実世界と異世界が交互に来るので日時の感覚がやばい。
スマホでカレンダーを確認しようとしたが、枕元に無い。
台所に忘れたかなー?
とりあえず朝食作ろうとベットを降りて隣の部屋へ行くと、母ちゃんが腕を組み……仁王立ちして待ち構えていた。
150センチと小柄な母ちゃんだけど、圧がある。
「竜司クン。そこに正座。」
いつものホワホワした感じではないので、激オコ状態なのは分かるが……何でそんなに怒っているのだろう。
理由はわからないけど、素直に正座する。
畳の上のローテーブルには俺のスマホが。しかも起動してある。あれ?ロックしてあったはずだけど……
「竜司クンのスマホは、私の指紋認証も登録済みなのー。」
セキュリティはザルでした。……ってか俺のプライバシーは……?
昨夜の異世界を思い出す。髪とシワについての失言はその場で制裁受けたし……
そうそう地雷を踏むなんて……
「もうちょっと胸が……って何かなー?」
「ブフォ!!」
踏んでました。しかも、思いっきり……踏み抜いてました。
そして思い出す。この自動書記……行動や思考も記載してある。
変な汗が……額や背中からじんわり出て来る。
文字通りのヘビに睨まれたカエル。
思考なんだからセーフ?いや……やめておこう。
変に言い訳しても……藪蛇なのでひたすら謝る。
『異世界で好きなもの1つ買ってあげる』という約束で何とか解放されたが、この発言をひどく後悔する事になろうとは……この時の俺には夢にも思わない。
今日は入学式前日。母ちゃんは今日と明日は有給休暇で、明日に備えて午後から美容室だそうだ。
俺はどうしよう。朝食の後片付けをした後、異世界の事を思い出し、パンの作り方動画や発酵食品の動画を検索。
パンは重曹やヨーグルトを使えばイースト菌の代用できそうなので安心したのだが、醤油や味噌は麹を作るための菌が難しい。
逆に異世界で菌を発見出来れば、醤油や味噌……お酒なんかも出来るかな?
まぁ、母ちゃんの事だから……異世界でも『お酒は20歳から』とか言い出しそうだけど。
英雄や勇者も憧れるけど、住人の1人としてのんびり満喫するのもいいな……痛いのイヤだし。
『ピンポーン』
そんな事考えてたら来客が。
『ピンポンピンポンピンポンピンポンピンポン』
この鳴らし方は1人しかいない。
「やかましいわ!!」
玄関ドアを開け開口一番怒鳴りつける。
「きちゃった……」
保育園からの腐れ縁である、このツンツン頭は
上野 樹 (うえの いつき)だ。小、中ときて高校も一緒。
俺より10センチ高い170超えた身長と矯正なルックス。
う……羨ましくなんてないんだからな。
「んー。で何しにきた?」
「そんなの決まっているだろう。解禁されたんだろ?『一狩り』」
そういって携帯ゲーム機を取り出す。
「あらー。樹クンじゃないのー。いらっしゃいー。」
寝室から顔を出す母ちゃん。美容室行くのに化粧している……
「お邪魔しますー。解禁ついでに一緒に狩り行こうかと思いまして。」
「確か竜司クンはー、あと3〜4クエで上級いけるよー。」
「おおー!じゃあ今日はそれと上級素材かな。」
俺をどこに連れ回そうというのかね。
「先に始めててー。上級素材は私も尻尾とか欲しいからー。」
俺の都合は?……何の予定もないけどね。
それからしばらく『一狩り』タイム。
母ちゃんが美容室へ行った後も上級素材目当ての周回。同じモンスターばっかりよく飽きないよなー。
俺?すぐやられて猫車でスタート地点へ死に戻り、戦場着いたら終わってる。
戦闘って何?
ってかはじめて4日で上級デビューって大丈夫なのか?
……プレイヤースキル的に。
ソロだとクリア出来なさそう。
とりあえず、ひと段落したので緑茶とお茶受けのカステラを出す。
「あれ?スマホもデビュー?」
「あ……電話するの忘れてた。」
電話番号登録しだけど、連絡してなかったわ。
電話をかけようとしたけど
「あー、LINEとか登録したいからQRコード出してー。」
どうやって出すのかわからん。
悪戦苦闘していたら『俺がやる』って持っていった。
『一狩り』もそうだけど、中学生から使いこなしているだけあって早い。俺なんてスマホ持って4日ですよ?
「何だ?このアプリ。」
樹が『胡蝶の夢』アプリに気付いた。
この3日間の流れを説明すると『俺もやる!』ってダウンロードしていった。
安全性とかまだわからないって説明したんだけどなー。
帰ってきた母ちゃんにも樹が『胡蝶の夢』ダウンロードした事を告げだけど、
「樹クンはどんなタイプで来るんだろー。」
うん。相談する人間違えた。
ベットに向かいながら、何か重要な事忘れているような気がしたけど思い出せない。
そのうち思い出せるかなーなんて考えながら眠りへ。