085 猫耳メイドは尻尾付きで
2022年 9月17日(土)現実世界サイド〜(文化祭初日)
……………やっちまった。
下半身に違和感を感じて目覚めた朝。甚兵衛のズボンが濡れていて、シーツには………マジかよ。確かに異世界の中で熊の殺気に当てられて失禁したけど、リンクしなくもいいじゃない?この年でオネショとか洒落にならないよ……
物音を立てないようゆっくりとシーツを取り外し(マットレスもダメだったか……)二段ベットを降りていく。
下段の母ちゃんは……よし。寝てる。
風呂場で汚れた物を洗って……朝食を作っていると母ちゃんが起きてきた。
「おはよー。やっぱり毎日オムツ履いておく?」
…………………グハッ。バレてたのか。
だし巻き卵を作る手が一瞬止まる……
「介護用パンツって案外単価高いから、あまり多用したくないけどね」
「マットレスとか買い直す方が高いよー」
確かに。異世界でサキュバスとゴニョゴニョした時のマットレスは流石に捨てました。アレは無理だった。
………とりあえず今回は洗ったのでこのままで。あそこまで酷くなかったし、消臭スプレー様々です。
「そういえば今日のお昼どうする?お弁当作ろうか?」
今日と明日は文化祭なので俺の分は一応お弁当を作っているけど、母ちゃんは休日だからな。
「あ。私の分はいいよー。適当につまみながらゲームしているからー」
………朝食食べ終わるとすぐにゲーム機を起動する母ちゃん。先日買った『イカペンキ3』で通信対戦し始めた。
「よっ……ほっ……うりゃー」
…………なんかゲームの中でも巨大な熊と対戦し始めているのですが。器用に敵からの被弾を避けてボールをゲットして籠に入れていく……相変わらずゲーム上手いな。俺も同じゲームで遊んでいるけど、この熊は倒せない。
「ここはーこうやってー。うりゃーってしてー。パパっと避けると塗りやすくなるから、陣地を作ってーそれから………一気に塗りたぐる」
……………うん。ゲームのアドバイスを求めた俺が間違いでした。
「あ。そうそう。樹クンに頼まれてた猫耳ヘアバンド忘れないでねー。三毛と黒あるからー」
ちっ。忘れてなかったか。
居間に用意してあった猫耳ヘアバンドを鞄に詰めて登校する。文化祭……猫耳メイドは恥ずかしいのだけど……
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「竜司は三毛な」
「……………それはいいが、この尻尾はなんだ?」
メイド服に着替えた俺の所へ、猫の尻尾を持った樹がにこやかに詰め寄ってくる………
「何って尻尾だよ。尻尾。ハリガネを使って昨日作った。」
ファーとかの素材をハリガネで固定したのだろうか……クネクネさせると本当に尻尾っぽい。器用によく作るよ……こういうのを才能の無駄遣いって言うのだろうな……
ハリガネで大きなS字に固定されている尻尾……まさかお尻に付けるとか言わないよな?
「猫には尻尾だろ?」
なんか当たり前の様に言い出している樹は、すでに黒猫の猫耳ヘアバンドと黒い尻尾を装着している。歩く度に尻尾もフリフリしていて、樹の高身長も相まっていい感じにマッチしていた。
「きゃーかわいいー」「上野君最高ー」
周囲にも好評だが……俺も付けろと?
一年生の販売物……フルーツポンチの調理室と教室間の運搬は俺と樹の2人だけだから、猫耳メイドの格好でウロウロするので……尻尾までは流石に……
「昨日言っただろー『お祭りは楽しまないと損だ』って」
そりゃ言ってたけど……俺も付けなきゃダメ?
女子生徒や着替えが終わった男子生徒が『付けろ』コールしてくる……文字通り『四面楚歌』です。
「わかったよ……付ければ良いんだろ?付ければ……」
渋々と樹に尻尾を装着してもらう……
「神代君」
さらにクラス委員長が俺を呼び止め
「言葉遣い直してね。語尾に『にゃ』を付けるように」
「……………わかったにゃ……」
俺の中で文化祭が黒歴史確定した瞬間だった。
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「……しかし、フルーツポンチ凄く売れたなー。よっと」
「値段設定もよかったからなー。熊そっちに行ったぞー」
放課後の神代家に何故か樹が付いてきて一緒に『イカペンキ3』をプレイしている。母ちゃんは明日に備えて美容院だって……あんまり変わらないと思うから無駄……ゲフンゲフン。余計な思考はやめておこう……藪蛇になりかねない。
「それより良いのか?夕食作りとか……今は樹が担当なんだろ?」
王国祭の料理コンテストに備えて台所に立ち始めた樹。今は午後4時……夕食作るなら買い物とかそろそろ作業にかからないとまずいのでは?
「流石に文化祭期間は免除してもらってるよ。今日は親父がそうめん茹でる事になってる」
なんでもお中元でもらったそうめんが大量に余っているらしい。すでに神代家で遊ぶ事は伝えてあり、夕方までには帰る連絡済み……と。
「あ……ごめん。ミスった」
会話に気を取られて熊の取り巻きにやられてしまった……他の2人も俺が離脱した事によって取り巻きが処理出来なくなり離脱。残るは樹のみ。ネットの協力プレイは一緒になった人達の力量に左右されるよね……下手でごめんよ……
「くそっ……流石に1人じゃ無理だー!」
また最初からやり直しか………時間的に厳しいかな。俺もそろそろ夕食作らないと。
ゲームオーバーの画面をぶつぶつ呟きながら見つめていた樹……
「そうか。あの手があった!!」
何かひらめいたのだろうけど、もう時間的に難しいぞ。
「違うよ!異世界の熊だよ!あの『唐辛子爆弾』使えば熊も倒せる!」
……………えっと……それ……本気で言ってます?




