008 料理スキルは万能で
受け付けのお姉さんに緊急クエストの詳細を聞く為、掲示板から依頼書をはがす。
「おおおー!!」
なんか周囲から歓声が上がってるけど……
受け付けのお姉さん達も目をキラキラさせてこっちを見てる……。
聞けば、ギルドの料理人がギックリ腰になって教会へと運ばれていったそうで……
残った職員で夕食を作り始めたけど、料理スキルが高くなく、厨房はとんでもない事態に。
そこで緊急クエストを出した……と。
この……ギルド内に漂って来る焦げた匂いは、そういう事なんだろう。
幸いパンは朝大量に焼いてあるので、メインのおかずをお願いしたい‥…という内容だった。
まぁ、一応料理スキルは4あるけどね。
こっちの食材とか全く知らないんだよなー。
「料理スキル4!!」
受け付けのお姉さんが喜びのあまり声をあげるが、一応それ……個人情報ではないだろうか?
ひとまず厨房を見てから判断させて下さい。
パン焼き用のレンガ窯、薪の竈門がそれぞれ4基
スープ専用の固定大鍋が6基。
厨房の外周をそれらが並び、内側には作業台。
作業台の上には、焦げた何かと…焦げた何かと…焦げた何かが置いてあった。
学校給食の調理場みたいなかんじだなー。設備は雲泥の差あるけど。
そして……自分が受けなかったら、この焦げた何かが夕食に出る……のか?
これ出てきたら……どう考えてもクレーム案件だと思う。
っていうより食材が可哀想だ。
時間的に……今引き受ければ、仕入れや仕込み等……何とかなるかな
「素人に毛が生えた程度の腕で良ければ引き受けますよ。」
「助かります。良かった……これでまともな食事が……」
自分もあの焦げた何かは食べたくない。
そうと決まれば早速残った食材をチェックして、足りない物は買い出し行かないと。
野菜はある程度備蓄がある。玉ねぎとか現実世界のと変わらなかったのは正直助かる。肉はさっきうちらが納品したスピアーズボアが、内臓処理されて調理台の上に大量にあった。
もちろん焦げた何かはゴミ箱へ。もったいないけど、再利用はどう考えても無理。
食材費用として銀貨10枚受け取り市場へ……
「私も何か手伝おうかなー。」
母ちゃんが怖い事言い出したので、
スピアーズボアの報酬金から銀貨3枚を渡し
「母ちゃんは武器屋で自分の武器買ってきてよ。」
「そういえば、そうだったわー。」
ふう……危ない危ない。現実世界でも台所に近寄らせない時点で察して欲しい……。
市場で店主に聞きながら香草と卵、きのこを購入。
魚とか期待したけど売ってなかった。干物とかあれば急造だけど出汁取れるのに……
余ったお金をミリットさん(Dランク受け付けのお姉さん)に返し、早速調理開始。
朝の残りのパンを10個程もらって細かくしていく。パン粉として使いたいから。
しかしすっごく硬いパンだよこれ…スープ無いと食べれないのでは?
スープ用の鍋には石突を取ったきのこを水に浸してる。きのこは火を入れる前に取り出し、付け合わせにする予定。
3センチの厚さに切ったスピアーズボアを叩いて……
玉ねぎのスライスと一緒に寝かせる。
15分位寝かせた後、小麦粉、溶き卵にくぐらせて、急造パン粉をまとわせ……『とんかつ』ならぬ『ボアかつ』を作っていく。油で揚げたかったけど…大量に作るのを考え、『焼きカツ』っぽく。
「結局……俺も(焼く)調理かー」
まぁ、急造だし仕方ない。
ソースは、塩と香草の細かくしたものを混ぜ合わせ、
仕上げに柑橘系の絞り汁。
ちなみに料理スキルの恩恵は
LV 1 『目測計量』『時間管理』
LV 2 『保温管理』『均等攪拌』
LV 3 『加圧調理』『温度観測』
LV 4 『発酵促進』『食毒判定』
確かにLV3以上無いと、サポートはできるけど……調理自体は厳しそう。
このスキル……現実にも欲しい……
低温調理にも使えるし、食中毒対策の殺菌とか便利すぎ。
しかもLV4の『発酵促進』
この世界にも醤油、味噌を作れるかも。
チーズやバター、ヨーグルト等々……万能すぎる。
あ……ひょっとしてパンも行けるか?
イースト菌無くても作れるやり方……現実世界で調べてみよう。
ひたすら『ボアかつ』を焼き続ける作業。何人前作ったのだろうか……
ギルド内から
「うまーい!!」
とか
「これ……定番でいいんじゃね?」
など、食べた人達から好評で気分は良いけど。
注文が無くなり、落ち着いた時は疲れ果てました。
ずっと油物作ってたので、食欲もわかず……
ギルド長さんから、夕食好評だったと褒められ
追加報酬3枚加えた銀貨8枚をもらい
(所持金 銀貨10枚銅貨10枚)
自室へ入るとベットへダイブ。すぐに記憶がなくなっていった。