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異世界は剣と料理と現代知識で  作者: わかね
第二章 文化祭と王国祭編
75/104

074 地獄の特訓はダンジョンで

2022年 9月 1日(木)〜2日(金)異世界サイド〜


……………残暑が酷い地上とは違って鍾乳洞の洞窟内はひんやりとして心地よい。引率……というより監視役の桔梗さんは、壁に取り付けてある松明の薄明かりを頼りに奥へ奥へと進んでいく。鍾乳洞は高さ7〜8メートル位はあり横幅も馬車がすれ違えるほど……まぁ地面がでこぼこしているから馬車で入ろうとは思わないけど。


何故に俺は桔梗さんと鍾乳洞……ダンジョンに入る羽目になったのだろうか。



***********************


ダンジョンというのは財産や墓所を守る為、人工的に作られたものだったり、天然の洞窟が瘴気を溜めてダンジョン化するのがこの世界での一般的で、今桔梗さんと入っているこのダンジョンは後者に当たる。とはいえ全てが天然……とはいかずに所々人の手が入って攻略の手助けになっているとか。



先月の終わりに舞姉ちゃんからの紹介状を携え『カヤモリ』の桔梗さん宅を訪ねたのだけど、紹介状を読むなり盛大なため息をつき、首を大きく振った桔梗さん。


「過保護もここまで来ると異常だな。竜司君の成長にならん。」


一体……紹介状に何て書いてあったんだ?


「よかろう。武闘大会への出場を引き受けてくれた礼だ。徹底的に鍛えてあげよう。」


………徹底的………お手柔らかにお願いしますよ……


武器と防具は『必要ない』との事だったので桔梗さんへ預けさらに『アイテムボックスを空にせよ』って……何を始める気なんだろう。

『まずは軽くランニングからだ』と走り始め………4時間後にたどり着いた『アイカサ』の町。どこが『軽く』なんだと問い詰めたい……大体、外気温は30℃を下回っているとはいえ、まだまだ暑い日が続いているわけですよ。そんな中……カヤモリ〜アイカサ間40キロのジョギングなんて正気の沙汰とは思えない。人目も気にせずアイカサの町の城壁を背に横たわり、グテッとする俺。周囲の人が俺を見てギョッとしていた所から、俺の表情は凄まじい物だったに違いない。


「10分休憩の後、ダンジョンの入場登録をしてすぐに入るぞ。」


「………ぜーはー……ぜーはー……」


一方あまり息を乱していない桔梗さんは澄ました顔のまま死刑宣告。……鬼だ……鬼がいる。


マラソンやってそのままダンジョン凸とか特訓初日から厳しくないですか?しかも休憩10分って……


「むしろダンジョンの中の方が過ごしやすいぞ」


**********************



確かに桔梗さんの言葉通りでした。滂沱たる汗は一気におさまり、肌寒さすら覚える。

錬金術で作り出した水をがぶ飲みしながら歩く鍾乳洞………ダンジョンってモンスターがすぐ襲ってくるイメージがあったけど、ちょっと拍子抜けだな。


「安心したまえ。私がいるから魔物達が近寄って来ないだけだ。」


へ?


「とりあえず今日は肩慣らしでエリア2の手前までにしよう。道順は覚えておけ。帰りは1人だ。」


え?ええっ!?

武器は?防具は?保存食は?何の準備もしてきてませんし、『カヤモリ』を出発する前に没収されましたけど?


「武器は……そうだな。これをやろう。」


周囲を見回して視界に入った木の枝を拾ってきた桔梗さん。


「戦って勝てるのか、勝てないのか。自分と相手の力量を知る事から始めよう。」


下手に良い武器を与えると自分の力を過大評価してしまうとの事。それにしても……それって『ただの棒』ですよ?


「なあに訓練次第で、どうにでもなる。」


そういって取り出したのは………一枚の小さな………紙?

それを器用にネジネジと……『こより』を作る桔梗さん。


「論より証拠……手本を見せよう。」


はああああああ!!

気合いを入れたかと思った次の瞬間『こより』を投げ放ち、正面の……俺の太もも位はある鍾乳石に突き刺さった。


「す……すごい」


ネジネジしたとはいえ、『紙』ですよ?それが鍾乳石に突き刺さるとは思えな………


突き刺さった鍾乳石がゆっくり上下に別れてスライドし、上の部分が崩れ落ちた。


「ざっとまぁ、こんなものかな」


「あはははは……」


紙でこんなに綺麗に切断できるなんて……『勇者』って伊達じゃないんだ……


「ここまでやれとは言わないけど」


『やれ』と言われても出来ませんって。


「『弘法筆を選ばず』ともあるように『武器』はあくまでも『道具』。まずは竜司君自身が強くなるように」


……そう言われると何も言い返せません。渋々桔梗さんから『枝』受け取り……俺の心許ない『武器』となった。



その後しばらく下り坂をてくてく……無言で歩く2人。

広いだけで迷子にはなりにくい一本道はありがたい。


……

………

…………


同じような鍾乳石が入り組み始めて若干……天然の迷路の様相を示した鍾乳洞。Y字路に差し掛かった所で壁に明らかに人工的な扉が設置されてあり、

『冒険者ギルド エリア1出張所』

『これより先エリア2 ランクCC以上推奨』


の2種類の看板が立てかけてある。

こんな所に出張所とか……サキュバスさん達も大変なんだね……しかも丁寧に『ランクCC以上推奨』とかサポート

体制バッチリじゃないか。


「休憩所は寄らないよ」


………素通りですか?


「地上より5倍高い金額を払いたいなら無理には止めない」


高っ!!5倍って……ボッタクリですよ。

………あれか。行楽地の缶ジュースが200円とかそういう類いか。それにしたって5倍………


「それより早く移動しないと今日中に『カヤモリ』に戻れなくなるぞ」


…………はい?俺の聞き間違いかなー。聞き間違いだと良いな………なんか『カヤモリ』に戻る?今日中?


地獄の特訓……と命名しても間違いではないと思う。

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