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異世界は剣と料理と現代知識で  作者: わかね
第二章 文化祭と王国祭編
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073 適量は危険で

2022年 8月26日(金)現実世界サイド〜


夏休みが終わり、今日から二学期が始まる。始業式が終わった後、文化祭の衣装合わせがあるので男子生徒達は全員憂鬱だ。薄ら笑みを浮かべるダンボール箱を抱えて登校した俺ももちろん気が重い。しかし……便利な世の中だよな。インターネットで注文すれば山奥の一軒家でも届けてくれる。とはいえ……母ちゃんが選んでくれたメイド衣装だけに不安しかないけど。


「……………」


案の定というか……ダンボールを開封した俺は絶句する。メジャーを使って採寸していたからサイズは大丈夫だろうけど、ベースが黒のメイド服に……白のフリルがすごい。メイド服……というよりゴスロリ?まぁ……周囲の男子も似たような衣装だから、同じサイトで注文したのだろうな。

そんな中、樹だけは白いフリルが最小限のシックなメイド服だ。


「市販のは派手すぎるから、自作した。」


メイド服を自作って凄くない?俺も頼めばよかったかな……


「金取るぞ。法外に」


法外はやめて。友達価格でお願いしますよ。まぁ、すでに手元にあるからいらないけど。


「あれ?」


着替えている最中……メイド服だけだと思ったけど、他にも何かある?取り出してみると、それはウィッグ付きカチューシャで……なぜか猫耳付き。どこでこんな物見つけたんだ?


「母ちゃんは俺に何をさせたいんだよ……」

「あはは!!!竜司!!それいいね!!」


カチューシャを取り出して固まっている俺とそれを見て笑い転げる樹。付けたくないけど『付けなかったら舞さんに告げ口する』って樹に言われたら付けない訳にはいかない。


「神代くん。イイねそれ。」「語尾に『ニャ』とか付けてみて」

女子や他の男子にも好評だけど、めちゃくちゃ恥ずい。文化祭当日もこのカチューシャつけなきゃダメ?販売物を調理室に取りに行くの俺なんだけど……


以前『原価率』の関係で販売物が保留になった文化祭の販売物も『フルーツポンチ』で決定した。みかんや白桃、黄桃、チェリーやパイナップルの缶詰を使って混ぜ合わせて販売。オプションで絞るだけクリームをトッピング。計算したら原価率は40%位なので丁度良い。

缶詰を開けて白桃など大きい物は切って混ぜるだけなのだけど、『調理』に該当するので調理室で作業して教室に運ばなければならない。料理部に俺と吉沢さんが所属しているので使用には問題なく、衛生管理者なども料理部顧問の先生がいるから大丈夫。

とはいえ調理室から教室に運ぶのは調理室に出入り出来る俺か吉沢さんのみ。吉沢さんは盛り付けを担当するので運搬役は……


「宣伝にもなるから丁度いいね」


………このクラスに味方はいないようだ。


「ほら男子!ガニ股で歩かない!」


メイド衣装を着た男子生徒へ注意する委員長。なんか笑いを堪えてませんか?野球部員のイガグリ頭メイドやメタボな男子生徒のメイド。各自で化粧を施して動き回る姿は…………あれ?文化祭の出し物って『お化け屋敷』だったっけ?見れば他の女子も『プププ』とか『クスクス』とか忍び笑いを漏らしてる。大晦日の『笑ったらケツバット大会』だったら『全員アウト!』って言われますよ。


女子達もメイド服を着て化粧をしているけど、全く違和感がないし手慣れている感じが。ナチュラルメイクってやつ?いいなー俺も出来れば……。


「教えようか?」


すでに化粧を終えて……すっかり『女性』になった樹から助け舟が。


「大体……いきなりチーク・リップとかないわー」


周囲の男子を思いっきりジト目とため息つく樹だけど、普通の男子生徒は化粧のやり方なんて知りませんって。


「………まずは……ベースメイクからな。」


本来ならスキンケアからだそうだけど、時間が無いからベースメイクとアイメイク、チーク・リップの手順をレクチャーする樹。………化粧って横文字多すぎませんか?待って……メモするから………えーっと『コンシーラーが……』。周囲を見ると女子の何人かも樹の化粧講義に耳を傾けている。


「立体感を出す為のシェーディングなんかもあるけど、まずはスキンケアを重点にやっていけば文化祭には間に合うよ。」


肌荒れやニキビ、そばかすなど人それぞれ肌に悩みはあるけど……それにしても樹の教え方は分かりやすくて助かる。そして、こういった知識もクイズゲームの為の知識なのだろうか?


「主に姉貴の影響。実験台にされてた……新しい化粧品の」


樹は樹で苦労しているんだね。



今日は金曜日だけど部活動は中止なので、それぞれ帰路に着く。………帰りがけ駅前のスーパーへ寄って今日の献立の買い物……なんだけど……


「母ちゃんはまず……『野菜炒め』かなー」


今日から王国祭へ向けて母ちゃんが夕食を作る事になった神代家。上野家も今日から樹が担当するそうで……まぁ器用な樹なら心配無用か。

『野菜炒め』は小学校の家庭科で習う初期の『調理』だから大丈夫だろ。小学校時代習ったのは『お茶』『豚汁』『カレー』そして『野菜炒め』。豚汁は味噌が無いから無理だし、カレーは………極辛仕様は危険すぎる。なので消去法で『野菜炒め』なんだけど、現実世界こっちなら『香味ペースト』という便利な品があるので味付けは楽だが……異世界じゃオーソドックスに塩コショウか。



「ただいまなのー」


仕事を終えた母ちゃんが『ふんす!』と気合い入れて帰って来た。やる気にみなぎっているな。


「とりあえず今日は『野菜炒め』で」

「先生!お願いしますー」


念入りに手を洗っていざクッキング開始………って定規はいらないから。カットは『だいたい』でいいから。

簡単にできそうなレシピサイトをタブレット端末で見ながら材料を切っていく母ちゃん…………ってストップ!!


「見ていて怖いから『猫の手』でお願い。」


指の先端を隠すようにして包丁をあてがう『猫の手』で指先をガードするって……そこから教えるのかよ……


材料を切り終えてまずは肉のみ焼き始め……そうそうフライパンに油を垂らして……わざわざ『大さじ』で測るけど、まぁその位はしょうがないか。


見てるだけだと手持ち無沙汰なので、近所のおじさんからもらった栗を包丁使ってむいていく。『近所』といっても徒歩十数分かかるが。

渋皮とか剥きずらいけど、栗ごはんの為だ。母ちゃんの調理を横目に黙々と栗に取り掛かる。


豚コマを炒めていた母ちゃんが手を止め、

「竜司クン。塩コショウ『適量』ってどのくらいなの?」

「うーん。『ひとつまみ』位かな」

塩分とか好みが分かれるからレシピサイトもそういった曖昧な表現するよね………って


「母ちゃんストップ!!ストップ!!」


ザー


……間に合わなかった……


「それじゃ『ひとつまみ』じゃなくて『ひとつかみ』だよ」


フライパンの豚コマへ投入された塩……お相撲さんが土俵へ巻くレベルです。


慌てて豚コマをザルへ取り出し、水洗いする……間に合っていればいいけど……うーむ。目を離したらこうなるとか……これでコンテストとか大丈夫なのか?


その後何とか出来上がった野菜炒め……多少の塩辛さが残ったけど、何とか食べられるレベルだったのは救いだ。材料とかもったいないからね。

しかし、リカバリーなかったら……と思うとゾッとする。高血圧一直線だからな……あの塩の量は。


異世界でも調理担当するとか言い出しているけど……あっちではイディさんの言う事をよく聞いてね。

俺?俺は『武闘大会』出場だから、訓練がてら討伐クエストを受注するかな……とか思っていたのだけど、


「それならー、師匠に稽古付けてもらえばー?」


あーその手があったか。

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