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異世界は剣と料理と現代知識で  作者: わかね
第一章  昇級クエスト道中編
71/104

070 『オバサン』は禁句で

2022年 6月20日(月)現実世界サイド〜


「しかし……とんでもない依頼するもんだよ」


放課後の調理室。今日は部活動がないのでこの場所には俺と楓さん……そして部活動を終えたばかりの樹の3人。料理部の活動日以外はすっかり異世界談議の会場と化してます。


「要するに、私たちが『ナマハゲ』になってあの幼い冒険者達を脅かせばいいわけね。」


確かに。『ナマハゲ』なんて包丁持って歩き回る……ガチ泣きされるレベルだから、あまり恐怖心を植え付けるのは良くないと思うが……変装して脅かすだけで金貨3枚とか簡単で美味しいお仕事なんだけど


「幼い子供達を騙すなんて例え演技でもダメです。」


帰宅後のオンライン会議であっさりと母ちゃんに否定されました。母ちゃんの性格を忘れてたよ。


金貨3枚……確かに美味しいけど、矜持を曲げてまで得る金額じゃないよね。『武士は食わねど高楊枝』か。


樹も楓さんも、どうしても欲しい物があるわけでないから……あっさりと引き下がってくれた。


「欲しいものが出来たら、竜司クンが何とかしてくれるよー。」


それは勘弁してください。




2022年 6月20日(月)〜21日(火)異世界サイド〜


見張りを交代した深夜帯。同時に起きてきたリリーに依頼を断る話を切り出した。


「そうか……それは残念なのじゃ。」


あれ?リリーもあっさり引き下がるなんて……ちょっと拍子抜けした


「まぁ、ダメなら他の冒険者達を当たれば良いだけじゃ。」

そりゃそうか。金貨3枚なんて破格の待遇だし、周囲には何組かの冒険者PTがあるから誰かは引き受けてくれるだろ。仕事中とかじゃなければ……


そう思っていたのだけど


……

………

……………

…………………


どうしてこうなった?


朝食を食べ終え、王都へ向けて準備していた俺たちの周囲を小さな盗賊が4人で取り囲んでいた。顔が識別出来ない様に白い布で覆っているけど、背格好で昨日の昇級クエスト中の幼い冒険者って誰でもわかるよ?


周囲の冒険者達は「頑張れよー」だったり「小さい方が襲うのかー」とか俺達へ声援など送りながら『カヤモリ』や『王都』に向けて歩き出していく。


そういえば俺達も昇級クエスト中だったね。リリー達ギルド職員と一緒に行動しているから、側から見れば一緒か。

ひょっとして、俺達が引き受けていたら逆の立場だったって事?どこが『バレない様に変装』なんだよ。


「金目のものを素直に出さないと痛い目にあうぞー」


うん。迫力とか凄みとか色々足りない。

声変わりしてないから無理もないけど……雰囲気はあれだ。ハロウィンの『トリックorトリート』だ。


とりあえずイディさんとミディちゃんには野営の撤収作業を継続してもらい、俺達4人で相対する。


「どうしよう……あのオバサン強そう。すごい剣持ってるし……」

「あのオバサンにはリピピの魔法で何とかしてもらおう」

「えーオバサンに効くかな……」

「僕もオバサンに魔法かけた方がいい?」


コソコソ内緒話している様だけど、声……ダダ漏れです。

さっきから子供達が『オバサン』という度に舞姉ちゃんの肩がビクンと跳ねて……なんか面白い。


「竜司クン……後でお話しがあります。」


「え?………俺?」


それって単なる八つ当たりでは?……舞姉ちゃんが怖いので言い返せないけど。

笑みを浮かべているけど目が笑ってないです。10歳位の子供達にとって大人は『オジサン』『オバサン』ですよ?それで怒るなんて大人気ないって。


「魔術LV5『光弾連射ライトニング・ラピッド』!」

冒険者の1人リピピと呼ばれた少年?少女?がいきなり魔術をブッパして来た。

(レベル5とか凄いな……人は見かけによらないとは良く言ったものだ)

光の矢が五本生み出されて……三本が舞姉ちゃんへ。残り二本が俺へと目掛けて襲いかかって来る。速度は先日アズさんがハイエナへと撃った光の矢程早くはないけど、魔法攻撃を身に受けた事が無いのでどのくらいの威力かわからない。


回避しようと思って身を翻そうとしたら


「ダメだ竜司。魔法をそのまま受けるんだ!」


樹が突然言い出して……避ける動作が取れずに光の矢が二本そのまま被弾する。右肩に多少の痛みが走るが、致命傷には至らない。

サキュバスとのエッチな事でステータス上では強くなっていたけど、攻撃を喰らって始めて強くなっていた事を実感する。


もちろん舞姉ちゃんも光の矢を避けようとすれば避けれたけど、左手の掌で全てを受け切り……


「あんまり……おいたがすぎると……お仕置きしますよ?」


……あれだ。『オバサン』連呼してたから抑えが効かなくなっている。


俺達もそうだけど、子供達もビクンと硬直してコクコクと何度も頷くしか出来なかった。

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