065 装備品には手を出さないで
お久しぶりです。
事務作業がひと段落しましたので再開いたします。
リリーに3人の勇者の話を詳しく聞きたかったが、
「それなら本人に聞けば良いのじゃ」
と返された。本人いるんかい……何でも次の町『カヤモリ』は3人の勇者……その内の母娘2人で作り上げた町なのだそうだ。
「キキョウはのう……風変わりな屋敷を作っていてな……」
「!!!」
勇者の名前を聞いた舞姉ちゃんが両目を『カッ』と見開いて固まっている。
「カヤモリ……キキョウ?」
まぁ、丸山さんと同様『来訪者』だろう。この世界は転生した異世界……というよりMMORPGって理解した方が良いかも知れない。さっきリリーが勇者の事をGMって言っていたし。
それならこの世界の言語が日本語だというのも納得できるし、通貨も分かりやすい。
チュートリアルが無いのは残念だけど……
「カヤモリ……キキョウ……」
それよりもさっきからうわごとのようにブツブツ呟いている舞姉ちゃんは異常だよ。滅多な事では平静さを失わない……黒狼や銀狼でも「なのー」とか言っていた人がここまで動揺するって何事なんだろ。
「舞姉ちゃんの知り合い?」
「本人かどうかはわからないけど……」
舞姉ちゃんが知る『茅森 桔梗』さんは舞姉ちゃんの剣道の師匠で……70歳を超えた現在でも女性初の『八段』を目指しているとか……すごいパワフルな方だね……
舞姉ちゃんの言葉に力がない。同姓同名って可能性も…
「勇者キキョウはものすごい剣術使いじゃったぞ」
うん。同一人物っぽいね。
「次の町は素通りしたいのー」
かつての恩師を避けたいって……よっぽどの事情があったのかな?
「あー。そのキキョウからお主らが『カヤモリ』に着いたら案内するよう依頼されているぞ。」
「………オワタ」
舞姉ちゃんはそう言って……すごくうなだれているけど、路銀が全くないから俺としては正直ありがたい。伝も何もなくて宿代とかどうしようか考えていた所だったからね。
知り合いだったら庭のすみっこでも良いから貸してくれないかな。
2022年 6月17日(金)〜18日(土)異世界サイド〜
のんびりとした道中。魔物との遭遇は全く無かった=収入源がなかった俺達は無事に『カヤモリ』に到着……したのは良いのだが………
冒険者ギルドの佇まいが……今までの冒険者ギルドとは全く趣が異なる。ネオン管のようなものが建物の内外に張り巡らせてあり、ギルド職員の女性はバニーガール衣装。男性はタキシードで……ここは本当に冒険者ギルドなのか?
「昇級クエストは一時中断するのじゃ」
恒例の中断宣言も今回で最後か。長いようで短かった……気がするのは気のせいだろう。色々ありすぎたから。
それよりも日中だというのに人が多い。皆さんクエストとかはしないの?討伐クエストは当然残って無いと思ったのに残っているのがびっくりです。
そして一番の喧騒は2階から聞こえてくる。
「よっしゃー!5倍ゲット!」とか
「また負けたー!討伐クエスト行くしかないのかよ!」
等……声から察するに賭け事のようだ。さっきから楓さんがせわしない。勇者に会いに行くからダメですよ。それにお金持ってないでしょ。
「……」「……」「……」
あれ?何で3人とも黙ってるの?
「ほら……露店売りしていた時のバイト代を……」
ほう。へそくりを作っていたわけだ。でもそのおかげで宿代は何とかなりそう。
「この貸しは高いぞ」「二刀流にしたかったのにー」「増やそうと思ったのにー」
樹と舞姉ちゃんは本当ありがとう。楓さんは増やせないでしょ。3人から銀貨2枚ずつ借りて宿代を手配する。
……ってなんで同じPTから借金しなくちゃいけないの?共有財産じゃないの?
「身内だからってタダ働きはブラック企業なのー」
確かにそうだけど、武器を手に入れる為に身内をタダ働きへと叩き落とした本人から言われたくない。
賭け事が気になって仕方がない楓さんは勇者との面談は断って2階へ登って行った。
「姉貴はいっつもそうなんだよ……『ドラゴンファンタジー』でもカジノで姉貴の冒険が終わる」
確かにあのシリーズはカジノの町があるね。スロットマシーンとかポーカーとか。
「でも冒険が終わるって大袈裟じゃない?」
「いや。文字通りだ。負けて負けて……現金尽きたら装備を売って……」
装備ってそれに手をつけちゃダメなやつじゃないか?
「最後には『やくそう』すら売って軍資金にする奴だぞ」
……って今……2階に行ったけど?大丈夫なの?追わなくて
「この世界での姉貴は『後方支援』だろ?装備売った所でどうにでもなる」
なるほど。だから止めなかったのか。
楓さん……料理部部長でしっかりしているイメージがあるけど、賭け事しなければなー良い人なんだけどなー。
イディさんとミディちゃんに楓さんに付いているように伝えてリリーと共に勇者の家へと向かった。




