062 権力者はゴリ押しで
2022年 6月13日(月)〜14日(火)異世界サイド〜
いつもの様に見張りを交代して焚き火の番と見張りを担当する。ラーガミーガを出発して……晴れたら移動し雨なら停滞を繰り返しているので、未だに『アイカサ』の町まで到着出来ないでいる。
確かに『1日おきに雨降らないかなー』なんて願ったりしたけど、こうも雨が多いと気が滅入ってしょうがない。
『アイカサ』までは残り12キロまで来たから今日晴れてくれれば到着出来そうなんだけどね。
月や星あかりが全く無い闇夜。上空は雲で覆われているのだろう。雲の色までは見えないけど、朝になれば出発できるかわかる。
現実世界だったら週間天気とかで予定は立てやすいのだろうけど異世界じゃなあ………
「竜司クン。弛緩し過ぎー」
いつものように焚き火のそばで正座をしている舞姉ちゃんから注意を受ける。確かに夜襲はイディさんの銀狼以来無い。そうそうあっても困るけど、全く無いと……こう眠気も加わってつい弛緩してしまうのです。
眠気覚ましの意味合いで始めた『あんこ』作りだけど、リリーがアイテムボックスに保管している小豆はほとんど『あんこ』に生まれ変わってます。
『これだけあんこを作っているから』と交渉した結果、リリーが肩代わりしてくれた借金も残り56日分まで減らすことができました。
「そういえばリリーに聞きたい事があるんだけど」
リリーに聞いたのは『アイカサ』の町の詳細。
『アイカサ』は3つの顔を持つ。
1つは港町。大型の船舶が出入りする港があり、貿易の玄関口としての賑わいはかなりの物らしい。
2つ目は研究機関。魔術と錬金術の学校があり、10歳以上で資格があるなら誰でも入学出来る。
資格は冒険者ランクがC以上もしくは術レベルが3以上。
どっちも基準に満たない俺はダメですが……
「それに入学金が金貨5枚じゃ」
うん。色々無理。
路銀は銀貨25枚しかない。少し増えて来たかなーって思ったら散財するとか……本当この貧乏生活とはおさらばしたいよ。
焚き火の2メートル上に雨除けとして再利用中の丸と四角にくりぬかれている黄色い元テント布を見上げて深くため息をついた。
ポツポツ………ザー……ザー……
その布に今日も雨粒が当たり始め、今日もこの場所で滞在が確定。夜明けはまだ先だけど、砂浜がぐちゃぐちゃになっているから無理。
「3つ目は?」
そういえば3つ目の顔はなんだろ。
「3つ目は古代遺跡……ダンジョンじゃ」
おー!ダンジョンですか。元々ダンジョンがあったから人が集まって町が出来たそうで、鶏が先か卵が先か……
しかも『アイカサ』の城壁は15メートルの3重構造でダンジョンはその中心部。ダンジョンから溢れてくる魔物を外に出さない造りだとか。研究機関である学校も中心部にあってダンジョンの監視や討伐も授業に組み込まれているって……危険な学校だな。
普段の町は中心部に行くにつれて高級な佇まいなのだが、アイカサだけは逆でスラム街なんかはダンジョン入り口近くに多い。人の壁ですか……
そんな話を聞くとアイカサで路銀稼ぎをしようかと思ったけどスルーして先に進んだ方が良いかも。
ちなみにダンジョンも冒険者ランクC以上じゃないと入れない。
「Cランクになれば嫌でも入る事になるから大丈夫じゃ」
……嫌でもって怖いんですけど。
まずはこのクエスト終わらせて、Cランクにならないとなー
2022年 6月14日(火)現実世界サイド〜
「え?コラボ?」
放課後の料理部。部長から文化祭の出店について追加説明があった。隣には……生徒会長の樋口さん。
「生徒会長に泣きつか……頼まれて料理部は化学部とコラボして文化祭に出店する事になりました。」
今『泣きつかれて』って言わなかったか?
化学部は現在、生徒会長含めて3人しかいなく、存亡の危機なので救って欲しい……楓さんが生徒会長の役員だからって思いっきり職権濫用じゃないですか。
コラボってどうするんだろ?って思ったが、何の事はない。和風の甘味処だけど、飲み物の提供にビーカーやメスシリンダーを使う……って大丈夫なの?衛生面は心配するな?
……そういう事を言いたい訳じゃないのだけど……
……
…………
……………
権力者のゴリ押しってこうやってやるんだ。
試作品の水ようかんを美味しそうに頬張る生徒会長。
「みんなごめんね。断りきれなかった……」
少ししょんぼりする楓さんだけど、生徒会も色々大変なんだな……




