006 合流はベットの上で
「う……うん?」
6畳の宿屋の一室で目が覚める。
さて……今日はクエストでお金を稼がないと、野宿生活が待っている………討伐クエストでも受けて………
って逃避するのをやめて現実と向き合おう。
1人で寝たはずなのに、ベットにはスヤスヤ寝息を立てている20歳位のお姉さんが。
黒髪のショートボブで服は自分と同じ白のシャツと膝下までの黒いズボン。
ベットはもちろん1つしかなく、いわゆる同衾ってやつだ。
「はうぇ!?」
記憶無いんだけど。着衣の乱れをチェックしたが、乱れてない。良かった……初めてが記憶無いとか残念すぎる。それに好みはもうちょっと胸が……ゲフンゲフン。
奇妙な叫び声をあげたせいで、寝ていたお姉さんが起きてしまった。
「竜司クンおはようー。」
「え?どちら様ですか?」
ベット脇の床の上に正座し、この謎の女性を観察する。
「何ふざけた事言ってるのよー」
そう言いながら女性はベットから出て、女性自身の顔や腕、二の腕などを触り……
「な…なにこれ!!肌の張り!!血管の浮き出ていない腕!!二の腕も!!……」
「………」
あまり触れてはいけない内容のような気がする。
この世界では鏡は無さそうなので、借りてあった桶に水を生成し鏡代わりに見てもらう。
「ひょっとして母ちゃん……なのか?」
桶に映る若返った自分にうっとりしている女性に最終確認をとった。
「竜司クンは現実世界そのままなのねー。」
はいビンゴ。
スタート地点が違ってたり、なぜ同じベットで寝ていたのかわからないが、無事(?)合流出来たから良しとしよう。
「しかし、見違えたよ。髪もツヤツヤだし、目尻やほうれい線のし(グヴォ)………」
容赦ない左フックが右脇腹に突き刺さる。
悶絶してうずくまり、母ちゃんを見上げると……そこには鬼がいた。
「デリカシーのない竜司クンにはお仕置きですー。」
怒る母ちゃんをなだめてから、朝食の為階段を降りて行く。
冒険者ギルドは早朝にも関わらず人が多くて、それぞれのランク掲示板の依頼書を奪い合っていた。
討伐系の依頼は人気のようで、簡単で高収入なクエストは瞬殺されるようだ。
なるほど。採取系は地味だし、お金にならない、ランクアップに向かない……売れ残るわけだ。
っていうより昨日は思いっきり出遅れていたのか。
そして依頼を受けた冒険者たちが次々と出かけて行く。うん。今日も残り物クエストだ。
とりあえず朝食を食べ(2人分銅貨10)、母ちゃんのギルド登録を済ませた。
マイ=カミシロ 19歳 ランクD 0/50
HP 135/135
MP 42/42
スキル
剣術 7/10
氣功術 2/10
19歳ってなんだよ……ツッコミ入れたかったけど怖いのでやめた。
「剣術がいきなり7あるんだけど?」
「言ってなかった?段位持ちよー。教師やってた時、部活の顧問やってたし。」
「へー。段位とスキルレベル連動してるのか。」
「みたいねー。錬士六段だから多少の誤差はあるみたいだけどー。」
毎週出かけてたのは稽古だったのか。……それであの教え方って問題ありすぎのような気がする。
「経験者には教えやすいけど、竜司クン『痛いのヤダー』ってすぐ辞めちゃったでしょー?」
返す言葉もありません。
とりあえず昨日購入したショートソードと革鎧は母ちゃんに渡す事に。
現在の所持金……というより無一文状態を説明(母ちゃんは初期の所持金0だった)
今夜の宿代を稼ぐべくDランクのクエストを確認する。
唯一討伐系で残っていたスピアーズボア3匹の討伐クエを受注。報酬は銀貨3枚でポイントは15ポイントだ。
薬草15回分ですか。
討伐クエストから売れていく訳だ。