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異世界は剣と料理と現代知識で  作者: わかね
第一章  昇級クエスト道中編
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047 王都は王都で

奴隷紋が浮かび上がっているイディさん。


未だ首元から下は『す巻き』状態の為、舞姉ちゃんと楓さんによって焚き火の側まで運ばれて来た。


「イディさん……説明してもらえますか?」


襲われた理由もそうだけど、村人達の事も気になる。


しばらく焚き火を見つめたまま無言のイディさん。

剛を煮やした樹は


「じゃあ……村の名前とか何人いたとか、その辺りから話して下さい。」


いきなり全部説明とか無理があるようで

こういう時の樹は頼りになる。


「村は……マケといって300人程いました……草原の象やサーベルタイガーを狩り、牙や象牙を売って暮らしてました。」


ポツポツとゆっくり語り始めるイディさん。


マケの村ではその他に小規模ながら畑や酪農をしていたそうだ。質素ながらも自給自足の生活。


だが、牙や象牙が高く売れる様になってきて

裕福さを求める村人達が乱獲するようになり

象もサーベルタイガーも

この近辺では見なくなってしまった。


サーベルタイガーは水牛を捕食していたが、天敵がいなくなった事もあり爆発的に増え

牧草地だった平野部は食い尽くされて荒地と化し

酪農が立ち行かなく………

農耕の牛もその数を徐々に減らしてゆき……



「どこの世界も同じなんだな」


異世界こっちにはワシントン条約なんて物は無いし、

高く売れる物があればそりゃ乱獲するよなー


たとえそれが食物連鎖を崩壊させて

自分達の首を絞める結果になるとしても


「人種は食べる為以外にも命をもてあそぶからじゃ」


いつのまにか俺達の側で話を聞いていたリリー。


マケの村の産業が壊滅して

荒廃していったのはわかったが、

人狼化した理由にはならない。


「次第に村人達は王都や周辺町を目指し、この村を後にする人達が増えてきました。」


イディさんは再び話し始める。


「そんな中、ミディを出産したのですが……思うようにお乳が出ません。主人も…自分の食べる分を私に『ミディの分だよ』って言って……」


焚き火を見つめ続けるイディさんの瞳からは一筋の涙。


「そんな時でした。行商人から『お乳が良く出るアイテム』を譲り受けたと……主人が渡してくれたのが、今も首にかけてある『牙の首飾り』です。」


舞姉ちゃんが慎重にイディさんの首にかかっている首飾りを外す。麻縄で編み込まれた質素な造りに1本の白い牙がアクセントの首飾り


「人狼の牙じゃな」


リリーの説明がなくても

話の流れから容易に想像できる。


「半信半疑でしたが、『満月の日にその牙を自身に刺し、血を供えれば願いは叶う』と……」


怪し過ぎるだろ……それ。


藁にもすがる人は簡単に騙される典型だな……


「実際……翌朝からお乳の出は良くなりました。」


……それからは満月の度にお乳の出が良くなっていって

今日まで至る……と


それと同時に満月の度に村人が減少していって

先月の満月の後、村人で生存しているのは

イディさんとミディちゃんのみとなってしまった。


「ご主人は?」


「主人は……去年の満月の前日に若い村人達を集めて『現状を魔王様に報告してくる』と旅立ちました。」


それで村を捨てて一緒に行く事を拒んだ訳か。

『主人を待つ』言ってたしね。


……あれ?………街道の少し南に朽ち果てた馬車って……


なんだろう。人狼ゲームで人狼側が勝利した場合

こうなるのだろうか。


「イディさん……人狼になって村人を……食べてた記憶はありますか?」


樹は俺達が言いにくい事もズバッと言うよね……


「………夢……ではなかったのですね」


朧げながらも逃げ惑う人や食べている感覚はあったそうだ。その中には痩せ細った主人の姿も……


一通り話が終わる頃、シランさんがミディちゃんを連れて帰ってきた。馬は荷台を引いた『馬車』となって。

幌の無い簡易的な荷台だけど、かなり嬉しい。


「荷台の部分はどうしたのじゃ?」


「村にあった。もらってきた。」


俺達は助かるけど、良いのか?勝手に持ち出して…


「どうせもう村には誰一人居ないのじゃ。大丈夫じゃ」


そして荷台にはベビーベッドごとぐっすり寝ているミディちゃんと、イディさんに譲った乾燥ボア肉が。


「次の町。夜。楽しみ。」


シランさんは荷馬車の御者台から飛び降りると

舌をチラリと出してから

リリー達の馬車へと向かっていった。


「あはは……」


苦笑いする樹と俺を横目で……ジト目の楓さん。



「とりあえず、次の町でイディさんには『解呪』を受けてもらいます。」


必要ならミディちゃんもな。


乾燥ボアはアイテムボックスへとしまい、

簡単な朝食をすませて

再び街道を北へ進む事になった俺達。


危険度はないとの事なので

イディさんの『す巻き』状態は解除。

イディさんはミディちゃんへ荷台で授乳中。


もちろん俺と樹は荷台に視線を送らないようにしないと。


「次の町に着いたら少し休暇期間を設けるのじゃ」


滞在期間中のポイント減少も免除してくれるそうだ。


「魔王様にマケの村の件を報告しなければならんのじゃ……

地図も書き換えないといけないのじゃ……」


俺達から『牙の首飾り』を受け取るリリー。

この首飾りを売りつけた行商人も調査するそうだ。


忘れてだけど、リリーは王都のギルマスだったんだ。

一応仕事しているんだね。


……

…………

………………ん?


魔王様?



王都って……魔王様の王都って事?

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