046 奴隷紋は首元で
2022年 5月17日(火)〜18日(水)異世界サイド〜
「人狼……ライカンスロープは伝染病という呪いじゃ」
見張りを交代して俺と樹の番になった時、
リリー達も交代でシランさんとリリーが出てきた。
次の町で俺と樹が『奉仕』するのを条件に
情報を聞き出す事になったのだが……
イディさんはまだ『す巻き』の状態でテントの中で寝ている。
見張り交代の時、俺と樹もす巻き状態だったのは
起きていたずらしない為………って
子持ちの人に手を出すわけないだろ……
信用ないな……俺も樹も。
「ライカンスロープに噛まれたり、爪によって傷つけられると感染するのじゃ。」
……あれか。ゾンビ映画とか思い浮かんだ。
傷つけられても、次の満月までに回復術LV5『解呪』をかければ助かるのだが、感染した状態で満月を迎えてしまうと血の暴走により
自身もライカンスロープと化してしまう。
そして、一度発症してしまうと人間には戻れない。
満月の度に人狼と化し、人を襲って感染を広めたり……または喰らって糧としている。
「それじゃ、イディさん親娘は助からない?」
「話は最後まで聞くのじゃ」
リリーは焚き火の横へアイテムボックスから丸太を出してちょこんと飛び乗る。
「例え発症したとしても、『解呪』は有効じゃ」
リリーはアイテムボックスから獣の足を取り出し、
串に刺すと焚き火で炙り出した……
(それ……黒狼?……うへぇ……)
例え発症したとしても『解呪』で人狼化は防げる。
「ただし、人間へは戻れずに犬人……獣人として余生を過ごす事になるのじゃ……」
「その『解呪』ってリリーは出来ないのか?」
「わしらには無理じゃ。教会でしか出来ぬ。」
回復術LV5は俺達でも使えない。
「しかも、結構な金額がかかるのじゃ」
金取るのかよ……しかも『結構』ねぇ……
現在所持金は……銀貨110枚ある。
……なんだろう。俺達のPTには
神様が憑いているのか?……貧乏神が。
「別に救わなくても……いいのじゃぞ」
確かにそうなんだよね。この場でイディさんにトドメを刺して、ミディちゃんは放置すれば………
ごめんなさい。俺には出来ません。
「それじゃ親子を救う事で良いか?」
見捨てるなら最初からトドメ刺していたし、
これで良いのだろう。
「では、娘を連れて来る。しばらく馬を借りるぞ」
そう言うとリリーはシランさんへ指示を出す。
シランさんは颯爽と馬にまたがると
街道を南へと走り出した。
「お主の姉も元より助けるつもりだったようじゃし」
ん?そなの?
「一撃で首を刎ねれるのに、それをしなかったぞ。」
舞姉ちゃんの実力……すさまじいな……
しばらく……リリーとライカンスロープについての話をしていたが、空が白みはじめ………重要な案件に気づいた。
「あのーリリーさん……」
「なんじゃ!お主が『さん』付けとか……ハッ!!黒狼の脚はやらんぞ!」
リリーは焼き上がった黒狼の脚を背後に回して隠す
俺もそれは食べたくないから安心して。
「黒狼はいらないけど……良かったら保存食を分けてほしい……」
そうなのだ。乾燥ボアはイディさんにあげちゃったし、
ハンバーグは昨夜の戦闘で全部……かろうじて1枚だけ
フライパンに残っているけど、
1枚のハンバーグを4人で……無理がある。
リリーは食べている手を止め、俺達の方を……
見ている………睨みつけてる?
「冒険者の食糧管理は初歩の初歩の初歩の初歩じゃぞ!」
どんだけ初歩なんだよ……
「マイナス350ポイントじゃな……」
黒狼の食材提供で得た1000ポイントも
滞在3日と今回のマイナスで残り345ポイント。
基本スタート時点の500ポイントと合わせて
現在は845ポイントだそうだ。
「ポイント無くなったらどうなるの?」
「もちろん『不合格』じゃ」
まだ王都まで距離があるし、
あまり減らさないようにしないと……
リリーから水牛の肉を渡されて、
なんとか朝食を作り出す。
ほとんど筋肉なので、
圧力調理によってプルンプルンに仕上げていく。
味付けは……塩のみ……
カレースパイスも次の町で仕入れないとな……
出来上がる頃、舞姉ちゃんと楓さんも起き出して、
4人で食べる頃にはイディさんも目が醒めた。
イディさんの首には青黒いあざが浮かび上がり、
リリー曰く『奴隷紋』なのだそうだ。
奴隷制度は基本的には廃止されているが
こういった犯罪奴隷は現在でも残るとの事。
犯罪の判定は神様が下すらしいが、基準は不明。
今回は俺達への襲撃が犯罪認定されたようだが……




