042 良い子はマネしないで
2022年 5月15日(日)〜16(月)異世界サイド〜
野生の水牛の群れと同じく
北へ向けて街道を歩いていたが、
水牛達は徐々に西の方へ遠ざかっていく。
人里が近づいてきた証だろうか。
ターガナの町を出て2日目。
食糧はまだ大量にあるので、次の村は通過しても問題ない。滞在すると襲われる危険性があるから
俺としては滞在しない方がありがたいのだが……
襲われるといっても、命の危険性はないのだけどね
一応介護用パンツ履いているから
不測の事態でも無問題。
村らしき影が見え始めた頃、街道の周囲も変わって
草原と灌木しかなかった景色に、荒れ果てているが
畑だった形跡が加わる。
畑の地面はひび割れ、
畝がかろうじて判別出来る程度。
人の手入れが無いと畑はすぐに荒地と化す。
当然作物などは育っておらず、
ひび割れの間から雑草が所々に生えていた。
徐々に見えてくる村……?
村の境目を示す柵はあちこちで崩れ
入り口から見える周囲の木造の建物も、
そのほとんどが屋根に大小の穴が開いて
漆喰の壁も道路に崩れ落ちている。
一言で言えば廃墟。
現実世界の『限界集落』を思い起こさせる。
俺の地域も例外ではなく、
利便性を求めて都会へ流れる人は今でも続いていた。
そして人が住まなくなった住居は
あっという間に朽ち果てる。
「なんか……出そうな廃墟だなー」
樹の『出そう』という言葉に
ビクン!と肩を震わす楓さん。
「樹……そんな冗談……やめてよね……」
楓さんの言葉に力がない。
楓さんも……女の子なんだなーって思った。
一方で
「ゾンビかな?スケルトンかな?それともレイス?なんかワクワクするのー」
舞姉ちゃんは……女の子なのかな?って思った。
「流石にこの状況じゃ『中断』は宣言できぬのじゃ」
リリーと従者3人は心底残念そうに呟く。
あぶなかったー………俺と樹はホッと一息ついた。
「どうする?まだ日があるからもう少し先へ……」
と言いかけた俺だったが、
廃墟の影から顔を出す小さな子供を見つけた。
『第一村人発見』
どこかのテレビ番組であったなー。
俺達一行を見つけた子供はすぐに建物の影へ姿を隠すと
少しして母親らしき人物の手を引きながら再び現れた。
女性も子供もダブダブで灰色のフード付きローブを羽織っていて……それでも『女性』だとわかったのは
その……大きいです。はい。
舞姉ちゃんと楓さんの刺さるような視線を感じるので
あまり注視出来ませんが…………
「……あの………旅のお方でしょうか?」
消え入りそうなか細い声。
時折り見える子供の手も細くて力無い。
村入り口の畑の惨状を見ると納得だよな。
この廃村を素通りしようかと思ったけど
この親子を振り切ってまで先に進む事は俺には出来ない。
「ターガナの町から来ました。明日には出発しますので、村の広場を一晩お借りしたい」
「この惨状でもまだ『村』と言ってくれるのね。」
女性の名をイディ。子供の名をミディ
すでに村はこの親子以外はおらず、皆王都などを目指して旅立って行ったそうだ。
イディさんは乳飲み子を抱えていたので旅立てず
以降この地で2人ひっそりと暮らしている。
乳飲み子を抱えて旅ができる程
この世界は甘くはないって事なのだろう。
まだ日は高かったが、この日は廃村の広場で野営準備にとりかかる。廃墟を利用しようかと思ったけど、
樹の『何か出る』発言の影響で楓さんが猛反対。
夕食はイディ親子の事も考えてボアスープにした。
空腹にいきなり刺激物は胃に良くないしねー。
はじめは遠慮していたイディさんも
ようやくボアスープを口にする。
「………おいしい……」
ミディちゃんは……じーっと
そんなイディさんを見上げているけど?
「あ………ミディもご飯の時間ね………」
………そう言うや否や……
いきなりローブを脱いで、授乳始めました。
俺達4人は呆然として言葉が出て来ない。
だってねぇ………恥じらいとか羞恥心?だったり……
チラッ
周囲への配慮だったり………
チラッ
やっぱり大き……
「竜司クンー」
「何?……」
パッパッ
「!!!!!!目が!!!目が!!!目が!!!」
「生命活動の営みを邪な目で見ないのー」
痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い
ゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロ
昨日のリリーのようになっている自分がいる。
ひょっとして……『舞姉ちゃん専用スパイス』か!!
目を開けてられないので確認出来ないが、間違いない。
ほぼ赤唐辛子のそれは、催涙ガスの代わりになるし、
熊撃退スプレーもカプサイシンが入っているから
『舞姉ちゃん専用スパイス』ってかなり有効手段……
ってそれどころじゃないよ!!
「ぐのののぐぎがががが!!」
言葉で表現出来ない痛みが続いている俺に対して、
近くでは
「姉貴……ギブギブ!!離して……お願い」
と筋肉ムキムキが130センチのツインテール少女に
極められてタップしている姉と弟。
舞姉ちゃんも楓さんも……
イディさんに布か何かかけてあげてよ……
目が中々開けられず苦闘する夕食だった。




