037 安心は介護用で
2022年 5月13日(金)現実世界サイド〜
「うわ………これはヒドイ。」
昨夜4人のサキュバスとゴニョゴニョになったから
パンツ洗いを覚悟して起床したのだが、
パンツどころの話ではなかった。
甚平の上下とシーツまで……オネショしたみたいに
なっている……これマットレスまでいってるね。
起きあがろうとしても、足腰に力が入らない。
「どんだけ吸い取ったんだよ………」
もちろん記憶も『記録』もありません。
5分くらい待ってようやく動けるようになった。
時間が押し迫っている中、
固形石鹸で全てを洗っていく。
マットレスも苦労しながら洗っていって……
朝食はシリアルにするしかないな。
母ちゃんを起こし、シリアルを食べてもらう。
俺が色々洗っている姿で察してくれたのか、
特に何も言われなかったのは助かる。
救いなんだろうか?憐れみなんだろうか?
天気予報は晴れ。マットレスやシーツ、その他諸々を
外に干して……そうだ、お弁当作らなきゃ……
昨日残りのタンドリーチキンと大根の煮付けを温め
だし巻き卵とアスパラのベーコン巻きを作っていく。
トマトは今日は湯むきする時間ないのでヘタを取って
軽くキッチンペーパーで水分を取っただけ。
和も洋もごっちゃ混ぜだ。
「とりあえず、なんとかなったかな……」
おかかのふりかけを白ご飯にかけて
2つの弁当を作り終えたら登校する5分前。
「いってきまーす!」
このパンツ洗いも何か対策できないかな……
今日は中間テストが返ってくる。
心配なのは英語の2つだけで、他は手応えバッチリです。
その英語も思ってた程……
48点………平均点が76だったので、赤点は免れたが。
次は頑張ろう……。
「竜司は夜、どこへ行っていたのかな?」
ニヤニヤしながら聞いてくる樹……知ってるだろその顔は。
俺が帰って来れない理由を……
「全くもって油断したわ。樹もいくか?」
樹は全力で首を左右に振る。だよなー。
俺達が18歳になれば解禁されるのかな……
記憶や記録なんかで。
3年後もこの状態が続くとは思えないけどね。
「とりあえずあの町は今夜までで、次の日からは
別の町向けて移動するぞ。」
「後260キロか……夏休み前には終わりそうかなー」
どうだろう。歩くだけならいいけど、
保存食の買い出しや消耗品の買い替えや買い足し
路銀がかさむんだよなー
そういった意味でも、昨夜情報を仕入れるのにお金が掛かっていないのは、ありがたい。
「昨日俺が食べられた事で、情報は無料で手に入る。」
じゃなきゃ異世界の俺が浮かばれない。
………死んではいないけど。………大丈夫だよね?
「それで昨夜はリリーちゃんの所へ行ってたのか。」
ちゃん……って本人聞いたら怒り出すぞ。
「本当は銀貨で支払う予定だったんだぞ」
「夜魔と呼ばれる種族に、夜間会いに行くのがそもそもアウト。」
知らないよ……そんな情報。
「路銀はあって困る事はなさそうだし、今夜もカレースパイスで稼ごう。」
そうすれば次の町とか仕入れだけで
すぐ出立できそうだし。
放課後の調理室はプリプリしている楓さんが1人。
今日は料理部の活動日ではなかったか?
他の先輩達は色んな理由を付けて帰っていった。
吉沢さんも今日は所用があって
部活は欠席すると言付かっている。
1年で料理部は俺と吉沢さんの2人だけになったから、
俺へ伝言頼むのはわかるんだけど
始め……声かけてくれた時は近かったのよ。
それが、『今日……用事が……あって……部活……休みます。』って言いながら段々離れていくのよ。
俺は熊か?
入学して1ヶ月も経てば大体わかる。
吉沢さんは「男性」が苦手なんだなーって
俺に声をかけるだけでも大変そうだったからね。
理由?詮索なんてしませんよ。
部長の楓さんに伝えたのだが、
楓さんがプリプリしている理由は別にあった。
「樹から聞いたけど、異世界でまた朝帰りらしいわね」
あのおしゃべりめ………
とりあえずなぜ朝帰りになったか
露店が終わってからの流れを全て白状した。
「……………という訳です。」
話を全て聞いた後、楓さんは盛大なため息をつく。
「竜司君は、もっとこう『危機感』とか身につけなさい」
ごもっとも………
理由が分かったので多少……楓さんのオコ状態は
解消されたようだけど………
2人しかいないんじゃ、今日の部活動は無理そうだな……
楓さんも元気がない。
「先生からの許可が降りたから、バーベキューの話し合いをしたかったのに……」
確かにコロナの感染状況も落ち着いてきているから、
バーベキューをやるとしたら、今しかないよね。
もちろん、感染対策など決めて
先生方へプレゼンしないとダメだけど……
「場所や日程、感染対策の方法。次回の部活動で話し合いましょう。」
残念だけど、2人で決める訳にはいかないからな。
今日は解散って事で部活動は終了になった。
その日の夜……
玄関先から母ちゃんが呼んでいる。
つっかけを履いて外に出たら、
「車の中にマットレスあるから、運ぶの手伝ってー」
母ちゃんは、仕事帰りにホームセンター寄って
シーツやマットレスなど色々買ってきてくれた。
マットレスは中々……乾かなかったので
どうしようって思ってた所だからすごくありがたい。
早速開封して俺が寝る二段ベッドの上段に
マットレスとシーツをセッティングする。
「それとー竜司クンにはこれー」
ベッドから降りた俺に母ちゃんが手渡しでくれた物
『介護用パンツ』って書いてある………
聞こえはいいけど、要するに老人用オムツだ。
えーっと………
これを……はいて……寝ろ………と?
「多い日も安心なのー」
それ、意味ちがうから!!!
…………うっ……
母ちゃんの優しさは
俺の心に巨大なダメージを与えてくれた。




