033 星空はとても綺麗で
2022年 5月11日(水)現実世界サイド〜
中間テストも残り半分。
今日は、日本史、理科Bと英語OC
今日も英語がありますよ。
まぁ、初日の英語は精神的に不安定だったからね。
異世界の事は………考えないように………しないと。
「異世界の金策だけど、俺にいい考えがある。」
考えないようにしているのに、
登校していきなりこれですか。
「とりあえず、試験終わってからにしてくれ」
今は試験に集中したい。苦手な英語があるし。
……
………
……………
はい。白い灰になりました。
日本史と理科Bは好感触だっただけに残念だよ。
問題は英語OC
まぁ、赤点は免れたと思う。……大丈夫だと思いたい。
「………で?『いい案』ってなんだ?」
先に聞いておけばよかったよ。
テスト中も気になって仕方なかった。
…………って言い訳はやめておこう。
「あの焼き鳥を町で売る」
焼き鳥ってボア串か………確かにリリー達にも好感触だったし、ボアの生肉は楓さん、母ちゃんと樹のアイテムボックスに分散して入れてあるから、かなりの量作れるぞ。
それに時間停止のアイテムボックスだから、
焼いて保存も可能か。
価格も1本銅貨2〜3枚に設定すれば
薄利多売で、町での宿代どころか装備や
寝袋とかの必需品も買い直し出来るかも………
寝袋の中古品は、機能面での文句はないけど……
あったかいしね。
匂いが………他人の匂いって気になるのよ……
しかも染み付いていたから、洗ってもダメだったし……
楓さんが新品にこだわる理由がわかったよ。
うん。樹にしてはいい案出すじゃないか。
見張りを交代してからは、串を大量に作って
ずっと焼き続けるとするかな。
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2022年 5月11(水)〜12(木)異世界サイド〜
見張り交代の時、樹と楓さんのアイテムボックスから
ボア肉を出してもらって、ひたすら串を作っていく。
結構な量だけど、夜明けまでは6時間位あるから
時間潰しにはもってこいだ。
「私も手伝おうかー?」
「舞姉ちゃんは周囲の警戒に集中してくれればいいよ。」
レンガは借りたままになっていたので、穴を掘り
8本焼ける焼き台を作って少しずつ焼き始めた。
焼きながら串を作り、そしてまた焼く。塩と胡椒をかけ、
たまにオレンジの皮を削ってふりかける。
舞姉ちゃんはいつものように
焚き火から少し離れた草原の上に正座して微動だにしない。
たまに薪をくべる為に動き出すくらいだ。
夜の闇はとても静かで、空はとても澄んでいて、
星はとても綺麗で
その星空を眺めていたら
明日のテスト範囲が浮かんできた。
「ジョバンニもこんな星空を眺めていたのかな。」
「『銀河鉄道の夜』ねー。私も好きだなー。」
舞姉ちゃんも目を開けて
正座のまま上空の星空を見上げる。
「明日の試験範囲なんだ。今度借りてこようかな。」
教科書には物語の一部分しか掲載されていない。
だからその「先」を知りたい。
この異世界の物語も
少しずつではあるけど「先」へ進んでいる。
その先が喜劇なのか悲劇なのかはわからないけど。
そう思いながら、しばらくの間舞姉ちゃんと
無音の天然プラネタリウムを堪能していた。
空が白み始めたころ、焼き鳥はかなりの本数が焼き上がり
俺と舞姉ちゃんのアイテムボックスへと収納する。
300本を超えたあたりからは、数えるのをやめた。
残りの本数も少なくなって
そろそろ朝食も作ろうかと考えた頃。
「一晩中その匂いを漂わせるのは、地獄なのじゃ。」
と寝不足気味で不機嫌なリリーが起き出して来た。
「ごめん。ごめん。ずっと起きてたのか?」
「黒狼の解体で皆疲れてたから、夜の監視は妾が引き受けたのじゃ。」
部下思いの優しい上司じゃないか。
ボアのスープを作りつつ、
焼けた1本をリリーへ差し出す。
すぐに食べるでもなく……
リリーは串を見つめながら話し出す。
「お主らは、この世界に何を求めておるのじゃ?」
「何というと?」
俺と舞姉ちゃんの間に腰掛けたリリーは
串にふーふーっと息を吹きかけ冷ましていた。
「質問に質問で返すではない。」
勇者や英雄を目指すのか?
それとも酒池肉林を目指すのか?
富や名声を目指す者もいれば、
出現した場所に根付き、家庭を築く者もいる。
リリーが語る『来訪者』の姿は多岐に渡る。
そこには否定も肯定もなく、ただ単に「物語」として
語ってくれた。
「俺は……求めるのは『笑顔』かな。」
現実世界の漫画、ゲームや小説のような英雄譚に憧れる気持ちも無くはないけど………
リリーは無言で先を促す。
「俺に出来る事は少ないけど、なるべく多くの人に『笑顔』になって欲しい。例えば……美味しい物を食べた時に、自然と出る笑顔……そんな笑顔を見れる旅をこの先も出来たらな……なんて考えている。」
「なるほどのう……確かに『共存、共栄』じゃな」
ただ、各地を巡る旅をするにしても、
最低限の強さは欲しい所ではある。あと最低限のお金。
「バランスの取れた良いPTじゃの。」
前衛がいて、楓さんも後衛として育って来ている。
樹はもうすぐ剣術がLV3になるそうだし、
「俺はお荷物だけどね。」
「そう卑下するでない。お主は他の3人の精神的支柱なのじゃよ。」
そうだといいな。
ボアのスープが出来上がる頃、皆が起き出して来た。
空はゆっくりと朝日の眩しさを連れ、
星空は役目を終えたかのようにその姿を消した。
草原と道は北の森へと続いていて
「北の森を抜けると、ターガナの町じゃ」
とりあえずはその町で路銀を稼がないと……




