032 金欠病は重症で
朝食を食べ終えたので、今日も王都へ向けて歩き出すとしますか…………そう思っていたのだが、
後片付けをしている最中にリリーから
「黒狼を処理するから待つのじゃ」
とストップをかけて来た。
あらら。
まぁ、食べる目的なら下処理は大事だよね。
護衛対象がそう言うなら待つしかない。
うちらが『大型犬』言ってたのは「黒狼」だったのか。
アズさんのアイテムボックスから死骸を全て取り出し
血抜きをするリリーの従者達。
血抜きといっても一晩経っているから
舞姉ちゃんが仕留めた7頭以外は難航している。
その後草原に少し大きめの穴を掘り、その中へ血抜きで出た血と内臓を捨てていった。
「内臓は食べないんだな。」
「新鮮な内臓なら処置するが、一晩経っているし道具も無い。」
アズさんが手を動かしながら答えてくれた。
料理担当だけあって手際がいい。
「そういえば、穴掘って血とか埋めるってどんな効果があるの?」
昨日の夜襲を受けた原因が気になった。
「匂いの拡散を防ぐのが1つ。経過時間を狂わせるのが1つ。」
匂いの拡散を防ぐのはある程度理解出来るけど、経過時間を狂わせる?
「液体は地中に染み込んでいく。」
鼻がいい動物は血の匂いを嗅ぎ付けるのが上手なだけではなく、地中の深度まで探り当てる。
地中まで染み込んでいる=獲物を狩った後、時間が経っている=この血の匂いを辿っても獲物にありつけない。
話し方がぶっきらぼうだけど、アズさんの説明は端的でしかも的確だ。
血抜きした後穴掘って埋めなかったから、地中への浸透は少なくて……まだ近くにいると「黒狼」にばれて………
夜襲を受けた訳か。
なるほどねー。勉強になるわ。
そして黒狼は食べないけど、このまま解体を見学……
と思ったのだが………
次々と増えていく内臓にギブアップ。
解体は俺には無理だよ。
解体に時間がかかって、出発出来たのは
さらに2時間経過した後。まぁしょうがない。
期限が決まってない「護衛」だから皆のんびりだけど、
そろそろお風呂に入りたいなーとは思う。
2日入ってないからね。
……
………
……………
東海道五十三次で出てくる「宿場町」
大抵は2里(8キロ)離れずにあるのだが、
この異世界……町以外は基本野宿だ。
そう言う意味では、ソロじゃどこにも行けないな。
ガラリーの町を出発して今日で3日目。
距離にして30キロ前後は歩いてる。
本来のC級への昇級クエストが
40キロ離れた隣町だったから
町まであと10キロくらいかなー
明日は町に着くだろうから、宿でゆっくりしたいなー
なんて考えていたけど、重要な事を思い出した。
お金………銅貨の1枚すらなかった。
どうしよう。
歩きながらみんなに相談。
もちろん警戒は怠らないように個別で相談する。
1:所持品を売って宿代にする
あまり大したものは持ってない。
舞姉ちゃんの刀以外は
……
…………
………………じいーーーーーー
「この子は………『白鷺』だけは売らないわよー!」
名前つけたのか。
しかも『白鷺』って城の名前でなかったか?
この世界は中古品は安く買える分
買取価格も相当低いんだろうと思われるので
売る気は無いから安心して欲しい。
舞姉ちゃんも安堵している。
そもそも、これ売ったら
何のために自分が働いていたのかわからなくなる。
戦力も大幅ダウンするし。
2:町に着いてすぐクエスト受ける。
ガラリーみたいに討伐クエストが人気だと
残りものしかないから、ある意味ギャンブルだなー。
「私がダイヤモンドを作れば………」
一回も成功してないじゃないか。
しかもそのせいで行き当たりばったりの
昇級クエスト受ける事になった自覚をして欲しい。
3:竜司を担保にお金を借りる。
樹に相談した俺が悪かったよ。
もうこれ以上は労働日数増やしたくないよ。
「なんじゃ?路銀が無いのか?」
リリーから呆れた声が返って来た。
見栄を張っても仕方ないので正直に答える。
「急な出費がかさんでなー。町に着いたらクエスト受ける時間はあるか?」
「町の中ではクエストは中断するから、大丈夫じゃ。
あくまでも、道中の立ち居振る舞いが対象じゃからの。」
おー。それは助かる。
「それよりも……じゃ」
他にも方法があるのか?
「『4:妾と褥を共にする』という選択肢もあるぞ」
「却下!」
昇級クエスト中は手出ししないんじゃ無かったか?
「町の中では中断するからのう。妾じゃなくても、従者でも良いぞ。」
グッ………
その提案は……
…………
……………
楓さんの目が怖い
サキュバスはギリセーフではなかったっけ?
え?
俺から申し出た場合はアウト………と。
判断基準がわからないよ………楓さんの
樹も笑ってないで、助けてくれると嬉しい。
舞姉ちゃんも聞き耳立ててないで、代案はありませんか?
金策で苦労する異世界は………胃が痛くなりそう。
とりあえず町に着くのは次の日だ。
問題は先送り……
最悪……町で野宿……かなぁ。
隣町まで10キロの場所で
今日の野営と夕食の準備をしながら
ため息しか出てこない俺だった。




