031 食文化は不思議で
2022年 5月10日(火)現実世界サイド〜
中間テスト2日目は古典と世界史と数学Aだ。
新年度始まったばっかりで、
試験範囲も限られているから問題ない。
だからか、テストの時間中で解答と見直しが終わると
ついつい異世界の事を考えてしまう。
昨夜の夜襲は母ちゃんがいたから対処出来たようなもので、俺達だけだったらどうなっていたか……と
今朝母ちゃんから言われたのは
「1対1なら『突き』はアリだけど、多数を相手にする時は悪手なのー」
理由は……倒した後の後続への対処。
結果どうなったかは……樹がかばってくれたから
楓さんは大丈夫だったけど………
キーンコーン………
チャイムによって意識は現実へと戻された。
礼が終わると前席の樹が振り返る。
「古典どうだった?」
「ほぼほぼ大丈夫かなー」
やってて良かった百人一首。
上の句と下の句丸暗記しないと無理だもん。
覚えてても樹には1回も勝てなかったが。
「それより樹。左腕は大丈夫?」
「別に何ともないぞ。痛みも腫れも無い。」
ワイシャツをめくって左腕をさらけ出す。
確かに、傷一つない。……筋肉も。
「あっちみたくムキムキっとしたいけどなー。」
体質とかもあるだろうから、プロテインは程々にな。
異世界のケガとか現実世界に引きずらないって分かっただけでも収穫か。
「改めて、舞おばさんってすごいな。」
俺もそう思う。結局10頭の内、脇から攻めて来た3頭を除けば1頭たりとも撃ち漏らしていない。
しかも息一つ乱していない上でだ。
確かにPTとして、これほど心強い味方はいないけど
それって残る3人の存在意義は?
「うちらも強くならないとなー」
「だなー」
「基本に費やした時間が違うからねー」
夕食終えた午後 7時30分。
神代家と上野家の反省会。
といってもオンラインミーティングでだ。
俺はそういった物に疎いので母ちゃん任せだけど。
便利な時代だよ……
「樹君も強くなって来ているよー。そろそろLV3くらいにはなると思うけどー」
樹の上達スピード早くないですか?
『舞おばさんにそう言ってもらえると、励みになります。』
楓さんは予備校があるので不参加だそうだ。
受験生だからね。リアル優先ですよ。
『そういえば姉貴が、『魔術LV3』に上がって攻撃魔法覚えたって言ってました。』
マジか!!そういえば昨夜の戦闘後、
俺と楓さんの右手が発光していたな。
見張りの関係で、俺は確認せずにすぐ寝袋に入ったけど。
そうそう。寝袋といえば、俺と樹が中古品で
母ちゃんと楓さんは新品。
樹は進んで中古品を選んで
楓さんに新品をあてがってくれって
そう言われたら、俺も進んで中古品選ぶしかないよね?
楓さんもダイヤモンドのギャンブルしなくても
良かったんじゃないかな?
ギャンブルはダメですよ。
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2022年 5月10(火)〜11(水)異世界サイド〜
見張りの交代で起きた時に飛び込んでくるのは
すさまじい程の血の匂い。
そういや夜襲の後そのまま寝たんだ。
よくこんな状況で寝てたなーなんて思いつつ、
舞姉ちゃんを起こす。
舞姉ちゃんも「うわー」なんて言いながらも
寝袋を畳んでしまっていた。
この血の匂いに引き寄せられて、新たな敵が?
なんて思ってしまうが、10頭もの大型犬はアイテムボックスには入らないし、
穴を掘って埋めようにも明るくなってからだ。
樹と楓さんと見張り番を交代してからは
焚き火の火を保ちつつ、
枝を木刀に見立てた素振りを繰り返す。
この匂いの中で朝食を作るのは厳しいなー。
空が白み始めた頃、リリーの従者で料理担当のアズさんが起きて来たので、
この血の匂いの中では料理しても美味しく味わえない事を伝えると「わかりました」と
10頭の死骸全部アイテムボックスに収納してしまったよ。
「ランクアップすれば、アイテムボックスの容量を
増やせる選択が出る。頑張れ。」
まだ血の匂いは残っているけど、朝食作るか……
時間が無いから昨日のボアスープの残りを使おう。
ボアスープ入れるのは、小麦粉と水を1:1で溶いた物。
「すいとん」だ。
出来上がりと同時にだいぶ空は明るくなった。
皆も続々と起きてくる。
「なんじゃ。昨日の犬が入ってないのじゃ………」
起きて早々朝食をチェックするリリー。
昨日の大型犬が朝食に上ると期待でもしたのか?
犬なんて食べませんよ。
「これは……これで美味しいのじゃ……」
……何とも歯切れが悪い。
犬を食べる文化は日本には……無いんじゃないかな?
韓国か中国辺りならあったような………
「羊頭狗肉」っていうくらいだから
高級ではなさそうだけど。
日本のナマコとかタコとかも
外国の人から見ればゲテモノだし、
食文化は地域差が出るな。
「俺達は犬は食べないぞ。」
リリーは両目を見開いて
「それなら昨日の大型犬はどうしたのじゃ?」
なるほど。視界から消えていたから
うちらPTが食べたのかと思ったのか。
10頭も食べ切れるかっ!!
「俺達のアイテムボックスじゃ入らないから、アズさんのアイテムボックスに入れてもらってるよ。」
血生臭いし、そのそばで朝食は食べたくない。
「それにさっきも言ったけど、俺達PTは全員大型犬は食べないから、もし欲しかったら全部やるぞ。」
3人も強くうなずいている。
………リリーの目が輝いている。
「いいのか?本当にいいのか?」
なんかヨダレ……垂れているんですけど?
「後でくれとか言っても返さんぞ?」
「絶対に言わないから安心してくれ。」
「やったのじゃー!!」
飛び上がって喜んでる。
「お主らにボーナスポイント1000ポイントじゃー!!」
食文化に色々言う気はないけど、
やっぱりリリーはチョロくないか?




