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異世界は剣と料理と現代知識で  作者: わかね
第一章  昇級クエスト道中編
30/104

029 夜襲には全員で

出発前から体力を使いすぎるのは問題なので

軽く汗をかく程度で切り上げる。


舞姉ちゃんは、焚き火近くの草原に正座したまま、ピクリとも動かない。(寝てるの?)と思ったらゆっくりと瞼を開けた。


「良い音が出る様になったねー。」


音でわかるのか。やっぱりすごいな。


「ありがとう。さて……そろそろ朝食を作り始めるか。」


朝食といっても、まだまだ乾燥ボアの試行錯誤中。

乾燥したボアはジャーキーかと思いきや、塩辛くてそのままでは食べられない。

長期保存の為だから仕方ないとはいえ、硬すぎるし……

昨夜と同じく鍋に水を入れて乾燥ボアと一緒に煮る。


途中で柔らかくなったボアを取り出して一口大にカットしていくのだ。


昨夜はそのまま鍋に戻して野菜と一緒に煮るだけ……

リリーの従者が作るのをそのままそっくり真似た鍋だ。

現実世界の『ぼたん鍋』に似ている。

塩味がちょっと濃いけど。


うーむ。昨夜と同じのはなー。

ちょっと変えてみよう。


鍋の味付けは乾燥ボアの塩分があるので大丈夫なのだけど、このままでは芸がない。


なのでカットしたボアは鍋に戻さず、鍋には玉ねぎと人参、キャベツを投入。仕上げに片栗粉を水で溶かして入れ、とろみをつける。


ボアは鉄の串1本に5個ずつ刺して『焼き鳥?』を作りあげてゆく。

豚の串焼きを『焼き鳥』って言う所もある様だし、まぁ……これでもいいでしょ。


アイテムボックスからレンガを2つ取り出して簡易な焼き台を作る。高さが欲しいから縦置きかな。


鉄串2本しか同時に焼けない大きさだけど、ゆっくりやりましょ。

塩は元々染み込んでいるくらいだから、胡椒のみ

胡椒は異世界では高いイメージがあったけど、そこまで高くはなかったなー。



リリーの従者達も起きて来て、朝食を作り始める。


火種をもらいに来た時、『焼き鳥』をまじまじと見つめていたけど、これは人数分しかないからあげないよ?


残り74日のバイトは王都に着くまで保留だし。


この道中じゃ食材も道具もないからね。


だから、食事については各々別で………って話だった筈なのだが………


…………じぃーーーーーー


焼き台の焼き鳥を見続けるリリー。

その後に俺の顔を見続けるリリー。


…………はいはい。わかりましたよ。


鉄串を取り出して、各串から1つづつボア肉を抜き取り

5本目の『焼き鳥』を急造する。


焼きむらができるけど、その辺は勘弁してください。


樹と楓さんも起きて来たので

焼き上がった2本は………リリーと舞姉ちゃんが持って行った。火傷しないようにね。


樹と楓さんは先にテントと寝袋を収納してもらって、俺は次の2本の焼き鳥を焼き始める。


「!!!!うま!!うま!!あつっ!!うま!!」


毎回思うけど、これで300歳とはねぇ………


「美味しいのー。これでホッピーと辛味噌あったら最高なのー」


こっちは『飲み屋のおっさん』かよ!


実験段階だけど、ボア串は[合格]いただけそうだ。


樹と楓さんの反応も良い。

俺も食べたけど、ちょっと硬めな所が気になるが、


あの硬すぎる乾燥ボアがこうも変わるとは……

新たな発見の朝食でした。


朝食も食べ終わったし、王都に向けて出発しますか。



……

………

…………


昔の人もこんな感じで、ただ黙々と歩き続けていたのだろうか。

東海道五十三次とかも書かれていない部分は、こういった

のどかな雰囲気だったのかなー。


すれ違う人もいなければ、追い抜かす人や馬車もいない。


轍があるので、馬車の通り道である事には違いないが


「ヒマなのじゃー」


全員の声を代弁するかのようなリリーの声。


Cランクへの昇級クエストは

その町の発展具合にもよるのだろう。


王都と隣り町を往復する昇級クエストと

方や王都から300キロ離れた田舎町を出発する昇級クエストは、一緒ではないよなー



午後を少し回り、大きな森を抜けて平原に出たのだが、昼間の森は陽光を遮り心地よい風が通り抜け、快適だった。


森の中でボアが3匹襲って来たが

何度も倒している敵だし、もちろん油断しない。


舞姉ちゃんが2頭を瞬殺する頃、俺と樹で残りの1頭を片付ける。楓さんはリリーの側に付いて周囲の索敵と監視。


PTのフォーメーションもだいぶ慣れて来た。

リリーはやはり無言で見守っていたが、

PT戦力がCランクに及第していると思っているだろう。


PT戦力の8割は舞姉ちゃんだけどね。



血抜きで多少の時間はかかったが、今晩の食材を確保。


この血抜きしたボアを使って夕食にしよう。


昨日と同じように森から離れて平地に野営準備を整えていく。ボアの解体は夕食を提供する事を条件にリリーの従者が手伝ってくれた。


『ギブアンドテイクが成立すれば、昇級クエストの[アドバイス]には当たらないのじゃ』と試験官からのお墨付きももらえたし、大丈夫だろう。


肉はたっぷりあるし、大勢で食べた方が美味しいからね。


「朝食べたあの串焼きを、また食べたいのじゃ……」


従者の3人も力強く頷いているので、

朝と同じメニューを作る。


今回は生肉なので下味とか付けないとなー。

とはいえ、あるのは塩と胡椒。あとはハーブが数種類と

柑橘類……か。


焼き台も8人いるから……と思っていたら、リリーの従者さん達からレンガ4個提供された。


そして少し地面に穴を掘れば

レンガを横置きで使用出来る事に気付き早速実行。


これで同時に8本焼ける焼き台が出来た。


今回の焼き鳥(?)はネギを間に挟んだ『ねぎま』やニンニクを間に挟んだり、ちょっとバリエーションを変えてみた。


「この野菜は臭くてダメなのじゃー」


………お子様が役1名不満をあげていたが、他の7人には好評だった。仕方なくリリー専用の肉オンリー串も作る。


従者3人とも交流して


主に御者担当のシランさん

リリーの代わりに夜間監視役のコリさん

食事やリリーの身の周り担当のアズさん


と名前を知る位は仲良くなれた。

………リリーを含めて全員サキュバスと知らされた時は

身構えた樹と俺だけど


「安心するのじゃ。昇級クエスト中は手出しはせんのじゃ」


………安堵したのは言うまでもない。




俺はひたすら焼き鳥を焼く係。


焼きながら食べるキッチンドランカー状態です。


誰も「代わろうか?」って言ってくれません。




夕食が終わり日も暮れて来たので、そろそろ先に就寝しようかと思った所に


「うおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉん!!」


と、うちらが通って来た森の中から遠吠えが。



リリーは遠吠えにうすら笑みを浮かべながら俺達を見る。


「さてと、今晩は大変そうじゃのう。まぁ、血抜きした後に土と葉を被せなかったお主ら自身の責任じゃ。」


旅の落とし穴は至る所にある……って事かよ。

って知ってて言わなかったな………


「言ったらアドバイスになるじゃろうが。」


そうでしたね。うちらで対処するしかないですね。


「まぁ、よかろう。美味しい夕食を馳走になった礼じゃ。」


そう言うとリリーはどこからか杖を取り出し、地面に突き立てる。馬車とリリー達一行を包む透明な立方体が現れ……


魔術LV7『堅牢陣地プリズン・スクウェア


リリーの発声と共に完全に固定化された。


その立方体には触れられるが

通り抜ける事は出来ない。


「これでうちらの事は気にせずとも良い。犬コロなど歯牙にもかからんわ。」


正直助かる。防衛戦など初めてだから。


「では、また明日の朝に朝食を頼むのじゃ」


と言い残し、従者3人と馬車の中へ入っていく。


「そうそう。犬コロは10匹じゃ。」


それはアドバイスだと思うけど、リリーなりのサービスなのだろう。


馬車の窓からの楽しげな視線を感じつつ、

遠吠えの主を迎え撃つ覚悟を決めた4人だった。


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