003 昨夜の夢は自動書記で
ピピピピッ……ピピピピッ……
春休み中で、しかも土曜日だけど
いつものように目が覚める。
下段の母ちゃんを起こさないように
そっと寝室を出て台所へ。
昨夜から仕込んでいた昆布を取り出し、出汁を味見。
うん。良い出汁だ。
味噌は白1:赤2がわが家の定番。具は重しを乗せて水分を切った豆腐と湯通しした油揚げ。
昔はおぼつかなかった料理も、動画やレシピサイトで何とか様になってきた。便利な世の中だなーってつくづく思う。
7時になったので母ちゃんを起こして一緒に朝ごはん。
「そういえば母ちゃん。『胡蝶の夢』ってアプリが入ってたけど、母ちゃん入れたの?」
「なにそれ?私は入れてないよー……って変なアプリかも知れないから、起動しちゃダメよー。」
「あ……」
スマホ初心者あるある?すでに起動したような……
寝室からスマホを持って来て画面を見たら、『胡蝶の夢』アイコンに新着メッセージが。
今注意されたにも関わらず、起動してしまう。
どうやら小説のようだ。
そのまま母ちゃんに確認してもらおうとしたが、小説の中に自分の名前を見つけて動きが止まる。
「え!?」
思わず読みはじめてしまうが、昨夜の夢の内容が詳細に描かれていた。
「夢だけど、夢じゃなかった?」
母ちゃんに昨夜見た夢の内容を話し、スマホを見せる。
「へー。面白い機能ねー。原理は全くわからないけどー。」
確かに。夢は目が覚めると内容をほとんど忘れてしまう。それがこういった文章で残るって聞いたこと無い。ましてそんなアプリがあるなんて……
母ちゃんはニヤニヤしながらスマホの小説を読んでいる。そういえば思考や感情も書いてあったか。
あわてて母ちゃんからスマホを回収。
「ほら、遅れるよ?これお弁当ね。」
顔が赤くなっている自覚があるので、顔をあわせないよう弁当箱を突き出す。
母ちゃんは今日は休日出勤なので、お弁当を作っておいたのだ。
「いつもすまないねーゴホゴホ」
「…………お約束ほしい?」
「竜司クンはつれないなー。……今日は夕方には帰るから、夜に一緒に狩りに行こう。」
そして玄関先で振り向き様に
「そうすれば、また夢に出てきて小説になるかもねー。」ニヤニヤ
「さっさと行けー!」
宿題も無いのでゲームでも進めていくか。
昨夜は母ちゃんのサポート(?)があったのでサクっとシナリオが進んだけど、自分の力でクエスト進めたいよねー
採取クエストをしばらくこなしていたが、討伐クエストを受注して、いざソロで勝負だ!
…
……
………
…………
ダメでした。どうしても勝てません。
やられる度に猫車に担がれてスタート地点へ戻って…挑んでまたやられる。
時間切れか全滅かの2択。
俺って才能無いのかなー。
夕食後は母ちゃんと討伐クエ。昼間の敵討ち(倒したのは母ちゃん)に成功した。
どうやったら攻撃をくらわないの?とアドバイスを求めだけど、
「バーっと切ったらグワってくるからススっと避けるー。」
うん。聞く相手を間違えた。
夢の中でアドバイスくれないかなー
冒険者ギルドで聞いてみよう。