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異世界は剣と料理と現代知識で  作者: わかね
第一章  昇級クエスト道中編
28/104

027 旅立ちは最後までドタバタで

2022年 5月8(日)〜9(月)異世界サイド〜


錬金術LV3『結合変化』は化学反応を強制的に起こさせて、物質の構造を変化させる代物だ。


俺はまだLV1なので楓さんに頼っている。

ただし、楓さんでも成功率は100%ではない。


木炭と水をショ糖に変換させるのは……だいたい70%くらいかな。


失敗したら木炭は文字通り『灰』になって再利用は不可能だ。水もまた雲散霧消する。


………………で、この大量の灰は何かな?


朝帰りした俺がみたのは、木炭置き場だった家の裏庭の………木炭が全て消えて、灰の山のみとなった裏庭。


そよぐ風によって少しずつ大気へ散ってゆく灰。


灰の山は段々と小さくなって、中から楓さんが現れた。


「!!!楓さん大丈夫ですか?」


慌てて駆け寄る。焦点の定まってない目と、うわ言のようにつぶやく………


「私のダイヤモンド………」


はい?…………この灰の山の原因……って?


ひょっとして………

木炭をダイヤモンドへ変換しようとして、

失敗した………とか?しかも全部。

……そういう事なの……か?


なぜそんな事をしたのか………聞きたくないけど、聞くしかないでしょ。




「中古品はイヤだったから」


…………そうきたか。



***********************



話は少しさかのぼる。


昇級クエストの『護衛』


リリーを王都まで護衛するのが昇級ミッションなのだが、


必要な冒険者用の夜営セット、携帯食料などを買い揃えようと市場へ買い出しに出たのが4日前の事。


全員500ポイント超えたのもあるし、早く昇級クエストを開始したいと全員一致した。


携帯食料は乾燥したボア。

現実世界だとベーコンをカラカラに乾燥させた感じかな。


使い方は……どうしよう。使いながら考えるか。


食料はなんとかなった。

水も錬金術がある。

武器、防具よし。


と、ミリットさんが作ってくれたチェックリストを潰していき、(紙は高いのに、ありがとうございます)


昨日の時点で、残った2つが寝袋とテント。

寝袋は必須でテントは推奨マークがそれぞれ付いていた。


市場価格はチェックしてきたよ。


テント(4人用)金貨3枚

   (3人用)金貨2枚

   (2人用)金貨1枚


寝袋  銀貨25枚


これが新品の値段で、中古品はこの10分の1


それでも………た……高いッス

売っている店も1店舗しかないからか、店主も強気だ。


見張りの交代制を考えれば、2人用のテント+寝袋を人数分なんだろうけど、所持金全額を使っても中古品がようやく買える程度。[所持金 銀貨65銅貨0]



ただ……テントは許せても、誰が寝たのかわからない寝袋の中古品は………俺でもちょっと気が引ける。



………それでも、今日の現実世界で相談して


『中古品でもいいから買って昇級クエストを受注しよう』


そう話し合いをして決着ついたはずなのに………

(中間テスト前日にする会話じゃないよな………)


その現実世界の話し合いで、『竜司君が労働日数増やせば全部新品で揃えられます』

って楓さんまで酷い事言い始めた。もちろん却下。


追い詰められているのは解るが、これ以上の負担は勘弁してください。


……ようやく後74日までに減ってきているんですよ。



***********************



…………で、木炭をダイヤモンドに変えられれば新品のテントと寝袋を買うことが出来る……と



「だから、もう一度チャンスを下さい!!木炭を買って来ますから、お金下さい。」


渡すわけないだろ……そんなギャンブルに。

一攫千金を夢見て生活費に手を出そうとするなんて……

完全に中毒ですよ『ギャンブル依存症』ですよ。


木炭もダイヤモンドも『炭素』だから、『結合変化』使ってみようとするのは理解できる。


現実世界でも人工ダイヤモンドとかあるしね。


でもあれって確か『高温、高圧』の状態が作れないと無理なんじゃないか?


「お金は渡せません。これを渡したらテントや寝袋の中古品すら買えなくなりますから。」


がっかりとうなだれる楓さん。自業自得です。


「どうするんですか……今日お風呂無しですよ。

燃料無いから、スープも作れませんよ。」


「それなら今からテントとかを買ってー、すぐに出発すればいいのー」


家から出てきた舞姉ちゃんが解決策を提示する。


いいのか?そんな無計画の行き当たりばったり

……でも、それしか無いのか。


テントとか買ったら木炭買えないし。


テントの購入は、舞姉ちゃんと樹に任せて

俺は冒険者ギルドへ。


楓さん?お金を渡す訳にはいかないから、家から持っていく物の整理を依頼。


ミリットさん達に昇級クエストの受注と今日出発する旨を話したら


「え!?今日……いますぐですか!?」


とびっくりしている………ですよね……急ですからね。


「ギルドマスターの所にいるリリーに話を付けるのと、馬車の手配があるので、2時間後でもよろしいでしょうか?」


もちろん大丈夫です。……それよりも急な申し出ですみません……計画的に進めたかったけどね……俺も。


俺は家へ戻って台所用品を整理しよう。




……………………2時間後………………



「こんなバタバタした昇級クエストの開始は聞いたことないのじゃ!」


………冒険者ギルドの扉前に集合したうちらのPTとリリーとその従者3人と受付嬢の3人。


多分無いと思いますよ。こんなドタバタした昇級クエスト。


リリーはプリプリしながら馬車へ乗り込む。御者はリリーの従者が担当。リリーの世話係も兼務らしい。



「また……この町に帰って来てくれますか?」


あら?ミリットさんが少し涙目だ。


「戻るも何も、まだ借金返せていないから戻りますよ。」


「あーその事なのじゃが……」


馬車の窓からリリーが顔を出して、


「残りの金額は妾が出したから、これからは妾の為に夕食を作るが良いぞ。」


……この2時間に何があったんだ?


「また、この町に帰って来てくださいね……」


今度はお願いに変わってる………

そう思っていると、ミリットさんからのハグと唇へのキス。


確かに、借金の問題が無くなれば……ガラリーの町に縛られる事は無い。


それでもこの町は……暖かくて大好きだ。


だから俺は素直に……


「いつになるかわからないけど、戻って来ますよ。」


そう言って、今度は俺からミリットさんへキスをする。


舞姉ちゃんが……ものすごく驚いた顔をしているが、俺だってそこまで鈍くは無いぞ。


樹も「おおー」とか言っているが、気にしない。


「そういえば王都までどのくらいの距離あるのですか?」


肝心な事聞いてなかった。


「行程を調べるのも……クエストの一部なのじゃが……」


窓から見えるリリーの顔が曇る。本当ごめんなさい。


「とりあえず方角は妾が示すのじゃ。距離は300キロじゃ」


…………ゑ?


表情が固まる4人。早まったか?


「ちなみに受注したのじゃから、キャンセルは『不合格』扱いじゃ。」


………ミリットさんごめんなさい。簡単には帰れそうにありません。


昇級クエストのハードルすごく上がってませんか?


そして追撃の一言。


「事前調査不足でマイナス5点じゃ」


……もう試験始まっているのね………しかも厳しくて容赦無い。


旅立ちは、涙だらけの……しんみりとした旅立ちはあまり好きではないけど、

不安だらけの旅立ちよりはマシだと本気で思った。


昇級クエスト道中編 スタートです。


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