026 昇級クエストは結構ガチで
「俺は次で500ポイント貯まるけど、姉貴は2回必要だよ。」
GWの3連休。どこに出かけるでもなく、のんびりしていたら樹からLINEメッセージが。
あら。勘違いでしたか。
それよりもランクアップの『昇級クエスト』ですよ。
昨夜リリーに聞いたのだが、『一緒にお風呂入らなかった』って拗ねて教えてくれなかった。
そういったところが300歳とは思えないんですよ。
とはいえ、内容が気になる。
あ!そうだ。
ひとつ名案があったわ。
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「Cランクへの昇級クエストは『護衛』じゃ」
出来上がったばかりのメレンゲクッキーを目の前に並べて情報を聞き出す。うん。チョロい。
卵白と砂糖だけの簡単なメニュー。卵白を泡立たせるのに時間かかったけどね。
異世界にもハンドミキサーがあったらな………
「この『メレンゲクッキー』も美味じゃのう。」
こりゃお菓子のレパートリーも増やさないと。
そのあたりは動画で検索すればかなり出てくると思う。
……このメレンゲクッキーみたいに簡単だったらいいけど。
「で?誰をどこまで護衛するの?」
今日のクエストで491/500になった楓さんも気になるようだ。リリーに負けじと食べながらだけど。
「妾じゃ」
「え?」
「『妾を王都まで護衛する』事がCランクへの昇級クエストじゃ」
………………まじですか………
ふと、ギルドカウンターからミリットさんが手招きしている。リリーと楓さんはクッキーに夢中で気付いていない。
「Cランクへの昇級クエストなのですが………」
ミリットさん曰く、本来の『昇級クエスト』はギルドマスターもしくはギルド職員を隣の町まで護衛して往復するクエスト。
隣町までは40キロあるので必ず道中で野宿する。
Dランクでは登録した町周辺で済ます事が出来るクエストのみに対し、(DDやD3も同様)
Cランクでは町と町もしくは王都など、移動するクエストを受注する事が出来るようになる。
(行商人の護衛などがこれにあたる)
「そこで必要になってくるのがPT間の『連携』です。」
いくら街道とはいえ、見張りも立てずに夜間全員高いびき……なんてPTはもちろん不合格だ。
「リュウジさんは今、呆れた顔していますが……実際にありましたから。」
失敗した例として4人PTが1人ずつ見張りを立て、
明け方の担当した人が寝落ちしてしまう話。
「なので大抵は2人ずつ見張りを立てます。」
歩き続けて疲れている所に1人ポツンと見張りか……確かにあり得る話だ。
「不合格の場合、現在のポイントが半分になります。」
結構ガチな試験なんだね。
「それと、護衛対象が襲われて怪我などした場合も不合格です。」
襲ってくるのは魔物だけとは限らない。
盗賊や山賊などアウトローな人たちはいる……と
「この試験は冒険者の力……武力だけではない『総合力』を試す試験なのです。」
………あれ?でもそれってPT前提だよな。見張りとかも。
ソロで挑む場合どうするんだろ?
「最低2人以上です。ソロだと受験資格ありません。」
コミュニケーションも必須なのね。
「2人ですと出来る範囲は限られますからね。推奨はもちろん最大の6人です。」
6人いれば見張りのローテーションは確かに余裕出来るし、睡眠による回復も望める。けど、今更増やすにもなぁ……
クエストの難易度や行動範囲といい、冒険者のノウハウをゆっくり……しかも確実に育てていこうという意志が見える。
ただ単に戦闘して強くなる……だけでは生き残れないと。
「まだ他にも……」
まだあるのか………
「野営する為のテントや寝袋、道中の食事や水の確保。もちろん武器や防具の手入れとか……」
そういった物資の仕入れや管理ももちろん冒険者の仕事だし、資質として必要不可欠なものである。
「うわぁ……チェック項目沢山ありますね。」
準備大変そうだな。お金………足りるかな。
そして納得する。だから『総合力』か。
「ですから、試験の開始はリュウジさん達の判断でいいので準備万端になったら声をかけて下さい。」
「それまでは妾はここで世話になるのじゃ」
突如背後からのリリーの声にびっくりした。見ればメレンゲクッキーは跡形もない。
お世話するのか………早めに準備整えないと。
物資の買い出しとかは手分けしてもらうかな。
1人で処理する雑務の量ではない。
早速今日の夜相談……って今日は俺の番だからダメか。
現実世界に戻ったらこの『昇級クエスト』の内容とかを話してみるかな。
PTメンバーを増やすか?とかの相談もしたいし。
野営の見張りの振り分けとかも話し合いたいね。
……でも、なんか冒険が始まっていく感じがしてワクワクしてくるよ。
「Cランク……か……」
『昇級クエスト』はDランク(駆け出し)からCランク(一般冒険者)への大切なプロセスなんだな。
「さてと……夕食でも作りますか。」
「!!!今日は何を作るのじゃ?楽しみなのじゃー!」
ガラリーの冒険者ギルドに楽しい声が響き渡る。
特別な能力がないこの『異世界』
でも、仲間やサポートしてくれる人(?)達がいて
ゆっくりと……でも確実に成長している実感がある。
困った時は現実世界に戻った時に[検索]すればいいわけだし、こんな異世界も楽しいし『アリ』なんじゃないかなー
タイトルをつけるとすれば、そうだな……
『異世界は剣と料理と検索で』?
違うな。
『異世界は剣と料理と現代知識で』かな。
そう思いながら今日も夕食をせっせと作っていった。
序章は今回で完了です。
拙い文章ですが、お付き合い頂き
ありがとうございます。




