020 対策は調理室で
「…………」
無言で起きた現実世界。この……下半身の違和感は!
…………はあ。
音を立てないように、そっとベットから抜け出し浴室へと向かう。こういう時、二段ベットは辛い。
甚平のズボンとパンツを脱いで、丁寧に固形石鹸を使って手洗いする。そのまま洗濯機入れたら……洒落にならん。
それよりも……だ。洗い終え、干しながら考える。
異世界でこういったエッチな展開になると毎回パンツ洗う羽目になる?
ハーレムな展開になったら毎日パンツ洗い?
………勘弁してください。精神的にやられます。
しかも……だ。ミリットさんとベットへ向かった所までは覚えているけど、肝心な場面が思い出せない。
『日誌』に期待したけど、その部分だけカットされてるって………酷くないですか?
思い悩んでも始まらないので、今は出来る事をしよう。楓さんに『唐揚げ』の約束したのを思い出した。
生姜をすりおろし、みりんと酒と醤油と合わせて鶏肉をつけ込む。鶏肉に下味つけている間は……だし巻き卵を作るか。
薄く焼いたたまごをクルクルー
空いたスペースにたまごを流して、薄く焼けたら再びクルクルー
ふと時計を見ると6:20……ちょっとギリかな。
もう少しつけ込みたかったけど、遅刻は出来ない。
7:00にセットしたアラームが鳴ると同時に全ての工程を終えたので、一息吐いた。
時間がギリギリだったのは……パンツのせいか。
もちろん後片付け込みです。
母ちゃんを起こしに行こうとしたけど、起きてきた。
なんか……ニヤニヤしながら……
「おはよう。朝ご飯用意するねー」
「ゆうべは、お楽しみでしたね。」
…………ナ……ナニヲ……イッテ……イルノカナ?
「竜司クン鈍いし……奥手だから心配したけどー
ちゃんとヤる事ヤってて安心したよー」
そのカタカナ表記やめて。
しかもその発言……親としてどうかと思うよ。
ミリットさんの件、母ちゃんに相談してみるか?
………デキッコナイス………
「ゆうべは、お楽しみでしたね。」
「そうくると思ったよ。」
基本母ちゃんと樹は同類だ。
「反応冷たいなー」
同じ事繰り返されたら慣れる。………とりあえず樹に相談してみるか………
「ミリットさんはサキュバスだった。」
「はい?」
まぁ……そうなるよねー。俺も未だに信じられない。
思い返せばシェリルさんの『食事が最近取れてない』
ってそういう事なのか?
………そうなるとシェリルさんとカーリさんも……
ちょっと怖い。
「でも、取って食われた訳じゃないんだろ?」
別の意味で食べられましたけど?
「それなら、ちょっとは安心かな。」
安心出来る要素を教えてほしい。
「姉貴がめちゃくちゃキレてて大変だったんだぞ。」
「PTメンバーが帰って来なかったら、心配だよね。」
……その残念そうな顔やめないか?
「舞おばさんから、経験を積むため……竜司へのアドバイスは禁止されてるから言えないけど」
母ちゃんから禁止って何を?
「地獄や修羅場を経験するのもアリだと思ったわ。」
その選択肢に救いが無いのですが?
昼休みが怖いのだけど………
「…………で、ミリットさんはサキュバスで、『魅了』の呪文で意識を失ったと。」
昼休みの調理室はなぜか……部長の楓さんと俺と樹の3人しかいない。まぁ、だから異世界の内容話せるけど。
俺が調理室へ向かった時、調理室の入り口前には料理部の先輩達が中の様子を伺っていた。
なんで中に入らないのかな?そう思ってたけど、
俺の姿を見た瞬間
「部長の事頼んだ」
と逃げる様に各教室へと戻っていった。
唐揚げとだし巻き卵………どうしよう。
購買へ向かおうとしている樹を見つけて
「昼食まだなら一緒に食べるか?おごるぞ。」
と甘言で誘い、樹と一緒に調理室へ。
中には怒気を隠そうともしない楓さんが1人。
他の先輩……誰も入らない訳だ。
樹も
「騙したな!」
と言われたけど、嘘は言ってない。
とりあえず3人でおにぎりと唐揚げを食べつつ
昨日の夜の成り行きを説明したのだ。
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3人共ゲーム等を散々やっているから、今更サキュバスの説明はしなくて済むのは助かる。
楓さんもミリットさんがサキュバスだと分かってから
多少の怒りは収まった様だ。
食事を終え、緑茶をすすりながらの雑談。
食材が無駄にならなくて良かったよ。
「異世界はやっぱり異世界だったんだな。」
確かに俺もそう思う。
「でも、竜司君は脇が甘すぎです!」
否定できません。
「心配かけてごめんなさい」
ここは素直に謝っておこう。
「戦争だとか魔族や魔王との戦闘とかじゃない……ゆるーい感じの異世界だから、俺は好きだなー。」
「それは俺も同感だよ。下手したら殺されてもおかしくないシチュエーションだったからな」
「コスメが全く無い世界は厳しいけどね」
そこら辺は無理……でもないか?
「クエン酸みたいに無ければ作るとかは?」
「それしか方法はないのかしら……」
「クエン酸や椿油はどうでした?」
「うーん………普段使っているのよりは劣るけど、無いよりはマシなのかなー。」
普段何使ってるんだろ………
ともかく
何とか楓さんの溜飲下がって良かったよ。
「とりあえず!クエストの受注は私がやります!」
「は……はい」
「ミリットさんとの受け渡しも私が仲介します!」
……助かります。けど、何で急に?
「竜司君は舞おばさんから稽古をつけてもらって、1日でも早く強くなって下さい。」
鬼気迫る楓さんに、うなずくしか出来なかった。




