098 打開策は郷土料理で
2022年 10月 15日(土)現実世界サイド〜
今週行われた中間試験は、樹が家庭教師してくれたおかげもあり、我ながら上手く出来たのではないだろうか?とりあえず平均点は超えたいところ。
「今回は範囲も狭かったから、竜司でも良い点取れたんじゃないか?」
…………『竜司でも』って言葉に引っ掛かるが、教えてもらった立場なので何も言えない。そしてその報酬……というか代償というか……神代家の台所で調理に勤しむ樹。
そろそろ白米が恋しいが……後2週間はパスタなんだよな……
それよりも今週はテスト週間だったので、お弁当は作らなくて助かったのだが……来週からお弁当を持参しなければならず
母ちゃん……お弁当もパスタにするのかな?するだろうな……
「はぁぁぁぁぁぁぁ」
盛大なため息をつきながらゲームを進める。今日のゲームは『桃太郎すごろく』
来年に新作が出るので久々に樹との対戦……って意気込んでいるのだけど、一回も勝てた事ないんだよな。それどころか
「ハンデとして60年進んだこのデータでいいよ。」
………俺のセーブデータを確認した樹からの舐めプ宣言。
樹が示したデータは『俺』と『名人』と『大王』の3人対戦のCPU戦で100年モード中のデータ。『俺』は全ての物件と全ての武将を手に入れている……いわゆる『一人勝ち』状態。いくら何でもここからの大逆転とかないでしょ。久しぶりとはいえ、俺もそれなりにやり込んでいたよ?
「昼ご飯できたぞー」
「こっちも『桃すご』のセッティング終わったー」
「じゃあ交互に食べながら進めるか。」
対戦ゲームでも、カートなやつとか大乱闘とかだと食べながら進める事なんて出来ないけど、その点『桃すご』ならそれが出来る。
ゲーム機の左右に備え付けてあるコントローラーを取り外して台所へと持っていく。引き戸を開けたままにしておけば、台所からでも電波は届くから大丈夫。
「あれ?これって『じゃじゃ麺』じゃ」
料理コンテストに備えて練習しているはずなのに、台所のテーブルに置かれているのは郷土料理の『じゃじゃ麺』と……
「ん?こっちは『ひっつみ』か。」
別の場所だと『すいとん』等とも呼ばれているこちらも郷土料理。
「そうだよ。ラーメンは出せないからな……俺は肝心な事を見落としていたから、予定変更。」
何でも異世界でイディ・ミディ親子にラーメンを試食してもらったのだが、上手く食べれないとか……
「竜司が普通に食べていたから忘れていたけど、異世界の人達は箸が使えないし……麺類を『すする』事は……」
………テーブルマナーに反する……と。
確かに冒険者の宿とかなら音を立てて食べる事なんて日常茶飯事だけど、公式の場所で音を立てて食べるなんて無い……か。
「あれ?それじゃ『じゃじゃ麺』も厳しくね?」
「だから……はい。これ」
樹から渡されたのはナイフとフォーク。
そして『ひっつみ』用のスプーン。
…………………まじか?
音を立てずに食べろと……
異世界では味噌がまだ無いから、今回樹が作った『じゃじゃ麺』も『しょっつる』を煮詰めて味を整えてある……ちょっと塩気が多いけど、うどんと絡ませて食べれば大丈夫……ってかこれはこれで美味しい。
「でもいいのか?課題は『パスタ』だぞ?」
『ひっつみ』はあっさりとした塩味で割と美味しいし、俺の好みかも。
「『パスタ』の定義って何だと思う?」
『桃すご』データの最下位だった『大王』を『いつき』に変えてスタートする樹。
「定義?カルボナーラとかナポリタンとか?」
「それはパスタの一種『スパゲッティーニ』の調理法な」
樹はすごろくのゴールを目指さずにゴール付近のカードを集めている……何をして来るのかわからないけど、大勢が決まった今………何をしようと……
「パスタって『小麦を練った物』って意味なんだよ。だから、うどんもラーメンも……もちろん『ひっつみ』もパスタといえばパスタなんだ。」
………なるほどね。毎日パスタの一種『スパゲッティーニ』だけど、これを母ちゃんに言えば食事の改善出来る……かな?
「………さてと。全ての準備が整った。」
ん?何の準備?と思いつつテレビ画面を注視すると……
謀 反 で ご ざ る
そして俺が急に背負わされる膨大な借金……そしてその返済の為に売り払われる大量の物件。
「は?何?何が起こったの?」
「竜司よ……やり込みが甘いな。『本能寺の変』だよ」
…………へ?知らないよ。そんな隠しイベント。
そこからは……転げ落ちる様に目減りしていく資産とズーッと付きまとう貧乏神。
………
……………
……………………
「ま………参りました。」
夕方迄の間で立場が逆転するとは思わなかったよ。
資産グラフは見事なまでの暴落というか断崖絶壁というか……
「来年の新作も楽しみだな竜司。」
………手加減してください。




