094 急造パーティーは多種多様で
「ガキ共!静かにしろ!!」
怒号とともに俺とリピピの間を何かが飛んでいった。
ガシャーン!!
飛んでいった何かは控室の壁に当たり、粉々に砕けて中身の液体が周囲に飛び散る………途端に立ち昇るお酒の匂い。
「1対59で勝ち抜けるとでも思うのか?」
酒の陶器を投げつけた大男は俺とリピピを睨みつける。
…………バトルロイヤルってそういう(1対59)趣旨じゃなかった?
「お前ら初顔か?だったら知らなくても当然だが、予選の控室は12に分けられていて戦力がなるべく均等に割り振られてる」
…………そんな話初耳なんですけど……桔梗さん?
「最後は4席を争うからライバルにはなるが、それまでは互いに補って急造パーティーを作れるかが生き残る為の鍵だ」
確かに決勝トーナメントに行けるのは4名だからこの部屋にいる5名でパーティー組んだとして最後は争うことになる…………それでも1対59で挑むよりは格段に生存率は上がるな。
「お前ら2人に因縁があるようだが、ここで争っても決勝トーナメントには進めんぞ。」
…………言っている事は理解できたけど、さっき突っかかって来たリピピが納得出来るとは思わないし、俺も背中を安心して預けられない。
わあああああああ!!!!
一際甲高い歓声と
「第3ブロック決着ーーー!!」
場内に響き渡るアナウンス。
「事前の登録処理もあるから、あまり悩んでいる時間は取れないぞ」
そういうと大男は右手首にギルドカードを浮かび上がらせて何やら操作している……
ポーン
間の抜けたポップ音と共に俺の右手首にもギルドカードが浮かび上がり、
『ギムさんからパーティー要請が来ました。受けますか?Y/N?』
「事前の登録処理?」
「去年……余りにも『死者蘇生』による借金抱える奴が増えたから、今年からセーフティ措置を追加する……って大会概要読んでないのか?」
大男……ギムから呆れたような半目の視線を受けるが、そんな案内初耳です。それに大会直前まで酒飲んでいる人に言われたくない。
「あんなもの酒の内に入らん。ワシらドワーフにとって水みたいなものだ」
………ドワーフ?ギムってドワーフだったの?確かに顎ひげを蓄えてはいるけど、もっとこう……身長が低いイメージがあるし、武器だって背負っている大剣じゃなくて斧とかハンマーとか……
「自分で作った武器。試してみたいだろ?」
そう言ってニカっと笑うギムは……次々にパーティー要請を出していく。…………そっか。ギムは武器製造なのか。
俺に対してわだかまりがあるリピピも、そこまで言われ『後で絶対泣かせてやる』と捨て台詞と共にパーティーへ参加していく。
…………背中から撃たないでよ?そう思いながらパーティー要請を受諾すると、ギムが目を『ギョ』っとさせて飲んでいた酒を吹き出した………ギムのアイテムボックスは酒だらけなのだろうか?
「なんじゃ!坊主のHP……2800じゃと!?」
……え!?そう言われて確認したギルドカードに俺自身ビックリしてます。確かにずっとステータスの確認なんてしていなかったけど、HP2800は凄い。
ここ最近はマラソンばっかりだったけど、それがこの高HPって事なのかな?レベルシステムではないこの世界では参考になるデータかも。
「……君スゴイ。……オラより高い」
ボソボソと呟くトロールのミック。CCの冒険者だけどBランク昇格クエストに失敗してCCランクからやり直し中。
「それだけHP高いなら、後衛職の僕達を守りなさいよね」
「…………(コクコク)」
悪態つくリピピと無言で頷くララーナさん。
ララーナさんははハーフエルフで自己紹介でローブを一瞬取り外したが、またすぐに深々とローブを被る……結構シャイ。
「じゃあみんな右手のギルドカードを合わせろー」
ギムの掛け声に5人が円陣に集まり、右拳を円陣中央へ突き出す。
「大会限定アイテムで、これから制約かけるぞ。」
事前処理ってこれの事か。
「HPが75%以下になると右手が黄色く発光し、50%以下になると右手が赤く発光する。そして右手が赤く発光した状態でダメージを受けると、敗退者専用控室に飛ばされる。」
…………なんかバトルロイヤル……っていうよりサバゲーに近くないか?これ。
バランス的には前衛3の後衛2って所か。
「じゃあリュウジ。」
そんな事を考えていたらギムに呼び止められる
「このパーティーはお前の働きに掛かっているといっても過言ではない。」
…………またまた大袈裟な。
「しっかりと壁役……頼んだぞ。」
へ?……壁役?
「それだけ高いHPなんだからちょっとやそっとの被弾は大した事ないでしょ?」
リピピは獰猛な笑みを浮かべながら
「オラも……少し……壁やる」
少しじゃなくてもいいんだよ?
「…………」
………………
桔梗さんと『立ち止まってはいけない』アドバイスはこうなる事を見越してた?
そう愕然としていると
会場の大歓声と
「第5ブロック決着ーーー!!」
との場内アナウンス。
そして控室に入って来た反対側の鉄格子がゆっくりと上昇していき………とうとう第6ブロックの……俺の出番を告げていた。




