001 胡蝶の夢は現実で
2022年 3月31日(木)午後11時56分
柱時計の秒針のみが響く居間。
母ちゃんと俺は静かに……目を閉じている。
いつもならすでに寝ている時間帯。
でも、今日だけは頑張って起きて……後4分。
母ちゃんと俺の間に小さな箱が2つ畳の上に置いてある。
中身は知っているが、母ちゃんと話し合った結果
4月1日を解禁日と決めていた。
心の中でカウントダウンをする。
5…4…3…2…1…0
「竜司クン…高校生おめでとう。
これでようやく一緒に狩りに行けるねー。」
渡された1つ目の箱には待望のゲームソフト
『一狩り行こうぜ』
同級生の何人かは中学の頃……下手すると小学生の頃から遊んでいた人もいたが、対象年齢が15歳以上だという事で禁止されていた。
しかも15歳になっても、
『高校生になるまではダメ!』だって。
母ちゃん………頭ガチガチすぎませんか?
はじめは入学式の後という事だったが、俺が
『年度の開始は4月1日じゃないか』と論破して
この日が解禁となったのだ。
母ちゃんは教育関係の仕事をしているから、そういったルールとか守ろうとするのはしょうがないけどね。
そしてもう一つの箱はスマホ。
これも高校へ進級したので解禁。
やっとですよ。
最新機種ではない手頃な値段の中古品。
もちろん格安SIMだけど、LINE等の連絡手段が増えたのは嬉しい。無料のスマホゲーム等もこれでできる。
「母ちゃん…‥ありがとう」
ありがたいけど、正直眠い。設定や登録は明日でいいや。
「おやすみなさいー。」とベットへ向かおうとしたけど、呼び止められた。「注意事項だけどー」と前置きして、
「課金出来ないようにロックしてあるよー」
母子家庭で裕福でもないから、そこら辺は求めない。
でも、変な罠を踏む可能性は否定出来ないから、
そういった防止策はありがたいね。
「それと、Hなサイトにも飛べないようにしてあるから」
「ハハハ……シンパイ……シスギダヨ」
くそう。動揺してしまった。
興味?もちろんありますよ。
男の子だからしょうがない。
疲れたのだろう。しかも慣れない日付変更超え。
二段ベットの上段に潜り込むと、すぐに意識が無くなった。
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あ………また………この夢だ。
かなりの年数経つのに…………
それは父ちゃんと最後の会話した時の夢。
「後で必ず行く」と言い残し、
「竜司……母ちゃんを頼むぞ」
と去っていった父ちゃんの背中。
夢の中の俺が
「待って!一緒に行こう!」
と叫んでも……届かなかった声。
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そしてまた……同じ場面で目が覚める。
涙をぬぐい、頬を2回ほど叩く。
よし。大丈夫だ。
母ちゃんを起こさない様にそっとベットを抜け出して
台所へと向かう。
朝食を作り始めたのは………確か小学4年の頃から
レシピサイトや動画を検索して、
料理の知識や技術を少しずつ習得してきた。
得意料理はだし巻き卵と言えるくらいまで
上達したとは思う。
朝7時になったので、母ちゃんを起こして
一緒に朝食。
俺が作った弁当を持たせて、母ちゃんを見送り……
特に予定も無いので、今日はゲーム三昧かな。
「帰ったら一緒にクエスト行こうねー」
って母ちゃんに言われたから、練習しておかないと。
採取クエストで操作を慣らして……
討伐?うーんちょっと怖いなー
一回だけやってみるかー
……
……
……
やっぱりダメだった。
攻撃するだけじゃダメなんだね。
夕食をゆっくり作りつつ、
母ちゃんの帰りを待つことにしよう。
………………母ちゃん凄すぎる。
何が凄いって、ダメージ受けてない。
武器は全種類使えて、全種類コンプしてる。(本人談)
今日から始めたのに………初級のクエストがサクサクとクリアしていく。
討伐クエストは1人だったら苦労するんだろうなー
うん。母ちゃんチート最高。
楽しい時間ってあっという間に過ぎる。
小、中学生時代では制限されてたゲーム時間も一応無制限となった。
ただし、成績次第ではボッシュートになるから、のめり込みには注意しないとね。
しばらくゲームしていたが、流石に眠くなってきたので続きは明日という事で解散した。
2段ベットの上段にもぐり、寝る前にスマホを起動。
LINEを設定したり、友人の電話番号を登録したりしていたのだがその中で見慣れないアプリを見つけた。
アゲハチョウを模したアイコンで
『胡蝶の夢』
って名前聞いた事無いアプリだ。興味本位で起動するも、
『準備中。サービス開始までお待ちください』
と表示されて全く動かない。
「新規のゲームアプリかな?明日母ちゃんに聞いてみるか」
特に怪しいと感じず、そのまま眠りに落ちていった。




