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屋敷へ

 あれから馬車に揺られ続け、途中の町で狭い宿に押し込められながら4日程かけ、ようやく辺境領へたどり着いた。


 噂では寂れたところと聞いていたが畑は手入れされ、のどかな風景が広がっていた。

 暖かな日が降り注いでいるが、私の心は反対に冷え切っていた。これからどんな扱いを受けるのだろうか。


 向かった辺境伯の住居はこじんまりとした屋敷だった。ずっと馬車に乗っていた為体のあちこちが痛い。馬車から降り、ひと目もあるので体も伸ばせず小さく息を吐く。


 近づいてきた使用人が荷物を受け取ったが、「これだけですか?」と少ない荷物に驚いている。


 案内され、屋敷の中へ入ろうと足を向けた時後ろから呼び声がした。


「おじょーさまー、ブランシェお嬢様ー」


 そう叫びながら侍女がこちらに駆け寄った。恥ずかしいのでやめてほしい。


「あなたはお嬢様の侍女でいらっしゃいますか?」

「私は見届けに来ただけー。こんな辺鄙なところまっぴらごめんだわ」


 不躾な物言いに肝が冷える。

「躾がなってなく、申し訳ありません」

 使用人は気にする風でもなく、足を止めた。


「おじょーさま、ほらほら、これ!はい!受け取って!」


 彼女の手から押し付けられたのは菓子箱だった。見た目に反してずっしり重たい。焼き菓子でも入ってるのだろうか?


「ビアンカお嬢様から可哀想なお姉様へ差し入れでーす。これでも食べて元気出してー、だって」


 なんだか外箱は古ぼけていて、中身はもう駄目になってるのじゃなかろうか。


「お嬢様の気遣いなのだから食べずに捨てないでくださいねー」


 そう言ってにやりと笑うと、「あー、馬車が出ちゃう、乗せてー!私は王都に帰るんだからー」と走り去っていった。

 その様子を見ていた使用人が気まずそうに尋ねる。


「ブランシェお嬢様の侍女の方は……」

「おりません。私一人でございます」

「あー、では旦那様に相談し、側仕えの者を用意しましょう」


 おまえのような女に使用人などいらないだろう、とそんな扱いを覚悟していたのだが意外だった。まだこの地には私が悪女であるという噂が伝わっていないのだろうか。まあそれも時間の問題だ。或いは思ったことを顔に出さないタイプなのかもしれない。


「旦那様もお待ちですから、どうぞお入りください」


 いよいよ辺境伯との対面だ。足が震えそうになるのをこらえて私は屋敷へ足を踏み入れた。

義妹の名前がバラバラになっていたので統一しました。

ブランカ→ビアンカになります。

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