2 面会
アイリスの日常は、酷い物く理不尽でした。
一回でも間違えれば叩かれたり蹴られたりし、何もしなくても家の人が不機嫌だと虐められたりもしました。食事も大根の葉など使わない所を食べていました。
しかし、育ちざかりのアイリスはそれだけでは足りませんでした。どんどんやせ細っていきそれを見た親は、アイリスの肌の色で水に濡れても落ちない絵の具を包帯に染み込ませ、
それをアイリスの体にきつく巻き付け見た目だけ健康な7歳の体にしました。
それでもなお頑張っていましたが、アイリスは次第に歪んでいきました。そして、分かったのは、世の中には魔道具があり、精霊も居るということです。
精霊は、姿は人やリスなど色々な形で性別もあります。植物のある所しか行き来できません。けれど、精霊は、森の中では最強ですし、体調不良にもなりません。
そうこうしているうちに、7歳になる2週間前になりました。アイリスは図書室にいました。
(貧乏なのは自分たちが見栄を張るからじゃないの?)
と思いました。そこで、運命の出会いをはたします。それは、悪役令嬢が主人公をいじめて断罪されるありきたりな話でした。しかし、アイリスはその様な物語を読んだことがなかったのです。
(私が悪役令嬢になったら嫌われる理由が分かる)
物語を読んだアイリスは、悪役令嬢になることを決意しました。チェアリーは生まれたことが嫌われる理由ではなく自分の行動が嫌われる理由とすることで自分を守ろうとしているのです。
その決意から一週間後にアイリスと王太子との面会便りが来ました。これに家の人は大慌てで面会の準備をしました。勿論アイリスも下働きとして手伝いました。
王太子との面会の日が来ました。チェアリーはこの日が楽しみでなりませんでした。
(ここから私の悪役令嬢が始まる!ずっと無表情だったから家の人は好きになったと勘違いしてそれを見た王太子も好きだと勘違いする。完璧!この日の為に本心を見せなかったと言っても過言ではない!)
《過言です。本心を見せなかったのは、見せたらもっと教育が厳しくなるからです。》
「お嬢様はこちらでございます。ではごゆっくり」
「っあ、どうぞお楽しみください。」
ついに王太子が入ってきました。最初王太子は、作り笑いをしていました。しかし、アイリスが一目惚れというような表情を作りました。
そして王太子を見ると「一目惚れをしたんだな」というような表情をしていました。周囲も同じ表情をしていました。その後王太子はまた、作り笑いをしました。
(ッフ。勝ったわね私にかかればドーってことない!。しかし、王太子も私の事が嫌いなんだね)
と自信満々な気持ちになっていました。嫌いだと思ったのは、その感情しか向けられていなかったからです。
《どうしてこれだけで勝気になっているのでしょうか、不思議ですね。いやー間違ってはいないんですよ?ただこの心情を聞くと無性に苛立ちを覚えるんですよ。なんでだろう?》
「私はアイリスです。王太子殿下」
「堅苦しい言い方は止めて私の事はクフャリアルと呼んで」
「はい、クフャリアル様」
アイリスは王太子の横に引っ付き、いかにも恋した子のような表情をしていました。その後は質問に当たり触りのない答えを言ってやり過ごしました。そして終わるころに王太子が
「もうこんな時間なんですね、貴女といると時間を忘れますね。この様な時間をもっと過ごせるように言っておきますね。」
〔貴女といると楽しいです。私から国王に貴女との婚約をしたいと言っておきます。〕
(絶対に本心じゃないわね。まあいいけど)
「私も貴方様とすごす時間は過ぎるのが早いと感じます。私、これからも貴方と過ごせる事を思うと花が咲く様になります。」
〔私も貴方といると楽しいです。貴方との婚約でしたら喜んでうけます。〕
満開の笑顔〈作り笑い〉でそういいました。
《アイリスはまだ7歳ですよね。なんでこんな高度な会話が出来るんでしょうか?》
こうして面会は終わりました。
傷っていつ治るんでしょうね。