50.あの魔法は黒いヤツ用だった
『琥珀、あの方法は誰に教わったんだ?』
少なくとも、僕じゃない。ビニール袋の概念なんて教えてなかった。首を傾げた後、ぽんと手を叩く。
「アルマ。黒い虫出た時、アルマがやった」
黒い虫ってあれか、1匹見たら30匹いるやつだろ。あれを潰すためにアルマが編み出した魔法を、琥珀は当然のようにパクったらしい。しかも魔族相手に平然と使った。ここで褒めるのが正しいと僕は思うわけだ。日本の概念なら道徳を説くが、ここは弱肉強食の世界だからな。
『そうか、よくやったな』
見事だったと褒めれば、琥珀は嬉しそうに笑った。くるくる回って喜びを表すが、その胸元で僕も一緒に回ってることをお忘れなく。また吐くぞ、エアで。
昨日潰した魔族を畳んで埋めて、今日はのんびり休みにした。僕は自分が使った厨二呪文の影響でダウンしている。敵にも効果が高いが、自分へのダメージも大きい。なんとか改善しよう。
山頂付近で見つけた丸い果物を土産に、シェンが遊びに来た。今はバルテルが果物を剥いている最中だ。見た目は水色のまん丸で、白い斑模様が入っている。食べ物か迷うレベルだが、シェンは美味しいと断言した。ベリアルは魔力が戻ったことで自信を取り戻し、今度魔族が来たら撃退すると息巻いている。
琥珀があっさり「琥珀王」の名称を承諾したことで、思わぬ変化があった。ベリアルの魔力が回復したのだ。アスモデウスに心酔するがゆえに、魔王の地位を追われツノを失った彼の弱さに引き摺られたベリアルだったが、ほぼ元通りだ。
「いえ、元通りではありませんよ。この通り、魔力量は増えています」
……前言撤回。さらに強くなった。その理由が、自分は負けたから琥珀の配下になるという誓いだった。これは魔族全般に言えることだが、主君を持つとその能力の一部を使うことが出来る。魔王のツノだった僕を持ち、自らの魔力も使えるようになってきた琥珀の潜在能力は高かった。
「ふーん、俺も龍じゃなかったら配下に下ってもいいんだが」
とんでもないことを言い出したシェンが、肩を竦める。残念ながら世界の理を見守る立場としては、誰か一人の王に忠誠を誓うことは出来ないらしい。正確に表現するなら、誓っても効果がなかった。
「俺は誓うぞ」
バルテルがどんと胸を叩く。
『子ども相手なのに、いいのか?』
バルテルが勢いで発言したとは思わないが、確認は重要だ。誓いが成立した後で、やっぱりやめたは通用しないだろう。
「子どもだから安心なんだよ。今のうちから立派な王になれるよう、周りを固めて教育したら問題ないじゃないか」
気の長い種族らしい発言だ。でも正論でもあった。琥珀が新たな王に相応しくなるよう、僕も力を尽くそう。
ところで、その剥いた果物の味が気になるんだが……誰か実況してくれないか? 無言で貪ってるところを見ると、美味いんだと思う。どんな味なんだよ。




